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女子大生40人に鬼畜行為…北朝鮮「音楽教育」の黒い罠

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
中国の北朝鮮レストラン(デイリーNK)

「教育は無償」を掲げる北朝鮮だが、現実はそれに程遠い。初中等教育では教科書、制服などありとあらゆるものが有料で、学生に対しては学校や教師からの金品の要求が絶えない。高等教育も、入試の過程から黒いカネが飛び交い、試験や論文審査などあらゆるプロセスでワイロが求められる。

 今年に入ってからも、北朝鮮音楽教育の頂点、金元均(キム・ウォンギュン)名称音楽舞踊総合大学(以下、平壌音大)で「ドル入り花束」が問題になった。

 平壌のデイリーNK内部情報筋によると、新年を迎え平壌音大の学生は、教授のもとを訪ね、花束をプレゼントして新年の挨拶をした。この大学では花束にドル札入り封筒を隠して渡すのが慣習となってきたようだが、ある教授が大学の朝鮮労働党委員会に告白して表面化したという。

 しかしハッキリ言って、この程度ならかわいい話だ。

 昨年4月には、黄海北道(ファンヘブクト)にある沙里院(サリウォン)の大学で、党書記の地位にあった50代の男性が、40人もの女子学生に権力型性犯罪を働いていたことが暴露された。

 また前年には、首都・平壌の総合レジャー施設で、女子大生に組織的な売春を行わせて搾取していたグループが摘発された。このときもやはり、音楽や演劇系の名門大学の教授らが加担していたことがわかった。事件に巻き込まれた学生は数十人とも200人とも言われる。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

 この事件では、金正恩総書記の直接の命令により、首謀者たちが公開処刑されている。

 もしかしたら、平壌音大の教授が党委員会にドル入り花束の件を党委員会に告白したのは、この事件の結末が効いたのかもしれない。

 党委員会は1月16日、当該の学部の教授、学生全員を集めて思想闘争会議を開催した。間違いを犯した者に自己批判をさせ、他の人に代わる代わる批判させる「吊し上げ」だ。

 その場では、学生から受け取った現金を正直に党委員会に差し出した教授は「良心のある教授」として称賛された。しかし、受け取って何も言わなかった教授は「良心のない教授」と厳しく批判され、顔を上げて歩けないほどの辱めを受けたとのことだ。

 だが、ほとぼりが冷めれば何事もなかったかのように、ワイロのやり取りは復活するだろう。

 教授といえども受け取る月給は雀の涙で、学生からのワイロがなければ生活が成り立たないからだ。教育現場に限らず、国全体に同じような慣習が定着しており、根絶は困難だろう。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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