【横須賀市】井戸のお話
我が町走水を歩いていると、民家の庭や道路脇に、ぽつぽつと井戸があるのが目につきます。
もう使われず蓋がしてあったり、現在も庭の植木に使っている家もあるようです。そんな中の一つ
覚栄寺の境内に「滝の井戸」と呼ばれている古い井戸があります。この井戸の歴史は古く、100年程前手彫りで作られたと聞きます。
当時は町の33戸の家で共同で使われ、水源は裏山から引かれて始終休みなく清浄な
水がたたえられていたようです。水道が引かれていなかったため、各家で井戸水を手桶で汲んで、天秤棒を担いで水瓶に蓄えていました。
主に炊事に使い、洗濯は井戸に集まって行い、火事の際にもポンプや手桶リレーで
消火するなど、井戸は町内の生活の中心であり,団らんの場でもあったと「今は昔走水物語」に書かれてありました。
町に水道水が引かれてから「滝の井戸」の役割は大きく変わっていったようです。海水浴の帰りに子供たちがその水で体を洗ったり
庭の植え込みや畑に使われるといったように~。
さて、今から20年程前に「滝の井戸を守る会」が発足されました。有志が集まって、一年に一度井戸の清掃をするのが主な活動です。9月初旬の日曜日、守る会が井戸を清掃をするというので、今年の当番の方にお願いして
取材させて頂きました。掃除は守る会ができるずっと前から住民の手で行われていたとのこと。
バケツで底が見えるまですくい出し、壁に付いた汚れもタオルでふき取るなど、、聞けば気が遠くなるような大変な作業だったと思います。
水道が引かれてからは、それまで使っていた15,16世帯の一人が、災害のため一年に一度清掃をする活動を提案したそうです。
それが「滝の井戸を守る会」の始まりと聞きました。
清掃当日は、朝からぐんぐん気温も上がって暑くなりそうでした。8時に集合とのことでしたが、その時間に行ってみると
すでに何人かの人たちの姿がありました。井戸の前の広場の雑草は、その人たちのお陰ですっかり綺麗に刈り取られていました。
井戸を見てみるとポンプであらかた水を抜いた後。井戸の底がはっきりと見えて
いました。
この滝の井戸は砂岩を手彫りで作ってあるため水を抜いた後の岩肌はごつごつしていてちょっと恐い感じもしました。中の水がほぼ無くなったところで、井戸に入った人が、電動たわしで壁面や底を丁寧に洗っていきます。
たわしの掃除が終わると底には壁土が剝がれ落ちて結構泥水がたまっていました。
その出し切れなかった泥水を、井戸の中にいる人がバケツで一杯一杯すくい出し、外の人とのリレーで最後の一滴まですくい出します。その間,他の人達は草刈り、刈った後の草の袋詰めをしました。バケツリレーも草刈りも、この暑さの中で皆汗だく…かなりの重労働でした。でも集まった人達17~18人…
早朝から始めて11時頃までにはほぼ完了しました。もっとも草刈りは前日一部の方々が手を付けてくれていたおかげ…
途中で皆持参の水分を補給したり、会員の方から差し入れのお茶や、休憩時間には
スイカが出たりして感激。ようやく最後まで無事に作業を終えました。この会の中心的な存在Ⅰ氏から~
ボランティアで参加してくれた人たちへの労いの言葉がありました。また「滝の井戸を守る会」についてのお話もしてくれました。
後日、水が溜まって少しづつ側溝に流れ出ている新たな「滝の井戸」に
行ってみました。
清掃の時、びっくりしてあわてて這い出してきた井戸の住人サワガニさんは、無事に元に戻ったかな。
帰り際そっと水に手をつけてみると、ひんやりと冷たいのにほんわか柔らかい手触りがしました。
「滝の井戸を守る会」の会員の人達、ボランティアで手伝いに来てくれた人達皆が力を合わせて…
普段ほとんど使わない井戸をきれいにしました。いざという時、この水が使えるようにしてくれる~
「滝の井戸を守る会」の会員の方々、ボランティアの人たちの地道な活動は一住民として、何より安心…長きにわたってこのような活動をしてくれる
走水地区の人々を改めて誇りに思いました。
「滝の井戸を守る会」
毎年9月第一日曜日 午前8時から清掃をします 持参するもの…草刈りできる道具 会員…年会費500円(清掃に参加した時、その場で徴収、清掃に参加しなかった場合は年会費1000円) 現在会員数10軒 *なお滝の井戸は、裏山の上の方で不法投棄のごみ問題があり、 今は飲み水に適していないようです。保健所健康安全科学センターによると、自費で簡単な水質検査は可能。基本的には地下水を飲むことは勧めていない。災害時、トイレ用,洗濯などに使って欲しいとのことでした。
*来年、心ある人、体力に自信のある人は、是非 井戸の清掃にご協力下さい。