立て続けに部下に「びっくり退職」されてしまった上司は、一体何をしておけばよかったのでしょうか。
■そんなに簡単に批判などしてくれない
日本人は一般に、「批判的なことを直接的に言われることが大嫌い」だと言われています。ですので、逆に「相手に批判的なことを直接的に言うことも大嫌い」です。
つまり日本人同士の間では、相手に気を遣いながら、やんわりと曖昧な表現で批判することはあっても、かんかんがくがくと率直な議論を繰り広げることは難しいのです。
メンバーから突然やめたいと言われたとき、マネジャーは「いやいやいや、何があったの?嫌なことがあれば、先にもっとはっきりと言ってくれればよかったのに」と思うことでしょう。
私もそんな経験はあります。しかし、多くの人たちはそんな簡単に上司批判はしてくれないのです。
■批判をする「義理」がなくなっていく
ただでさえ批判することが嫌いな日本人にとって、会社や職場や上司を批判するのはとても負荷のかかることです。
あえてそんな負荷のかかることをするのは、その対象に対して「義理」や「恩」「愛」「忠誠心」などの精神的なつながりを感じているケースです。
しかし、批判的になるということは、その対象が自分にとって何か悪いものであると感じていることでしょうから、精神的なつながりは減滅していく可能性が高い。そして精神的つながりが減滅していけば、批判をしてあげる「義理」もどんどんなくなって、結局、不満なのに何も言わないままになるというわけです。
■「聞く」のではなく「見る」しかない
不満を持っていても、きちんと批判をしなければ、対象は改善されることはなかなかありません。そうするとさらに不満は募り、いつしか限界を超えていく。そうして「突然辞める」という現象が起こるのではないでしょうか。
管理職として「メンバーの声に耳を傾けていた」と思っていても、声に出してくれないものはどれだけ耳を傾けても聞くことはできません。
ならばどうすればよいか。声に出してくれないのであれば、「聞く」のではなくて、メンバーがやっていることを「見る」しかないのではないかと思います。人は思っていることを口にしないでも、さまざまな非言語メッセージを送ってしまうもの。
■どんなことを見ればよいのか
ですから、もしメンバーの考えていることがわからないというのであれば、その行動をじっくり観察してみましょう。
仕事振りや顔の表情、勤怠の状況(労働時間など)に変わったことはないでしょうか。そもそも日頃からよく見ていないという場合は、変化があってもしばらくわからないかもしれません。
非言語のメッセージは明確なものではないので、「普段とどう違うか」「いつから変わったか」「その時何があったか」などと推理していかなければ心を読むことはできません。
小さな変化を見つけて、それを生み出した原因がないか考えてみましょう。
■原因不明のまま「最近おかしいぞ」はなるべくやめる
そのメンバーの変化(=不満)を生み出した原因となる改善すべき事象が何かを探しても、何も見つからなければ、自分やメンバーに近い立場の人などに何か思い当たる節はないかを聞いてみてもよいでしょう。
くれぐれも原因不明のまま手ぶらで「どうした?なんだか最近おかしいぞ」的なことをメンバーに言うのは避けるべき。そんなことを言えば、「おかしいのはそっち」「やっぱり何にも気づいていやしない」と思われるのがオチです。
「周辺調査」をしたうえで、確からしい仮説が見つかってから、「もしかすると、このことに不満を持ってはいないですか」と打診できればベストです。
■わからなければ最後は頭を下げて真摯に尋ねる
それでも何が悪いのか原因がわからないこともあります。一生懸命探してみてわからなければ仕方ありません。頭を下げて「なぜだかいろいろ考えてもわからないのですが、何かあなたが不満を持っているような気がするのですが間違いでしょうか」などと真摯に尋ねてみるのみです。
もちろん上述のように呆れられるかもしれませんが、メンバーのことを思っている気持ちが伝われば、憎くは思わないのではないでしょうか。
もし「そこまで自分のことを見ていてくれた」「そんなに大切に考えてくれていたのか」と思ってくれれば、重い口を開いて腹に溜まっていたものを告白してくれるかもしれません。そうすれば、不意打ちの辞職のようなことは、なくなっていくのではないかと思います。
※OCEANSにて若手のマネジメントに関する連載をしています。こちらも是非ご覧ください。