基本は現金とクレジットカード…二人以上世帯の代金支払い方法の移り変わりをさぐる
・二人以上世帯の決済手段は少額では現金、多額ではクレジットカードがメイン。
・クレジットカードの利用率は上昇中。
・電子マネーも利用率は上昇していたが、直近年で減少に。
少額は現金、金額が大きくなるとクレジットカードも
対価支払いには現金だけで無くクレジットカードや電子マネーなど、多彩な手段を用いることができる。二人以上世帯における、お金の決済手段の移り変わりと現状を金融広報中央委員会の「知るぽると」が毎年実施している調査「家計の金融行動に関する世論調査」(※)の公開結果から確認する。
まずは直近2017年における、金額別主要決済手段。4つの選択肢のうち「主なもの2つ」を答えてもらっている。
二人以上世帯の場合、小口決済でも電子マネーなどが使われる状況はあまり無い。大体が現金支払いで、金額が大きくなるに連れ、クレジットカードの比率が高くなる。1万円を超えると現金以上の利用率にまで上昇する。
ここで、電子マネーの利用度の低さに首をかしげてしまいそうになる。スマートフォンの普及、対応店舗数の拡大に伴い、少額決済が便利な電子マネーはもっと普及しているはずではないか、と。
そこで質問用紙を確認すると、文言には「あなたのご家庭では、日常的支払い~」とある。つまり世帯構成員一人ひとりのプライベートでの支払いではなく「世帯全体の家計として」との認識で回答している可能性が高い。
クレジットカードを家族全体の買い物に使う事はあっても、基本的に個々の持ち物である(スマートフォンなどの携帯電話に組み込んでいる)電子マネーを「家庭全体向けの」買い物に使うことは多くない。電子マネーは「家計全体のお財布」では無く、「世帯構成員一人ひとりのお小遣い・お財布」的な要素が強い(例えば無断に自分のおサイフケータイで、妹の漫画雑誌や家族全員の夕食の材料を買われたら、怒らないはずが無い)。そのように考えれば、二人以上世帯で電子マネーの「日常的支払」比率が低いのも納得できる(必然的に家庭(世帯)の支払い=個人の支払いとなる単身世帯では、電子マネーの利用頻度も高い結果が出ている)。
それでも少しずつ増える電子マネー利用率。しかし直近年では
二人以上世帯では現金とクレジットカードが主流で、電子マネーなどはあまり使われない。これが基本となるが、時代の流れとともに少しずつ変化も見受けられる。
データが公開されているのは2007年から2017年の11年分。その11年の間で現金の利用は各金額領域で漸減し(ただしごく少額の支払いにおいては現金の利用率はあまり変わらない)、クレジットカードや電子マネーの利用率が少しずつ増加しているのが分かる。特に電子マネーは2010年以降急増しており、「おサイフケータイ」普及が大きな後押しとなったことは容易に想像できる。また、その時期においてもクレジットカードの少額決済での利用頻度は落ちておらず、現金の利用率が1000円超の金額では減少していることから、「おサイフケータイなどの電子マネーが現金の代わりに(少しずつながらも)使われ始めた」と考えれば道理は通る。
また電子マネーの動向を詳しく見ると、5000円以下ではますます利用率が高まるのに対し、それを超えると利用率の上昇度合いは半ば足踏み状態。少額決済の便利ツールとしての認識が強まり、クレジットカードとの使い分けが進んでいるようだ。
他方、直近の2017年に限れば、すべての金額の仕切り分けで前年比マイナスを示している。現金もほとんどの金額領域で前年比マイナスを計上しているのと併せて考えると、クレジットカードによる支払いがより増加、集中化し始めたようだ。
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※家計の金融行動に関する世論調査
直近分となる2017年分は二人以上世帯においては、層化二段無作為抽出法で選ばれた、世帯主が20歳以上でかつ世帯員が2名以上の世帯に対し訪問と郵送の複合・選択式で、2017年6月16日から7月25日にかけて行われたもので、対象世帯数は8000世帯、有効回答率は47.1%。単身世帯においてはインターネットモニター調査で、世帯主が20歳以上70歳未満・単身で世帯を構成する者に対し、2017年6月23日から7月5日にかけて行われたもので、対象世帯数は2000世帯。過去の調査も同様の方式で行われている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。