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44歳。女ひとり暮らしが気楽すぎて、結婚する気になれません~40歳からの婚活入門(5)~

大宮冬洋フリーライター
東京・池袋のマレーシア料理店にて。小林さんはエキゾチックな顔立ちの色白美人です

***医療系事務職、佐藤真理子さん(仮名、44歳)の話***

私は根本的に結婚や出産への願望が薄いんです。高校が女子校だったことが少し影響しているかもしれません。男性がいなくても女性だけで何でもやることにすっかり馴染んでしまいました。

人前で鼻をかめないほど自意識が過剰なので、そもそも恋愛をしにくい人間です。私が好きになるような男性は、私のことなんて相手にしないよね、とあきらめてしまいます。失敗して恥をかきそうなことは最初からやりません。石橋を叩きすぎて割るタイプですね……。

女子高育ち。特に親しい女友だちは6人全員が独身

男性嫌いというわけではありません。性欲は少ないほうだと思いますが、好みの男性には後ろから背中にくっつきたくなります。でも、緊密な関係を求められそうになると逃げたくなってしまうんです。

こんな私でも男性と付き合った経験がゼロではありません。20代の終わりの頃、2年上の男性と2年間付き合いました。見た目が好みだったし、毎日連絡を取りたがる人ではなかったのが私には合っていました。週に1回ぐらいのペースでのデートがちょうど良かったんです。でも、彼は中小企業の跡取り息子でした。家族を作り、子孫を残す必要があります。私は結婚する気がまったくなかったので、お互いのために別れて良かったのだと思います。

結婚しなくても実家からはいずれ出ようと思っていました。4年前から、関東地方の奥地にある実家から車で20分ほどのところで一人暮らしをしています。弟はまだ実家にいますし、両親から「独立したら」と勧められたわけではありません。単に、「40歳のいま出ないと一生出られない」と感じたことが理由です。家族の仲は悪くないので、ちょいちょい実家に帰っていますけどね。

一人暮らしはものすごく気楽です。寂しいと思ったことはありません。一人で本を読んだり映画を観たりするのも好きだし、高校時代からの女友だちとも遊んでいます。季節ごとの花を観に行ったり、地下鉄のスタンプラリーに参加したり。そういえば、特に親しい友だちは6人も全員が独身です。

「失敗したくない」という気持ちが強すぎて気疲れしてしまう

両親が亡くなった後を想像すると、焦りがないわけではありません。40歳を過ぎてからは、「恋愛ができるのもあと数年かな」と思って、合コンなどに誘ってもらったらできるだけ参加するようにしています。今のところ何の成果もありませんけど……。

恋愛には少し興味があるけれど、結婚願望はやっぱりありません。「失敗したくない」という気持ちが強すぎて、生活まで他人と一緒だと気疲れしてしまうからです。勝手にあれこれと気を遣った挙句、「なんで私ばかり」と怒ってしまいそう(笑)。一人暮らしを始めて、実家ですら気を遣っていた自分に気づきました。もう元には戻れません。

結婚で名字を変えたくないという気持ちもあります。フェミニストのような主張をしたいのではなく、「離婚したらまた名字を元に戻すのがすごく大変」だと思うからです。私は悪い結果ばかりを想定して行動してしまいます。

犬が好きなのに、ちゃんと世話をする自信がなくて飼うことが今でもできません。子どもに対する気持ちも同じです。嫌いじゃないけれど、育児の責任に私は耐えられそうにありません。

いま一番欲しいのは、恋人ではなくて、近所に住んでくれる一人暮らしの女友だちです。お互いに何かあったときは気軽に助け合いたいから。

もしかすると、お見合いで結婚することが当たり前の時代だったら、今ごろ結婚して子どもを育てていたかもしれません。私は失敗したくないけれど決められたことには従うタイプだからです。

未婚のままでいると世間的に肩身が狭いですよね。結婚せずにバツイチになりたいなと思ったりしています。 

***筆者より佐藤さんへ***

自由気ままな一人暮らしはやがて飽きるかも。そのときは婚活しましょう

結婚が「当たり前」ではなく「個人の自由」になった現代。佐藤さんのように、「すごく好きな人と結ばれるのでなければ一生結婚しなくてもいい」と思っている人も少なくないはずです。佐藤さんの場合は、「すごく好きな人」が相手であっても気疲れしそうなので一緒に住みたくないのですね。

だからといって、「これからも結婚しない」と決めてしまうのは少し早計だと筆者は思います。佐藤さんは肉親以外の人と一緒に暮らした経験はあるのでしょうか。成人した後は親兄弟とは適切な距離を置いて生活したくなるのが普通です。ちなみに筆者も両親との関係は良好ですが、20代半ばで一人暮らしをした後では「やっぱり実家に戻りたい」と思ったことは一度もありません。

実家は両親の結婚生活の場であり、あなたの結婚生活ではありません。「お互いに気は遣うけれど、なんだか居心地がいい」と感じ合える他人は世の中に意外とたくさんいると思います。

佐藤さんは一人暮らしを始めてまだ4年ですよね。それまで実家暮らしだったのなら、今はものすごく楽しいでしょう。ただし、10年ぐらい経つと「自由気ままな暮らしにも飽きたな」と感じるかもしれません。近所に一人暮らしの女友だちがいたとしても、それはあくまで「友だち」です。お互いを一番大切に考えるような濃い関係ではありません。「君子の交わりは淡きこと水の如し」ですよ。

人生の一部を共有し、支え合えるようなパートナーとは、やはり結婚することが自然だと思います。どんなに相性がいいパートナーに対しても「気遣い」は必要です。疲れたり面倒になることもあります。でも、今後の人生をともに歩むことで得る「面白さ」はそれらのデメリットをはるかに上回っています。

心から結婚したくなったときが、その人の「婚期」なのです。美人で感じのいい佐藤さんなら大丈夫。もうしばらく一人暮らしを楽しんだ後で、必要を感じたら素直な気持ちで婚活をしてみたらいかがでしょうか。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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