【京都市右京区】藤原公任の和歌「滝の音は…」の舞台 大覚寺 11/15から紅葉ライトアップ
京都市ではもうすぐ、紅葉の見頃の時期となります。
「おすすめの紅葉スポットは?」と聞かれて、筆者がよく名前をあげるのが、今回ご紹介する大覚寺です。
大覚寺は、百人一首で有名な「滝の音は…」の和歌が詠まれた舞台でもあります。和歌を詠んだのは、平安時代中期の一流の文化人藤原公任(ふじわらのきんとう)です。
滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ
(藤原公任)
大覚寺にあった滝の流れる水音は、聞こえなくなってずいぶん長い年月経つけれども、その名声だけは流れ伝わって、今でも人々に聞こえ知られていることだよ、と。
この和歌を詠んだ藤原公任について、また詠まれた背景について、詳しく解説していきます。
藤原公任とは
藤原公任(ふじわらのきんとう)は、平安時代中期の公卿。
関白太政大臣頼忠の子供で、四条大納言と呼ばれました。非常に博学多才であったエピソードが『大鏡』に残っています。それが「三舟の才」です。
三舟の才
ある年に、藤原道長が大堰川(桂川)で舟遊びをしていました。
漢詩の舟、管絃の舟、和歌の舟を出し、それぞれの分野の名人を乗せていました。
藤原道長は、「藤原公任はどの舟に乗るのだろうか」と言ったので、
公任は「和歌の舟に乗りましょう」と言い、和歌を詠みました。
小倉山 嵐の風の 寒ければ
もみぢの錦 きぬ人ぞなき
(小倉山や嵐山から吹いてくる風が寒いので、みなが紅葉の錦を着ているようだなあ)
素晴らしい和歌だと賞賛されました。
ところが公任は、「漢詩の舟を選んでおけば、もっと名声が上がったはずだ」と悔やみました。
つまり、漢詩・管弦・和歌すべてにおいて優れていた、というエピソードです。
『大鏡』には、「一つの事に優れることでさえまれであるのに、このようにいずれの分野でも優れていらっしゃったとかいうことは、遠い昔の例にもないことでございます」と締め括られています。
大覚寺で「滝の音は…」の和歌が詠まれた背景
長保元年(999)9月、藤原道長に伴い、京都・嵯峨にある大覚寺の滝殿を訪れました。同行した藤原行成の日記『権記』にも記されています。
大覚寺は平安時代初期には嵯峨天皇の離宮で、広大な庭園の一画に滝がありました。それから200年近い時が過ぎ、公任の見た滝はすでに枯れています。
その滝の跡を見て詠んだのが、「滝の音は…」の和歌だったのでした。
滝の音は 絶えて久しく なりぬれど
名こそ流れて なほ聞こえけれ
この歌が有名になったことでこの枯れ滝は「名古曽(なこそ)の滝」と呼ばれるようになりました。
いろいろなものが変わりゆくけれども、名前はちゃんと残っている。
一千年の時が経っても、藤原公任の名前は聞こえている。
まさに、名こそ流れてなほ聞こえけれであるなあ、と思わずにはいられません。
11/15(金)から紅葉ライトアップ
大覚寺では、11/15(金)から紅葉のライトアップが行われます。
幻想的な雰囲気で、思わず息をのんでしまう美しさです。
この秋、ぜひ大覚寺に訪れてみてはいかがでしょうか。
※紅葉ライトアップ時間は、「名古曽(なこそ)の滝」エリアには入れないのでご注意ください。
「名古曽(なこそ)の滝」エリアへのご参拝の方は、9:00〜17:00(受付16:30まで)にお越しください。
▼大覚寺紅葉ライトアップ基本情報
期間:
2024年11月15日(金)~12月1日(日)
時間:
17:30~20:30(20:00受付終了)
料金:
大人900円・小中高生500円
場所:
大覚寺
京都府京都市右京区嵯峨大沢町4
市バス・京都バス「大覚寺」下車、徒歩すぐ