Yahoo!ニュース

アニメ声優・タレント・コスプレ女王……韓国サブカル界のアイドル、ソ・ユリとは?

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
ソ・ユリ(写真提供=Dmost Entertainment)

韓国で人気声優として活躍するソ・ユリ。声優として地位を確立している彼女が、“マルチタレント”として変身するキッカケとなったのは、2015年だった。

バラエティやドラマでも活躍するマルチタレント

韓国人気バラエティ番組『マイ・リトル・テレビジョン』(MBC)の進行役を顔出しで務め、人気を集めたのだ。

それからは声優という枠を超えてバラエティ、ドラマ、CMなどで幅広くタレント活動を展開。韓国ではタレントのことを“パンソンイン(放送人)”と呼ぶが、人気放送人のひとりになっている。

“脱アジア級の美ボディ”レイヤンは、マッスル大会でその名を世に知らしめ、それをステップにCM、バラエティ、ドラマとその活動範囲を広げてタレントになったが、ソ・ユリもそれに近いステップアップを重ねてきたわけだ。

「実は、声優になる前に朝の情報番組とか、ゲーム番組などでリポーターをやっていたんです。バイト感覚でね。

だから声優の専属契約が終わりフリーランスになって、昔お世話になった放送作家さんやスタッフさんから再び連絡をもらった時も、ためらいはなかったですね。むしろ経験があるから、またやりたいと思ったくらいです」

2016年には『嫉妬の化身』(SBS)で初のドラマレギュラー出演を果たし、ウェブドラマ『ドゥリシンナヨ?』では主人公を務めるなど、女優としても可能性を広げている。

(参考記事:韓国ゲームマニアたちから“女神”と呼ばれる“美しき声優タレント”ソ・ユリとは?)

ならば、顔出しの究極とも言える女優の仕事をする上で、何か特別な意気込みはあるだろうか。そんな質問を投げると、彼女は女優の仕事も所詮は演技の延長線にすぎないという。

「いえいえ。声優も女優も、広い意味で言えば演じる仕事。役者です。つまり、女優業も演技の延長上であるわけですから、特別に意気込むようなことはありません。

目の前にあるのがカメラか、マイクかによって要領の違いがあるだけで、発声や呼吸、感情など、基本は同じだと思います。

ただ、顔が映るからにはもっと綺麗に見せたいなと思うところもありますが、それはすべての役者にとっての望みではないでしょうか。

それに、アニメと違ってドラマでは悪役のほうが楽しくて、やりやすいなという発見もあって、勉強になりました」

チャーミングな表情で「悪役のほうが楽しい」というのだから痛快だ。その大胆さと強心臓が彼女の魅力でもある。

有名な“コスプレ女王”でもあるソ・ユリ

また、マルチタレントという顔を持つ一方、彼女を紹介する上で欠かせないのは、「コスプレ」だろう。

声優になる前はリポーターだけでなく、韓国版コミケやコスプレ・イベントなど、国内のあらゆるサブカルイベントの司会をほとんど担当。その上、彼女自身も韓国でコスプレ文化が普及した初期からコスプレイヤーとして活動している。

「昔は熱血コスプレイヤーでした。自分で衣装作りもやっていましたよ。今は衣装や撮影などは知り合いにお願いしていますが、私が直接見直してから公開しています」

意外かもしれないが、最近は韓国でもコスプレヤーが芸能人並みの人気を誇っている。

韓国で最も有名なプロ・コスプレチーム「Spiral Cats(スパイラル・キャッツ)」のTASHAは、“美女コスプレイヤー”として韓国はもとより世界的にも知られており、ファンクラブ会員数だけで30万人近くいると言われるほどだ。

伝説的なジャンナ姿で“コスプレ女神”の座に

そんな韓国のコスプレ文化において、ソ・ユリが披露したジャンナのコスプレ姿は伝説的だ。ジャンナは世界的人気ゲーム『League of Legends』の登場キャラクターのひとりだが、彼女はその変身姿で“コスプレ女神”の愛称を獲得したのだ。

(参考記事:【画像あり】“女神”と呼ばれるコスプレ女王ソ・ユリの原点とは―!?)

ソ・ユリもジャンナのコスプレが最もお気に入りだという。

「実は私、『League of Legends』のジャンナの声を担当していたんです。それで約5年前、遊び心で“1万件のいいね!が集まればジャンナのコスプレをします”とSNSに公約したんです。

ジャンナの衣装ってほぼビキニじゃないですか。私がそれを着るのは1年間ダイエットしてからだなぁと思っていて、いいね!1万件が集まるのに1年はかかるだろうという計算もあったのですが、1時間足らずでいいね!1万件を達成するという事態になってしまって、焦りました。

結局、一生懸命運動と食事制限をして、なんとか公約を守りましたけど」

あの美しいコスプレ姿にそんな隠されたエピソードがあったのかと意外だったが、聞けばその反響は韓国だけではなかったらしい。

「その写真が米国のコスプレ関連コミュニティサイトのメインに上がるなど、全世界に広まりました。今も忘れた頃にまた記事で見かけたりします(笑)」

韓国のコスプレ人気と日本のサブカルへの興味

近年、韓国ではコスプレ・イベントだけではなく、モーターショーやゲームショウといった見本市や展示会でもモデルやコンパニオンなどが着飾るコスプレ文化が定着しつつあるそうだが、ソ・ユリは世界にもその名が知れたコスプレイヤーの顔も持つわけだ。

(参考記事:【ギャラリー】韓国最大級のゲーム祭典を盛り上げる“美女コンパニオン”たち)

そんなサブカル層からも支持されるソ・ユリは、日本についてどんな印象を持っているのだろうか。

聞けば普段から仕事やプライベートなどで日本の文化に触れる機会は多いが、実際に日本に行った経験は2回しかないという。ちょうどインタビュー前日に大阪旅行から帰ってきたところだったということもあって、話題は自然と旅の思い出話となった。

「大阪で球体関節人形のイベントがあると聞いて、友だちと行ってきました。ただ、雨が降っていていろいろと大変でしたね。

食べたかった料理も多かったのですが、イベントに気を取られて食べずじまい。コンビニでどら焼きを買って、“これがドラえもんの好物なんだねー”と話しながら食べたのが記憶に残っています」

日本でもさまざま刺激を受けたという彼女の夢は、意外にも素朴で本質的だ。

「実は、病気療養のためここ1年間休業し、復帰したばかりです。そこで思ったのですが、ただ地道に今のお仕事を続けられたらいいな、と。声の老化が最も遅いと聞きますが、まだ精力的に活躍する声優の先輩たちを見ていてもそう思います。

私も先輩たちのように、長く愛される存在になりたいですね」

取材時のソ・ユリ(撮影=LEE HANA)
取材時のソ・ユリ(撮影=LEE HANA)

メインカルチャーからサブカルチャーまで縦横無尽に活躍するソ・ユリ。彼女とのインタビューでふと思ったのは、韓国と日本の文化交流の面白さだ。そこに“カルチャーショック”はない。

あるのは、同じ“楽しみ”や“面白み”を共有できる同質感。そのプレゼンターの役割を務めているソ・ユリに、今後も注目していきたい。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事