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テスト生としてロッテ・キャンプに参加する大隣憲司が感じ始めている懐かしい感触

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
キャンプインに向け順調な調整を続けている大隣憲司投手(筆者撮影)

 ロッテが25日、テスト生として3選手をキャンプに参加させることを発表した。そのうちの1人に大隣憲司投手の名前が入っていた。昨年ソフトバンクから戦力外になった33歳のベテラン左腕。現役続行を目指し、11月の12球団合同トライアウトに参加したものの他球団からの誘いはなかった。しかしその後も獲得オファーを待ちながら、母校の近畿大野球部でずっと自主トレを続けてきた。

 キャンプインまであとわずか。まさに野球人生を賭けた戦いに挑むわけだが、大隣投手の表情に悲壮感は微塵も感じられない。むしろ充実した表情で笑顔を覗かせながら自主トレに汗を流していた。キャッチボールで投げるボールを端から見ていても伸びの良さが確認できるほど、状態の良さを窺い知ることができた。

 「ボールを前で離せるようになっているのを実感してます。ボールを見ていても伸びてるなというのが感覚的に分かるんです。手術前のような感じになってきてますね」

 大隣投手ばかりではない、この日キャッチボール相手を務めていた同じく近大OBのダイヤモンドバックスの中後悠平投手も、何度か捕球をミスするほど大隣投手のボールの伸びを絶賛している。

 「手元で伸びてくるので捕球が難しいんです。めちゃめちゃいい球です」

 実は大隣投手のこの“変化”には理由があった。この冬自主トレを続けながら、新たな試みを行っていたのだ。親交のある武豊騎手とともに、京都市内のジムで武氏のパーソナル・トレーナーの指導を受けながら、身体の動かし方を見直すメンテナンス、ケアに取り組み続けた。その結果、動きの質が徐々に改善されていったのだ。

 「(身体のケア的トレーニングは)今までやったことがありませんでした。ボールを投げていても、以前よりも胸が開いている感覚がありますし、腕の振りもスムーズになってきています。だからボールをより前で離せるようになってきたんでしょうね」

 大隣投手は2013年のシーズン中に「黄色靱帯骨化症」との診断を受け、治療のため手術を余儀なくされていた。翌年には見事復帰を果たしているものの、残念ながら手術前のような投球を披露することはできなかった。やはり手術が影響したのだろう。いつしか身体のバランスが乱れ、徐々に投球にも悪影響を及ぼしていったようだ。

 それが新しいトレーニングを導入したことで、大隣投手が肌で感じ取れるほど手術前の感覚に近づいているのだ。そうした状態の良さを実感できるからこそ、大隣投手の表情は充実感に満ち溢れているのだ。手術前の2013年にはWBC日本代表に選ばれるなど、元々は日本を代表する先発左腕だ。手術前のような投球が蘇れば、テストにパスするどころかロッテの大きな戦力になれる力を十分に備えている。

 大隣投手の表情を見ていると、今シーズンは彼にとって“復活”の年になるのではと期待を抱かずにはいられなくなる。まずは早い時期でのテスト合格を待ち侘びたい。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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