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全豪OP:18歳大坂なおみ、予選圧勝でグランドスラム初出場。夢見るはセレナ・ウィリアムズとの対戦

内田暁フリーランスライター

「物凄くハッピーだし、自分を誇りに思うわ!」

予選決勝を6-2、6-1で完勝し、18歳にして勝ち取った初のグランドスラム本戦の切符。その喜びを、試合後の大坂なおみは率直な言葉に込めますが、勝利の瞬間の彼女は表情を変えることもなく、自分が今しがた成し遂げたことすら、さも当然と感じているかのよう。

「そう? 私って感情が表情に出ないから、みんな、私が何を考えているかわからないっていうのよ……」 

18歳はそう言うと、むりやり表情を変えようとするかのように、自分のほっぺたをつねって見せました。

時速200キロに迫るサービスに、破壊力に満ちたストローク。そして16歳にして、元全米女王のストサーを破った実績――それらの経歴を見るだけでも、そのポテンシャルは疑いようのない大坂ですが、これまで安定した結果を残すに到らなかったのは、一つには年齢による出場大会数上限があったこと。そして攻め急ぎやイージーミスを重ねるなど、プレーに荒さが目立った点にありました。しかし、昨年10月に18歳の誕生日を迎えたことにより、懸案事項の一つであった、年齢制限は完全解除。そして偶然か必然か、その頃から彼女のプレーは、安定感が増していきます。昨年終盤は、WTAツアー最終戦と同会場で行なわれる若手の登竜門イベント“ライジングスター”で頂点に。この大会で大坂は「無理をせず、我慢するところは我慢して勝つ感覚を会得した」のだと言います。事実、その後はタイのWTAチャレンジャーで準優勝。今季もホバート大会で予選を勝ち上がり本戦でも初戦を突破するなど、着実に勝利を重ねてきました。

充実度に満ちたまま挑んだ今回の予選では、その成長の証を存分に発揮します。2回戦のパノワ戦では、相手のパワーショットをしぶとく拾い、機を見て放つバックのダウンザラインで、試合のターニングポイントをものにしました。迎えた予選決勝は、全ての面で150位の対戦相手を上回っていたと言えるでしょう。試合最初の相手ゲームを40-0から逆転でブレークし、まずは主導権を掌握。以降は守備と攻めのメリハリを利かせたテニスで、1時間3分のスピード勝利を手にしました。

3度目のグランドスラム予選挑戦で、初めて手にした本戦出場の栄誉。しかし単なる栄誉以上に、大坂には今回の勝利を喜ぶ理由があったようです。それは本戦に出れば、彼女のアイドルであるセレナ・ウィリアムズと対戦の可能性があること。

しかし実際には、セレナがいるドローの山には、予選突破選手が入るスポットはほとんどありません。そのことを伝えると大坂は、口をへの字に曲げて、悲しそうな表情を浮かべます。「ストサーや、クビトワと初戦で当たる可能性もあるよ」と言っても、あまり関心を示さぬ様子。

「とにかく、セレナと試合したいの!」 

そう言った時の表情には、憧れの存在への敬意や対戦への期待感が、まっすぐに映し出されていました。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookから転載。連日テニスの最新情報をお届けしています

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

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