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今時タトゥー無しは超真面目? 合流1週間で京都ハンナリーズの命運を託されたデイヴィッド・サイモン

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都ハンナリーズの命運を託された新加入のデイヴィッド・サイモン選手(筆者撮影)

 京都ハンナリーズが26日、秋田ノーザンハピネッツ相手にシーズン前最後の練習試合を消化し、10月6日の開幕戦を迎える。

 ここまで所属選手の不祥事が重なり、さらに昨シーズンはチームの得点王&リバウンド王のジョシュア・スミス選手を失いビッグマンの補強に手間取ったこともあり、決して盤石な状態で新シーズンを迎えるわけではない。浜口炎HCも「通常よりも6週間くらい遅れているイメージ」と本音を漏らす。

 だがここに来てようやく好材料が加わった。9月20日に入団会見を行い、そのままチームに合流したデイヴィッド・サイモン選手が、合流1週間で早くもその存在感を示し始めているのだ。

 チーム合流後、落ち着く間もなく韓国リーグ(KBL)のアニャンKGC、島根スナノオマジック、シーホース三河、秋田ノーザンハピネッツとの試合に出場したサイモン選手。まだチームとのコミュニケーション不足は否めないが、今も時差ボケが残る状態ながらチーム唯一の頼れるビッグマンとして質の高いプレーを披露している。

 浜口HCも以下のようにサイモン選手を評価している。

 「すごくいいと思います。プレーエリアが3ポイントまであり広いですし、今日(ノーザンハピネッツ戦)も2本くらい(速攻で)いい走りもあるので、その辺が昨シーズンと変わってこれるところかなと思っています。

 あとはパスが上手ですので、今日みたいな激しいチームとやっても、一度彼にボールが収まればチームとして落ち着いてプレーできるケースが多かったので、そういう意味ではボールを預けられる選手かなと思います」

 昨シーズンのスミス選手は140キロ近い巨体を生かし、インサイドのパワープレーを得意とした選手だったが、逆にアウトサイドのシュート力やディフェンス面に難があった。しかしサイモン選手は速攻に参加できる走力があるほか、3本とも狙える幅広いシュートレンジを兼ね備えている。浜口HCも認めるように、サイモン選手の加入でより多様なプレーが可能になりそうだ。

 ただ昨シーズン所属したKBLで得点王に輝いたサイモン選手が本来の力を発揮できるようになるには、もう少し時間がかかりそうだ。合流後実戦が続いたこともあり、まだチームとしてプレーを確認する時間がなかったこともあり、時折コート上で戸惑う仕草を見せていた。その辺りはサイモン選手も認めている。

 「とにかく今はチームとしてどんなプレーをするのか、また選手たちがどういう動きをするのか学んでいる最中だ。これはどうしても時間がかかるものだ。開幕まで1週間あるので、少しでも学んでいきたい。違ったチームに所属すれば、いつでも小さな違いが生まれるものだ。Bリーグのチームとは対戦経験があるが、こうして実際にBリーグのチームに加わってよりシステムや試合へのアプローチの仕方の違いなどが理解できるものだ。

 ただ自分は比較的に新しいチームに順応するのが早いほうだと思っている。自分はチームが求めに合わせられるプレーができるからだ。もちろんまだしっくりいかない面はあるけど、開幕してから1ヶ月くらいで、スムーズにチームのプレーができるようになりたいね」

 だがハンナリーズに、サイモン選手がチームに慣れるまで待てる時間的猶予はない。現状のまま開幕に臨み、彼に相当頼っていくしかない。今シーズンから外国籍選手の出場制限がなくなったこともあり、浜口HC「やはりデイヴィッドとマブンガには36分、ゲームによっては40分出てほしいとは思っています」とフル回転してもらう考えを示した。

 そうした期待はサイモン選手も十分に理解してチームに合流している。

 「ここ2シーズンは(KBL)で相当長いプレータイムを期待されていた(昨シーズンは平均34.7分に出場)。そうしたプレータイムに慣れている。ここまで自分としてもいいプレーができていると思うし、コーチも自分のところにやって来て自分が求められているプレーについてしっかり説明してくれる。すべてが上手く進めば、大丈夫だと思う。

 新しいチームにやって来てそのチームが前シーズンにいい成績を残していれば、もちろん前シーズンと同じような成績を期待されるのは理解している。できれば自分の働きで、またチームがいい成績を残せたらいいね。」

 サイモン選手の特長はその幅広いプレースタイルだけではない。その生真面目さだ。合流してから浜口HCに「選手全員の名前を憶えなさい。日本人はシャイだから自分から積極的に声をかけなさい」という宿題を課せられ、わずか1週間で全選手の名前を記憶してみせた。今時外国人選手、特に黒人選手としてはかなり珍しいタトゥーをまったくしていないというのも、その真面目さの証なのかもしれない。

 「2、3選手の名前がなかなか出て来なかったけど(笑)、チームに溶け込む最初のステップだから。これからも積極的に彼らに声をかけながら、忘れないようにしていくよ。次のステップはみんなの名前を早く呼べるようにできることかな。試合中にコールする時にゆっくり呼べないからね。それに選手たちとジョークを言い合える仲に早くなりたい」

 サイモン選手のハンナリーズへの適応がそのままチームの成功へと繋がる。だが彼の話を聞く限り、そう難しい問題ではなさそうだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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