【なぜ仮面ライダーは人々の希望となったのか?】最後の希望、仮面ライダーウィザードが守り抜いたものとは
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。
早いもので5月も中旬ですが、皆さまいかがお過ごしですか?
さて、今回のテーマは「希望」。
希望とは、「こうあってほしいとのぞみ願うこと」、または「将来に対する明るい見通し」と定義されています(広辞苑)。
どんなに苦しくつらい状況でも、心の支えである「希望」があるからこそ、人は前に進むことができるのだと思います。
そんな「希望」ですが、我が国が世界に誇る「特撮ヒーロー番組」の世界でも、ウルトラマンや仮面ライダー、スーパー戦隊といったヒーロー達は人々の希望となって、悪と戦い続けました。
そんな人々の「希望」である日本の特撮ヒーローの中で、本記事にて焦点を当てるのが、『仮面ライダーウィザード(2013)』です。
本作は、国民的特撮ヒーロー番組である『仮面ライダー』シリーズの1作品であり、『仮面ライダークウガ(2000)』を起点とする平成仮面ライダーシリーズの第14作でした。
仮面ライダー史上初の「魔法使い」モチーフの主人公が活躍する物語である、『仮面ライダーウィザード(2012)』。今回は本作が紡いだ「希望」の物語について、少しページを開いていきたいと思います。
※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
【昭和から平成へ】進化の道は止まらない!仮面ライダーシリーズが辿ってきた栄光の歴史とは?
さて、ここからは『仮面ライダーウィザード(2013)』のお話に入る前に入りますが・・・少しだけ、仮面ライダーシリーズについてご紹介をさせてください。
仮面ライダーは、漫画家・石ノ森章太郎先生の原作で生み出された特撮ヒーローのことです。1971年にシリーズ第1作『仮面ライダー(1971)』の放送が開始され、主人公が悪の秘密結社ショッカーによって改造手術を施されて、バッタの能力を持った大自然の使者・仮面ライダーとなり、人間の自由と世界の平和を守るため、愛車であるバイク(サイクロン号)に乗り、毎週ショッカーが送り込む恐ろしい怪人達と戦う物語が展開されました。
その結果、『仮面ライダー(1971)』は国内で社会現象的な大ヒットを巻き起こすことになりました。その後、次回作『仮面ライダーV3(1973)』や『仮面ライダーBLACK RX(1988)』等の派生作品が次々に放送され、昭和の仮面ライダーシリーズとして定着していくことになります。
時代が昭和から「平成」に変わると、平成仮面ライダーシリーズの放送が開始されました。その第1作となったのが『仮面ライダークウガ(2000)』でした。平成という時代に適合した新たな仮面ライダーを創造しようとした本作は大好評を博し、『仮面ライダーアギト(2001)』や『仮面ライダー龍騎(2002)』といった後続の作品が毎年製作されるようになります。
その結果、元号が平成から令和に変わるまで放送された全20作の仮面ライダーシリーズは、「平成仮面ライダーシリーズ」として定着することになりました。
そんな全20作の「平成仮面ライダーシリーズ」の中で、唯一「魔法使い」をモチーフに掲げたのが、本シリーズ第14作『仮面ライダーウィザード(2012)』でした。
「魔法使い」と聞くと・・・私達日本人の視点だと、米国映画『ハリーポッター(Harry Potter)』シリーズを連想したり、一方で「魔法の指輪」と聞くと、ニュージーランド映画『ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)』を思い浮かべる方も多いかと思います。
このように、やはり西洋的というか、異国情緒を感じる上で普遍的なモチーフであるのが「魔法使い」。長い仮面ライダーシリーズの歴史において、『仮面ライダーウィザード(2013)』はシリーズ初の魔法の指輪で戦う仮面ライダーの姿が描かれました。
それでは、次章より『仮面ライダーウィザード(2012)』の物語について、少し掘り下げていきたいと思います。
【俺がおまえの最後の希望だ】人々の希望を守る指輪の魔法使い!仮面ライダーウィザードとはどんなヒーロー?
