連休中の話題作・京都アニメーション最新作「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」は初見でも大丈夫?
先週末、京都アニメーションの最新作「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン」がついに公開され、昨日までの連休中も、心待ちにしていた人々から多くの反響があり、早くも話題となっています。
これまで数々の人気作を生み出してきた京都アニメーション。しかしその名前や評判は耳にするものの、中にはまだ作品をみたことが無く、今なら映画館で鑑賞できるというこの最新作が気になっているという人も少なくないと思います。
ところが本作は、2018年のテレビシリーズとエクストラエピソード、2019年に劇場公開された外伝に続く、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズの“最終章”。そう聞くと、これまでのシリーズをチェックしていない人は、鑑賞してもよいものか迷ってしまうかもしれません。
しかし結論から言ってしまうと、本作は初見であってもしっかりと物語を味わうことができるようになっています。それどころか、今躊躇して劇場の大きなスクリーンでの鑑賞機会を逃してしまうにはあまりにももったいない作品でもあるのです。
※以下、物語の核心に触れるネタバレはありませんが映画の内容に触れています。気になる方はご注意ください。
■「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」とは
タイトルの”ヴァイオレット・エヴァーガーデン”は、本作の主人公である少女の名前です。
舞台となるのは19世紀のヨーロッパを連想させる、とある時代のとある国。
シリーズでは、大きな戦争の終結後、ガス灯が電気灯に、電流が電波に変わりゆく時代を背景に、戦争の面影を残しながらも訪れた平穏の中で生きていく人々と主人公の姿を描いた群像劇が描かれてきました。
そんな物語の最終章となる本作では、主人公・ヴァイオレットがシリーズを通して”追い求めていたもの”への結末までが語られます。
■初めて物語に触れる観客と同じ新たな視点の存在
シリーズで描かれてきたことの結末。それなら尚更、これまでにテレビシリーズ等で描かれてきた経緯を知っていることが大前提のようにも思えてしまいます。
しかし本作には、それらを知らない人が、いちから一緒に、この物語を辿っていける“新しい視点”が存在しているのです。
主人公・ヴァイオレットが生きた時代の少し先の未来を生きる少女・デイジーは、かつて祖母と曾祖母と縁のあったヴァイオレットのことを知りたいと、本作を通して彼女の功績を辿る旅をします。
本作では、このデイジーが生きる未来と、ヴァイオレットの生きる過去とが交互に描かれることで、デイジーが彼女のことを知るたびに、みている側も、ヴァイオレットが生きた時代や彼女の生い立ち、経験や想いの手がかりを少しずつ手に入れ、物語の終わりにたどり着くころには、しっかりそこに至るまでのピースを揃えたうえで、一緒に結末を迎えられるようになっているのです。
それでも確かに、本作を鑑賞するうえで、これまでのシリーズをみていたからこそ気づけること、より深く感動できることがあるのは間違いありません。
しかし本作では、初めてシリーズに触れる人でも、こうしてデイジーと同じ出発地点から、ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンという一人の女性が歩んできた軌跡を辿って、約2時間半の物語の全体を堪能することができるようにもなっているのです。
初見の方は、劇場版は劇場版として楽しんだうえで、後から改めてテレビシリーズ、エクストラエピソード、外伝を視聴してみても、シリーズを知った上での鑑賞とはまた違った道順ではありますが、作品全体を通した気づきがちゃんと得られると思います。
今回2度の延期を経て公開に至ったまでの経緯を鑑みると、”最新作公開”という一文にも、様々な意味が付与されて見えてしまうこともあるかもしれません。
しかし、そうした先入観は一旦外した上で、純粋に、京都アニメーションという制作会社が、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を作ってきた座組が、一体どんな作品をつくる方々なのかを初めて体験するのに、本作はうってつけだと思います。
新型コロナウィルスの感染対策を十分にしたうえで、気になるかたはぜひ、劇場に足を運んでみてください。