2030年に地球が限界?弥生時代から続いてきた私たち現代人が意識すべきこと
地球環境に負荷をかけ続けている現状のまま2030年を迎えてしまうと、さまざまな社会問題が発生するとして世界中が警鐘を鳴らしていることはご存知でしょうか。
これは「気候変動」、「大気汚染」、「水質汚濁」、「海洋汚染」などの地球環境問題に加えて、国際紛争の影響による差別や貧困などが要因だとされています。
上記のような問題を解決すべく、2015年に国連サミットで採択されたのが持続可能な開発目標こと通称「SDGs」です。
□SDGsについて
SDGsとは、経済・社会・環境の3分野に分けて問題視されている対象について、国際間で協力して解決しようというもの。リサイクルやリユースといった形で、すでに私たちの生活に溶け込んでいるものもあります。
日本で初めてそういった概念の存在が確認されたのは、驚くべきことに約2000年前の弥生時代のことでした。
当時の日本は稲作などの食糧生産が始まったばかりでしたが、弥生時代を生きる人々はさまざまなものを利用・再利用して日々の暮らしを豊かにしていたのです。
例えば、弥生時代で食料の保存や調理に利用された「弥生土器」にも、SDGsの要素が取り込まれていました。それは、食べたあとの貝殻や余ったロープを使用して施された幾何学的な文様です。
このほかにも、食器として貝殻や石を活用したり、食料であったアワビから真珠を取り出してネックレスとして利用したりしはじめたのもこの頃だといわれています。
□中世以降に芽生えたリサイクルの精神
SDGsの一環でもある「リサイクル」の精神が人々のあいだで芽生えたのは、奈良時代〜平安時代のことです。
この頃には再生紙(古紙)が利用されはじめ、江戸時代にもなると古着や古布が利用されるようになります。
また、明治時代にはリサイクルが産業として発展し、昭和・平成には空缶や空ビン、アルミや紙など様々なものが再利用されるようになりました。
さらに近年では、年間523万トン(※)も排出されるフードロスの問題が指摘されていますが、廃棄食料を活用する様々な取り組みやビジネスも拡がってきており、それらの取り組みに注目が集まっています。
※農林水産省及び環境省「令和3年度推計」
今回は、このようなフードロス問題にファッション業界からアプローチする「豊島株式会社」に取材を敢行。さらにフードロス問題以外にも、様々な切り口でSDGsへの取り組みを実施しているとのことで話を聞きました。
□豊島株式会社とは
天保12(1841)年に創業した豊島株式会社(以下、豊島)は、初代・豊島半七が綿の仲介人として商いを発足させてから183年間続いている老舗企業です。
現在では綿花の売買をおこなうほか、生地や糸の開発・売買、アパレルブランドの OEM(製造のみの委託)からODM(開発、設計、製造までの委託)といった事業にまで幅広く携わっています。
そんなファッション業界の全ての工程に携わってきた豊島は、洋服製作が様々な面で環境に負荷をかけてしまうことにいち早く着目。ファッション業界に携わる企業の責任として、30年前から木材由来のサスティナブルな素材を扱ったり、19年前からはオーガニックコットンの普及を進めるプロジェクト「ORGABITS(オーガビッツ)」をスタートするなど、サステナブルファッションの推進に注力しています。
□オーガビッツ
「ORGABITS(オーガビッツ)」とは、オーガニックコットンを通して、みんなで“ちょっと(bits)”ずつ地球環境と社会に貢献しようという想いから2005年に始まったプロジェクトです。
コットンの原料である綿花は、効率よく栽培するために大量の除草剤や殺虫剤、化学肥料が使われており、このような栽培方法は土壌汚染や農場周辺の健康被害として深刻な問題を引き起こすこともありました。
一方のオーガニックコットンは、時間や金銭が嵩むといった問題はあるものの、手作業での除草や害虫駆除を行うことで、地球環境や生産者に負荷をかけない、自然循環に沿った栽培が可能となっています。
ただ、こういった手間がかかる分、オーガニックコットンを使用した洋服の価格が高くなってしまう中、オーガニックコットンの使用量100%にこだわるのではなく、オーガニックコットンを10%以上使用して作られた商品を100倍の人に届ける、という逆転の発想のもとでORGABITSを発足。さらに、ORGABITSを導入したアイテムの価格にはオーガニックコットン農家やNPO法人を支援するための寄付金が含まれているなど、一枚の服を通して日常的に参加できる社会貢献活動としても輪を広げています。
□フードテキスタイル
豊島では「ORGABITS」のほか、繊維素材が地球環境に与える影響に配慮した持続可能な素材開発に努めています。
その一環として、色や形が悪いために廃棄されてしまう野菜や果物を洋服の染料として生まれ変わらせるサステナブルなプロジェクト「FOOD TEXTILE(フードテキスタイル)」を立ち上げました。
□現代人が意識すべき課題
今回紹介したプロジェクトのほかにも、豊島株式会社はビーチクリーンアップ活動で回収した漂着ペットボトルを繊維に生まれ変わらせる「UpDRIFT(アップドリフト)」というプロジェクトにも取り組んでいます。このプロジェクトの下、環境問題について考える・取り組むきっかけを提供することを目的とし、2022年11月に「大阪の修学旅行生達との石垣島でのビーチクリーン活動」を実施。本活動の記録として、材料の一部にUpDRIFTの糸が使用された、学生たちがオリジナルでデザインしたアパレルやグッズを作成しました。
こういったイベントは、これからの地球を背負うことになる学生たちにとって、様々な環境問題を学ぶことができるすばらしい機会になるでしょう。
また学生たちだけでなく、地球の環境問題を考えることは現代を生きる私たちの使命ともいえます。かつての先代たちが積み重ねてきたSDGsの精神について、今一度考えてみるのもいいかもしれません。