就活相談27・就活セミナーでよく出るメラビアンの法則って何?
質問:就職セミナーなどでときどき、メラビアンの法則が出てきます。あれって、どこまで信用できるものでしょうか?
メラビアンの法則は疑似科学です。
それをマナー講師や就活コンサルタントなども大真面目に取り上げていること自体にまず驚きですね。
メラビアンの法則とは、心理学者のメラビアン博士が発見した法則です。
メラビアン博士が話し手と聞き手のコミュニケーションにおいて実験したところ、「目から判断される要因(見た目・身だしなみ・しぐさ・表情)などが55%」「耳から判断される要因(声の質・大きさ・テンポ)などが38%」「口から判断される要因(話す言葉の内容が7%)」であることが判明しました。
つまり、コミュニケーションにおいては、話の内容は7%しか伝わっていないから、見た目・第一印象が大事、とする学説です。
これを聞いた学生は「なるほど、確かに」と頷いて、講師が話すマナーだか、スーツの着こなし方だかを一生懸命、メモします。
いやいやいや、なるほど、じゃなくて。
この項の冒頭でもご紹介した通り、メラビアンの法則は疑似科学です。
疑似科学はニセ科学とも言って、一見すると科学的なのですが、実はトンデモ理論というもの。
『反社会学講座』(ちくま文庫)を書いたコラムニスト、パオロ・マッツァリーノは同書の中で、メラビアンの法則について取り上げ、次のように書いています。
そこで、誰にでもできる簡単な実験をしてみましょう。
「今度の日曜日、朝8時半にJR東京駅八重洲南口に集合。」
これを初対面の外国人に伝えてみましょう。
なお、この外国人は昨日アフリカから来日したばかりで、スワヒリ語しか話せませんし、あなたは日本語しか話せないものとします。
メラビアンの法則に従えば、言葉が通じなくても、しぐさ・表情・声質・身だしなみで伝えたいことの93%を印象づけることができるはずです。
次に、伝えたい内容をスワヒリ語に翻訳したものを身振り手振りなし、無表情のまま読み上げてみましょう。
メラビアンの法則に従えば、この方法だと話の内容は7%しか相手の印象に残らないはずです。
さて、来週の日曜日に東京駅に来てもらえそうなのは、どちらの方法でしょう。
言うまでもなく、相手に伝わるのは、後者。となると「7%」って話はどこに?
メラビアンの法則を信じる人が「同じ言語であることが前提」とか、わめきだす前に種明かし。
実は、メラビアンの法則、メラビアン博士自体が否定しています。
メラビアン博士が実施した実験は、話し手の言葉の内容と表情・声質が矛盾している場合、聞き手は言葉と表情のどちらに重きを置くだろうかを検証するものでした。
このことは博士の著書『非言語コミュニケーション』(邦訳あり)にもちゃんと書かれています。
それを、日本ではいつからか、日常においても就活や商談などでも通用する、だから見た目が大事、という話にすり替わっていきました。
メラビアン博士はインタビューや自身のサイトでも、日常的なコミュニケーションでは通用しない、と明言しています。
第一印象やマナーが大事であることは私もその通りと思います。
ただし、実験をした本人が否定しているにもかかわらず、その法則が日常にも当てはまる、と言い張るのはかなり無理がありますね。
※『300円就活 面接編』(角川書店・オリジナル電子書籍)より引用