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台風直撃で50時間の停電経験 猛暑の中「マイカーだけは死守すべき」と痛感した理由

柳原三佳ノンフィクション作家・ジャーナリスト
2019年の台風15号で根元から折れた電柱。千葉の停電は長期間に(筆者撮影)

■4年前、千葉県では大規模停電・断水被害が発生

『非常に強い台風7号が、お盆休み真っ只中に、関東、東海エリアを直撃し、大荒れになる恐れがある……』という報道が相次いでいます。そのニュースが報じられるたびに流れるのが、今から4年前、2019年9月に千葉県を襲った台風15号の映像です。

 私自身、あのときの台風の猛威とその後の長時間停電&断水を経験した千葉県民のひとりとして、あの映像を見るたびに当時の過酷な出来事と周辺の惨状を昨日のようにまざまざと思い出します。

『令和元年版消防白書』(総務省消防庁)によれば、2019年の台風15号は、9月9日午前5時前に千葉市付近に上陸。最大風速35.9メートル、最大瞬間風速57.5メートルを観測するなど、多くの地点で観測史上1位の風速を更新する記録的な暴風となりました。

 その被害について、同白書にはこう記されていました。

千葉県では、暴風により、多数の住宅において屋根瓦の飛散などの被害が発生し、被災地域ではブルーシート等による応急措置に追われた。

このほか、送電線の鉄塔や電柱の倒壊、倒木や飛散物による配電設備の故障等により、千葉県を中心に、最大約93万4,900戸の大規模停電となった。

この長期間にわたる停電の影響により、携帯電話網や市町村防災行政無線等が使用できず、住民への情報伝達が困難となる通信障害が発生したほか、多くの市町村で断水等ライフラインへの被害や鉄道の運休等の交通障害が発生するなど、住民生活に大きな支障が生じた。

千葉県内ではいたるところで電柱が折れ、道をふさいでいた(筆者撮影)
千葉県内ではいたるところで電柱が折れ、道をふさいでいた(筆者撮影)

■長期間の大規模停電、熱中症による死者も…

 ちなみに、私の自宅の停電は50時間続きましたが、すぐ近所では20日間、つまり480時間もの間、停電していたエリアもありました。その厳しい現実を目の当たりにしたとき、「50時間くらい大したことはなかったんだ」と、後で思い知りましたが、それでも、35度を超える猛暑の中、クーラーが使えないというのは本当に苦しく、オーバーと言われるかもしれませんが。命の危険すら感じるほどでした。

 実際に千葉県ではこの台風による災害関連死のうち、8名が熱中症だったそうです。

 消防庁は台風が上陸した当日の9月9日付で「大規模停電下における熱中症の予防対策について」という通達を発出し、住民への広報等について積極的な対応に努めるよう求めたそうです。

 しかし、実際に停電に見舞われていた被災地の市民には、そうした広報は届いていませんでした。

 そもそも、「大規模停電下における熱中症の予防対策」とはどんなものなのでしょう? 具体的に聞いてみたいところです。

2019年台風15号、千葉県内の停電状況を報じる千葉テレビの画面(筆者撮影)
2019年台風15号、千葉県内の停電状況を報じる千葉テレビの画面(筆者撮影)

■停電のないエリアに車で避難

 私は停電が発生した9日の日中、同居している私の母(当時84)と室内犬のミニチュアダックス2匹と共に、とりあえず暑さから逃れるため、マイカーの中に「避難」しました。

 そして、クーラーを効かせて近場を走ったり、日の当たらない駐車場にエンジンをかけたまま車を停めて休憩したりするなど、夫が夜に帰宅するまでずっと車中で過ごしました。

 それでも愛犬たちは、舌を出しながらハアハアと荒い息。停電が解消する気配は一向にありません。

 そこで、『このままでは本当に熱中症になってしまうかもしれない』という危険を感じ、停電エリアからの脱出を決意しました。

 当時、同じ千葉県でも停電のエリアに入っていない場所があることがわかったからです。

 台風直撃の翌朝には、幸い上りの高速道路の通行止めが解除されたため、私は約50キロ離れた浦安市内の娘の家へ避難することを決めました。

 そのときの体験は以下の記事に記しました。携帯の充電や車に積んでおく飲食物、ガソリンの備蓄、信号が切れた道路の走り方などについても触れていますので、ぜひご覧ください。

<筆者の自宅も50時間停電「マイカー避難」で感じた4つの重要ポイント(2019/9/13)>

台風で飛ばされた屋根が近所の電線に引っかかっていた(筆者撮影)
台風で飛ばされた屋根が近所の電線に引っかかっていた(筆者撮影)

■停電・猛暑におけるマイカーはもっとも優れた「避難場所」だった

 さて、4年前、高齢者とペットを抱える我が家にとって、猛暑の停電時に何が一番役に立ったか? それをひとつ上げろと言われたら、私は間違いなく「マイカー」と答えるでしょう。

 マイカーはあの過酷な状況の中、もっとも身近で、優れた「避難場所」兼「移動手段」となりました。

 また、電気自動車の場合は車そのものが発電機の役割をしますので、家電製品を稼働することも可能です(我が家の車はガソリン車ですが)。

 それだけに、マイカーを所有されていない世帯の方々のことがとても心配になりました。

 特に、高齢者の中には免許を返納し、車を手放された方もおられるでしょう。そうした方々が猛暑の中、長時間の停電に見舞われた場合、あの厳しい時間をどのようにしのげばよいのか。また、年々暑さが厳しくなっています。炎天下、足元の悪い中、距離の離れた避難所までどうやって移動すればよいのでしょう。

 4年前に書いた記事でも指摘しましたが、行政の方には有事の際、『マイカーを所有しているか否か?』という情報をいち早くキャッチし、マイカーを所有していない世帯の方々には優先的に救済の手を差し伸べるといった具体的な対策が必要だと感じました。

水害が予想されるときは車を高い場所へ避難させることも大切
水害が予想されるときは車を高い場所へ避難させることも大切提供:イメージマート

■災害から「マイカー」を守り抜くことの大切さ

 とはいえ、マイカーを所有しているからと言って、安心してはいられません。

 実際に、台風による大雨で車が冠水したり、強風で吹き飛ばされたり、といった被害も全国各地で頻発しています。

 車を失ってしまうと、経済的な損失だけでなく、大変な不便を強いられ、復興への大きな足かせになります。とにかく、万一大規模災害にみまわれたとき、「エアコンの効く最も近い避難所」を失いたくはありませんよね。

 今年も次々と発生する台風。そして今、刻々と近づいている台風7号。接近まであまり時間がありません。しかし、地震と違って、台風の場合は到達時刻や風速が予測できます。

 マイカーを所有している人は、とにかく「クルマを守る」という意志を持ち、常に「想定外」を予想して事前に守り抜く方策を考えてください。

ノンフィクション作家・ジャーナリスト

交通事故、冤罪、死因究明制度等をテーマに執筆。著書に「真冬の虹 コロナ禍の交通事故被害者たち」「開成をつくった男、佐野鼎」「コレラを防いだ男 関寛斉」「私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群」「コレラを防いだ男 関寛斎」「自動車保険の落とし穴」「柴犬マイちゃんへの手紙」「泥だらけのカルテ」「焼かれる前に語れ」「家族のもとへ、あなたを帰す」「交通事故被害者は二度泣かされる」「遺品 あなたを失った代わりに」「死因究明」「裁判官を信じるな」など多数。「巻子の言霊~愛と命を紡いだある夫婦の物語」はNHKで、「示談交渉人裏ファイル」はTBSでドラマ化。書道師範。趣味が高じて自宅に古民家を移築。

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