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なぜキム・ヨナはドーピング裁定を批判したのか。背景にソチ五輪金のソトニコワの禁止薬物使用疑惑?

金明昱スポーツライター
北京五輪のドーピング裁定についてインスタグラムで言及したキム・ヨナ(写真:Splash/アフロ)

 バンクーバー五輪金メダリストのキム・ヨナが14日、自身のインスタグラムを更新し、真っ黒な画像とともに英文でこう投稿した。

「ドーピングに違反したアスリートは、試合に出場できません。この原則は例外なく順守されなければなりません。すべての選手の努力と夢は平等に尊いのです」

 誰に向けての発言なのかは明確にしていないが、このタイミングで想いを吐露したのは、渦中のカミラ・ワリエワに向けての発言だと誰もが思うに違いない。

 北京五輪のフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(ロシアオリンピック委員会=ROC)が、昨年12月のドーピング違反が判明したが、国際スポーツ仲裁裁判所(CAS)がショートプログラムの出場を認めた。

 キム・ヨナはこれを批判したものとみられるが、彼女にはドーピングに対して強い拒否反応があるのも事実。というのも、過去にロシア選手のドーピング疑惑と関連した“騒動”に巻き込まれているからだ。

会見場を抜け出したソトニコワに苦笑いのキム・ヨナ

 その相手は、ソチ五輪金メダリストのアデリナ・ソトニコワだ。2人には深い因縁がある。

 2010年バンクーバー五輪で金メダルを獲得したキム・ヨナは、14年ソチ五輪で2連覇を狙っていた。見事な演技を披露したが、結果は219.11点で2位。フリースケーティング(FS)で1回のジャンプミスをしながらも、開催国ロシアのソトニコワが224.59点で金メダルを手に入れた。

 当時、韓国内だけではなく、世界各地ではホームに有利な採点があったと疑問の声が報道されていたが、さらにソトニコワのある行動で批判が殺到する。

 ソチ五輪メダリストの公式記者会見で、ソトニコワはキム・ヨナが話している途中に突然会場を抜け出したのだ。

 当時の映像を今でもよく記憶しているが、キム・ヨナの戸惑った表情が忘れられない。苦笑いで会見を続けていたが、“非マナー”に対する怒りを抑えていたに違いない。

6年前のロシアの組織的ドーピング問題

 さらにソチ五輪から2年後の2016年12月、ソトニコワにドーピング疑惑が浮上した。

 世界ドーピング防止機構(WADA)がロシアの組織的なドーピング問題を指摘した最終報告書の中に、尿サンプルが改竄されている可能性が高いロシアのアスリート28人のうちの1人にソトニコワが含まれていることが判明した。

 当時は韓国内で「ソトニコワの金メダルはく奪で、ソチ五輪銀メダルのキム・ヨナが繰り上げで金メダルを獲得する」と報じられたりもした。最終的に繰り上がりの金メダルはなかったが、この件に関しては今も韓国国民にしこりを残している。

 ソチ五輪での判定に加え、禁止薬物の使用疑惑まで浮上したのだから、キム・ヨナも意識せざるを得ない部分があった。

 今回のインスタグラムのドーピング裁定批判の投稿は、キム・ヨナの過去にそうした背景があったからなのかもしれない。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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