さて、ここからは本題である『仮面ライダーウィザード(2012)』の物語について、見つめていきたいと思います。
本作は2012年9月2日から2013年9月29日までの約1年間、全53話が放送されました。
『仮面ライダーウィザード(2012)』は、青年・操真晴人が変身する「指輪の魔法使い」である仮面ライダーウィザードと、人々を絶望させて同族を増やし、種の繁栄を目的とした「ファントム」(怪人)との戦いを描いた物語。
本作の敵である「ファントム」(怪人)は、絶望した人間(彼ら曰く、ゲート)の中から、まるで殻を突き破るように誕生する存在で、ファントムが誕生するとその人間(殻)は死んでしまうという恐怖の存在。
ワイズマンと呼ばれる人物を首領に、神話の怪物をモチーフとしたファントム(フェニックス、メデューサ)が幹部となって、怪人達を指揮。配下であるファントム達は仲間を増やすために暗躍し、人間を絶望させてファントムを生み出すべく、人の心の隙を突いてくる計画を立てていきます。
そんな悪いファントム達から人々を守るのが、主人公・仮面ライダーウィザード(晴人)とその仲間達。ウィザードは魔法の力を駆使した必殺技(ライダーキック等)を使ってファントム達をやっつけるだけでなく、絶望し壊れかけた人達に寄り添い、彼らを励ますことで、新たなファントムの誕生を防いでいきます。
「約束する。俺がお前の最後の希望だ。」(晴人)
時には、人の「心」そのもの(アンダーワールド)の中に飛び込み、まるで内側から人を修復するかのような驚くべき能力も発揮するウィザードですが、ここで生まれてくるのがこの疑問。
「なぜ晴人は、人の心を救う希望の仮面ライダーになったのか?」
・・・という点。先輩の仮面ライダー達は、悪の組織に改造されて仮面ライダーになった者達がいれば、生命の危機にさらされて緊急手術を行なった結果、仮面ライダーとなった者達、たまたま変身ベルトを手に入れた者達等、その誕生経緯は実に様々でした。
そんな中、晴人が仮面ライダーになったきっかけとは、「生け贄の儀式からの生還」でした。
その生け贄の儀式とは「サバト」と呼ばれる、何者かの意思によって日蝕の日に行なわれた悪魔の儀式。罪のない大量の人達が一カ所に集められ、一斉に絶望させられたことでファントムが大量発生してしまった・・・という凄惨なものでした。
ファントムを生み出した人間は死んでしまいます。大量の人々がもがき苦しみ死んでいく中、その儀式から生還したのが晴人であり、儀式を通じて仮面ライダーウィザードに変身する力を得ます。そんな彼に「指輪の魔法使い」としての才能を見出したのが、「白い魔法使い」と呼ばれる存在でした。
「白い魔法使い」は、生還した晴人に「コヨミ」と呼ばれる謎の少女を託し、晴人の仮面ライダーとしての活躍を支援します。コヨミは記憶を喪失しており、魔法使いである晴人から「魔力」を供給されなければ生きてはいけない存在でした。
「白い魔法使い」は以降も、晴人の仮面ライダーとしての活躍を支援していきます。時に晴人を治療し、戦闘を行なう上での的確なアドバイスも享受します。さらに新たな武器も与える等、戦闘面で晴人をサポートしていきました。
そんな彼のサポートに応えるかのように、晴人は人々の希望を守る「仮面ライダー」としてファントムと戦い続け、人々を守り励ましながら、晴人は強くなっていきます。コヨミは晴人と生活を共にしながら、彼の戦いを側で見守り続けていました。
しかし、物語の終盤。晴人達にとって受け入れがたい事実が判明します。それは、仮面ライダーウィザードが敵対する「ファントム」の首領「ワイズマン」は「白い魔法使い」と同一人物であったことが明らかになりました。
「白い魔法使い(仮面ライダーワイズマン)」は、物理学者・笛木奏が変身する、仮面ライダーとファントム(怪人)双方を裏で操る存在でした。彼が晴人に託したコヨミという少女は、不治の病で死亡した笛木の娘(暦)の遺体に命を宿した者であることも発覚。遺体であるからこそ、晴人から魔力を供給しなれば生きていけない上に、生前の記憶を失っていたのです。
そして仮面ライダーウィザード誕生のきっかけとなった生け贄の儀式「サバト」。これも、笛木が娘である暦を蘇らせるための魔力を大量に集めるための儀式でした。
ここまで上述したことをざっくり纏めるならば、すべては笛木が娘を蘇らせるために計画した「自作自演」だったのです。
家族を喪失する悲しみは胸張り裂けるものだと、汲むべき事情があることは重々理解できるものの、それを他者に繰り返すような悪循環をもたらしてしまった笛木。
彼自身も目的のためならば手段を選ばず、力を誇示して人を力尽くで従わせるだけでなく、他者を過小評価し犠牲も厭わない冷酷な人格を露わにしていきます。
