新型コロナとインフルエンザ 症状や重症化リスクはどう違う?
今年はインフルエンザと新型コロナの同時流行が懸念されています。
これら2つの感染症の症状、重症化リスクはどう違うのでしょうか?
また同時流行を防ぐために私達にできることは何でしょうか。
新型コロナとインフルエンザ、潜伏期の違い
潜伏期とは、ある病原体に感染してから、何らかの症状が出るまでの期間を言います。
新型コロナの潜伏期は流行初期では約5日と言われていました。
しかし、様々な変異株が出現して以降、だんだんと潜伏期は短くなってきています。
オミクロン株では潜伏期が約3日になっており、インフルエンザの潜伏期の約2日よりもまだ1日ほど長いものの、だんだんと近づいてきています。
新型コロナとインフルエンザ、症状の違い
流行初期の新型コロナは、嗅覚異常・味覚異常という特徴的な症状が多く報告されていました。
また、咳の症状は当初から頻度が高かったものの、咽頭痛や鼻水については6〜20%とそれほどよくみられる症状ではありませんでした。
しかし、現在のオミクロン株による新型コロナの症状は、咽頭痛や鼻水の頻度が高く、嗅覚異常・味覚異常の症状が少なくなっています。
発熱、頭痛、関節痛・筋肉痛といった全身症状も共通しています。
結果として、現在の新型コロナはインフルエンザの症状に酷似しています。
つまり症状だけで新型コロナとインフルエンザを区別するのは非常に困難です。
したがって、診断のためには検査に頼らざるを得ません。
なお臨床医の間では、インフルエンザの患者さんの咽頭にはリンパ濾胞が観察されることが知られており、診断の補助に使われることがありますが、どうやら新型コロナでもこのリンパ濾胞がみられることがあるようで(筆者は感染リスクを考慮して新型コロナ疑いの患者さんの咽頭は積極的には確認しないので、知人からの情報です)、このリンパ濾胞による区別も難しいのかもしれません。
新型コロナとインフルエンザ、重症化リスクの違い
新型コロナに罹患したときに重症化リスクの高い方と、インフルエンザに罹患したときに重症化リスクが高い方は、ほとんどが共通しています。
新型コロナに罹ると重症化しやすい方
・65歳以上の高齢者
・悪性腫瘍
・慢性呼吸器疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患、脳血管疾患
・肥満(BMI 30以上)
・喫煙
・免疫不全者(固形臓器移植後、免疫抑制薬・調整薬の使用、CD4 200未満のHIV感染症)
・妊娠後半期
厚生労働省. 新型コロナウイルス感染症診療の手引き 8.1版を元に筆者作成
インフルエンザに罹ると重症化しやすい方
・生後6ヶ月から5歳の小児
・50歳以上の人
・慢性肺疾患(喘息を含む)、心血管疾患(高血圧症を除く)、腎疾患、肝疾患、神経疾患、血液疾患、代謝性疾患(糖尿病を含む)を有する成人および小児
・免疫不全者(免疫抑制剤使用、HIV等を含む)
・妊婦
・アスピリンやサリチル酸を含む薬を服用しており、インフルエンザ罹患後にライ症候群を発症するリスクのある小児および青年(生後6ヶ月から18歳まで)
・著明な肥満(BMI>40の成人)
・介護施設や慢性期病棟の入所者
米国CDCの推奨(MMWR Recomm Rep. 2022 Aug 26; 71(1): 1–28.)を元に筆者作成
新型コロナでは小児は成人と比較して重症化リスクは低いと言われていますが、インフルエンザでは5歳未満は重症化しやすいと言われています。小児ではインフルエンザ脳症などが問題となることがあります。
ただし、2022年に入ってからの20歳未満の新型コロナによる死亡者数はすでに41例となっており、2009年の新型インフルエンザのときの20歳未満のインフルエンザによる死亡者数と同程度となっています。感染者数の多さ、流行の規模を考えると小児にとっては新型コロナも危険な感染症と言えます。
また、新型コロナとインフルエンザの致死率はだんだんと近づいていると言われていますが、70歳以上の高齢者においては新型コロナの方がまだ致死率は高いという試算が出ています。
新型コロナなのかインフルエンザなのか、症状だけでは区別が困難であることから、いずれかの重症化リスクに当てはまる方は特に早めに診断・治療のために医療機関への受診をするようにしましょう。
先日、重症化リスクの高い方は、前述の新型コロナまたはインフルエンザが疑われる症状があれば、発熱外来、かかりつけ医、地域外来・検査センターを速やかに受診し、新型コロナとインフルエンザの検査を行うというフローが政府から示されました。
一方で、重症化リスクが低い方については、まずは新型コロナ検査キットの自己検査を行い、陰性であった場合はインフルの検査をかかりつけ医などに相談、陽性であった場合には健康フォローアップセンターに連絡、というフローが示されています。
しかし、症状が重いと感じるなど、受診を希望する場合には発熱外来、かかりつけ医などを受診することは可能となっています。
新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンの両方を接種して流行に備えよう
以上から、これから冬を迎えるに当たり、新型コロナとインフルエンザ、両方に備える必要あります。
今年から新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは同時接種が可能となりました。
また、同じ日でなくとも、14日空ける必要はなく「接種間隔についても問わない」となっていますので、柔軟に接種スケジュールを立てることが可能となります。
今年はぜひ、新型コロナワクチン、インフルエンザワクチンの両方を接種することをご検討ください!
また、新型コロナとインフルエンザはどちらも飛沫感染、接触感染を主要な感染経路とする感染症です。
新型コロナだけでなくインフルエンザの予防のためにも、引き続き屋内でのマスク着用、こまめな手洗い、定期的な換気、など基本的な感染対策を続けましょう。
※大阪大学大学院医学系研究科では、新型コロナに感染したことのある方の後遺症の症状について継続的に調査を行っています。研究の詳細はこちらからご覧ください。これまでに新型コロナと診断されたことのある方は、こちらからアプリをダウンロードいただきぜひ研究にご協力ください。