ドイツの生産者物価指数は日本のオイルショック時の卸売物価指数に匹敵、市場での物価警戒が再燃
ドイツ連邦統計庁が19日に発表した7月の生産者物価指数(PPI)は前年同月比37.2%、前月比5.3%上昇し、いずれも1949年の統計開始以来最大の伸びとなった。
ウクライナ戦争によりエネルギー価格の急上昇が続いていることが背景にある。エネルギー価格は前年比105%上昇した。天然ガスが163.8%、電気は125.4%それぞれ上昇した(19日付ロイター)。
ロシアによるウクライナ侵攻とそれを受けたロシアへの経済制裁により、ロシアからドイツなど欧州への天然ガスの供給が大幅に減少している。このため天然ガス価格の上昇が続いており、それによって欧州の指標電力価格は過去最高値を更新するなどしている。
原油先物価格はWTI先物で直近ピーク時の130ドル台から、ここにきて100ドルを割り込んでいる。原油価格のピークアウト感もあったが、天然ガス価格の上昇は止まらない。
欧州ではロシアからの天然ガスの供給減に加え、猛暑で通常を上回る需要が生じている。暑く乾燥した気候で河川の水位が急速に低下し、エネルギー商品の輸送に支障が出ているとの指摘もある。
暑さによる特殊事情は季節が変われば収まる可能性はある。しかし、供給そのものが元に戻るようなことは当面は考えづらい。
今回のドイツの生産者物価指数が1949年の統計開始以来最大の伸びとなったことで、ドイツなど欧州の債券市場に動揺が走り、国債利回りが大きく上昇した。ドイツの10年債利回りは前日比0.14%上昇し、1.24%と4週間ぶりの高水準を付けた。22日には1.3%台に上昇した。
この欧州の国債利回りの上昇(国債価格の下落)は、米国債券市場にも影響を与え、米10年債利回りは一時2.99%と3%に接近。22日には3%台を付けるなど、市場ではあらためて物価への警戒を強めてきた。
米10年債利回りは6月に3.5%近辺に上昇後は、いったんピークアウト感が強まった。FRBによる大幅な利上げがリセッションを起こし、来年には利下げかといった観測まで出ていた。
しかし、物価そのもの上昇が止まらなければ、FRBやECBは大幅な利上げを継続せざるを得ないとの見方が再び出てくることも予想される。米10年債利回りが再び上昇基調となり、3.5%を上回ってくる可能性がないとも言えなくなってきた。
戦後日本の政策金利のピークは9%であり、1973年と1980年に付けた。1973年10月に第4次中東戦争が始まった。アラブ諸国は禁輸措置を実施し、石油輸出国機構(OPEC)は原油価格の引き上げを実施。この結果、石油価格は一気に4倍となり、卸売物価が前年比30%、消費者物価指数は前年比25%も上昇した。いわゆるオイルショックである。
今回のドイツの7月の生産者物価指数(PPI)の前年同月比37.2%というのは、オイルショック時の日本の卸売物価をも上回っている。前年同月比で5月は33.6%上昇、6月は前年同月比32.7%上昇と、ここにきて30%を超える状態が続いており、この数値だけみると1973年のオイルショック以上の天然ガスショックが欧州を襲っていると言えるのである。