いつも一緒にいた「コヨミ(暦)」も実は遺体であり、「白い魔法使い」の善意も全て偽り。自分は利用されていたに過ぎなかったことに苦悩する晴人ですが、それでも晴人は皆の希望を守る「指輪の魔法使い」である決意を固めます。
そんな中、コヨミの肉体は徐々に崩壊を開始。もともと「遺体」である彼女の体(暦)は限界を迎えていました。
笛木はもういちど「サバト」を開き、大勢の人々の犠牲の下で、コヨミを蘇らせようと行動を開始します。
そんな笛木の前に立ち塞がったのは、晴人と仲間達でした。2度目のサバトは阻止され、晴人は笛木(仮面ライダーワイズマン)に最後の戦いを挑みます。
その戦いの結末は、「痛み分け」でした。
戦いを見守っていたコヨミに寄り添おうと近づく晴人に、笛木は娘への異常なまでの執着で、晴人を蹴り上げ、コヨミに近づきます。
「暦を救えるのは・・・私だけだ」(笛木)
しかし、そんなよろめく笛木にとどめを刺したのは、彼の配下であったファントム(怪人)でした。ファントムはコヨミからも命の源(賢者の石)を奪い、彼女の命は風前の灯火ー。
晴人はコヨミを抱き上げます。
「私は幸せだった。晴人が、輪島の叔父さんが、凛子が、瞬平が、仁藤さんが・・皆が私を受け入れてくれた。」(コヨミ)
「まだこれからだ・・・これからも、俺達と一緒に。」(晴人)
「ありがとう・・・晴人。」(コヨミ)
コヨミは晴人の腕の中で光になって消滅をはじめます。
「・・・待ってくれ!コヨミ!」(晴人)
「晴人が・・・最後の、希望。」(コヨミ)
コヨミは消えてしまいました。晴人はコヨミのためにファントム(怪人)に戦いを挑み、ファントムが奪ったコヨミの命の源(賢者の石)を取り返します。
賢者の石は魔法の指輪へと変わり、仮面ライダーウィザードに力を与え、ファントムを葬り去ることが出来ました。
捉え方によっては、強力な武器にもなり得るこの指輪。しかし晴人は指輪の二次使用を拒否します。
「この指輪はもう使わない・・・これは、誰も知らないどこか遠いところに。このまま静かに眠りたいっていうのが、コヨミの希望だから。それが、コヨミの心を救うことだと思う。」(操真晴人)
晴人の指に装着されたコヨミの指輪は、優しく輝きます。
その後、晴人はコヨミの安住の地を見つけるために、ひとり旅出るのでしたー。
上述してきた『仮面ライダーウィザード(2013)』の物語ですが、全53話で放送が終了します。しかし、彼の戦いは終わることはありませんでした。
旅に出たウィザードこと晴人は、やっとの思いでコヨミの魂が眠れる安住の地を見つけます。しかし、晴人の使命はここで終わることはなく、次に彼を待っていたのは、ファントムではない新たな悪の勢力との戦いでした。
晴人は仮面ライダーウィザードとして、彼の先輩、または後輩である歴代仮面ライダー達と力を合わせてたくさんの悪の勢力と激しい戦いを繰り広げます。
その中でも特に顕著だったのは、「平成仮面ライダーの存在を否定する者」達との戦いでした。
ある者は平成仮面ライダーの歴史を全て絵空事にしてしまおうと暗躍し、またある者は平成を「醜い時代」と一蹴して、平成ライダーを排除するだけに留まらず「平成」という時代そのもののリセットを試みようとしたのです。
しかしそんな身勝手な悪役達を相手に、歴代の平成仮面ライダー達は立ち上がり、自分達の存在意義をかけて、彼らの野望を叩き潰していきました。その中にはもちろん仮面ライダーウィザードの姿もあり、仮面ライダーを信じる人々の「希望」となって戦い続けました。
令和という新たな時代を迎えた現在ー。
自分ではどうしようもできない困難にぶち当たり、心が粉々になったり、八方塞がりとなってしまうこともあるかもしれません。
そんな時は、絶望なんかせずにどうか思い出してみてください。
かつて人々の「希望」となって、苦しむ人達の心に寄り添い続けた仮面ライダーがいたことを。
そして彼の勇姿は、今日も皆さまの心の中で輝き続けていることを。
「いつでも呼べ。必ず駆けつける・・・俺が、最後の希望だ。」(晴人)
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
(参考文献)
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK 仮面ライダー Official Mook 仮面ライダー平成 vol.14 仮面ライダーウィザード』、講談社
(アクセス)
○ユニバーサル・スタジオ・ジャパン
・住所:〒554-0031 大阪府大阪市2丁目1-33
・公式サイト:https://www.usj.co.jp/web/ja/jp(外部リンク)
○Jens Hansen - The Ringmaker (ニュージーランド)
・住所:320 Trafalgar Square Nelson 7010 New Zealand
・公式サイト:https://www.jenshansen.com/(外部リンク)