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イーロン・マスク氏「マンUを買うよ」と衝撃ツイート あとで「冗談」と取り消し

木村正人在英国際ジャーナリスト
突然「マンU買収」をツイートしたイーロン・マスク氏(写真:ロイター/アフロ)

米テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が17日、「サッカーの英イングランド・プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドを買うよ。よろしくね」とツイートした。

マスク氏のツイートは冗談か、本気か、いつも見当がつかない。もし本当なら開幕2連敗でどん底のマンUファンを熱狂させるビッグニュースだ。

しかし、そのあと「本当なの」と問いかけるフォロワーに「買わない。いつもの冗談ツイートだよ。スポーツクラブは買わない」「でも、もし買うならマンUだ。子供の頃からのお気に入りクラブなんだ」と答えた。マスク氏待望論もあったマンUサポーターはぬか喜びさせられた格好だ。

13日のプレミアリーグ第2節でマンUは敵地でブレントフォードと対戦し0-4の完敗。まさかの開幕2連敗で30年ぶりにプレミアリーグ最下位に沈んだ。エリック・テンハグ監督は、移籍を希望していたとされるポルトガル代表のFWクリスティアノ・ロナウドを放出する方針を固めたと英紙タイムズが伝えた。

テンハグ監督は試合翌日の休養を取りやめ、摂氏30度を超す猛暑の中、クラブ練習場に選手たちを集め、14キロメートル近い罰走を科すなど、雰囲気は最悪。アレックス・ファーガソン監督が2013年に引退してから低迷が続くマンUは昨季、プレミアリーグ6位に終わり、欧州チャンピオンズリーグの出場権も逃した。

マンUは2003~05年にかけ、米実業家グレーザー・ファミリーに買収された。多額の借り入れをした上、08年の世界金融危機で資金繰りが悪化。マンUの買い戻し運動が起きるなど、地元マンチェスターではグレーザー・ファミリーに反発する声は根強い。

ウクライナ戦争で制裁対象になったロシア人大富豪ロマン・アブラモヴィッチ氏がチェルシーを米実業家らに売却。人気クラブのリバプールやアーセナルをはじめ、アストン・ビラ、バーンリー、クリスタル・パレス、リーズ・ユナイテッド、ウェストハム・ユナイテッドも米資本によって保有されている。

スタジアム建設や一流選手の獲得にカネがかかる経営と無観客試合が行われたコロナ危機で各クラブとも借金が積み上がっている。

昨年4月、欧州の主要12クラブが参加するスーパーリーグの発足を発表。創設メンバーとしてさらに3クラブが加わり、計15クラブに対してインフラ支援のため35億ユーロ(約4775億円)が米投資銀行JPモルガンから提供されると報じられた。しかし、この計画は猛烈なサポーターの反対で頓挫した。

世界に広がるサポーター、放映権料収入を考えると、プレミアリーグのクラブは米資本にとってますます魅力的な存在になってきた。米国のスポーツビジネスで学んだ経営ノウハウを生かそうとそれほど有名ではないクラブを買収する例も目立つ。

マスク氏は約69億ドル(約9255億円)に相当するテスラ株を売却。総額約440億ドル(約5兆9000億円)にのぼる米ツイッターの買収計画を撤回できなかった場合に備えて手持ちの現金を積み増したとみられている。

マンUは米ニューヨーク証券取引所に上場しており、時価総額は20億8300万ドル(約2793億円)。マスク氏にとっては安い買い物だ。マスク氏が参入していれば、プレミアリーグも俄然、面白しさを増していたはずだ。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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