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5日に日本の長期金利が0.750%に低下したのは何故か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:イメージマート)

 5日と6日の東京市場は過去に例のないような大荒れの展開となった。5日に日経平均が過去最大の下げ幅となったが、翌6日には今度は過去最大の上げ幅を記録した。ドル円は5日に141円台まで急低下(円高ドル安)となった。

 この大きな変動は日本の債券市場にも及んだ。今回の動きの主役は、いわゆる円キャリートレードを長きに渡り、しかもかなりの量のポジションを組んでいたヘッジファンドなどのポジション解消によるものと指摘されている。

 5日にポジション解消が行われたとすれば、そのポジションは日本株は買い(米株も買いか)、外為市場ではドル売り円買い、そして円債は売り(米債も売り?)といったポジションであったとみられる。

 7月31日の日銀による利上げがひとつのきっかけとなった可能性はある。ただし、利上げによる日本経済への影響とかが危惧されてではない。

 円キャリートレードを長きに渡り、ポジションを構築していたファンドにとって、日銀は動けないというのが前提にあったと考えられる。

 しかしそうであるならどうして円債はショートしていたのか。こちらは日銀の正常化による日本の長期金利の上昇にベットしていたと見られるためである。

 そもそも円売りと円債売りに矛盾が生じるはずである。むろんすべてのファンドが同じポジションを組んでいたわけではないであろうが。

 とにかくもヘッジファンドは円債のショートを大きく組んでいた。しかし、日銀の利上げとともに今後の追加利上げも意識されて、ゼロに近い金利での円資金の調達が難しくなった。そこに米国市場の動きから株やドル円でのロスカットが迫られていたとも考えられる。

 このため、これらのポジションを解消した結果、10年債利回りは1%割れどころか0.750%に低下したのである。

 これはさすがに行き過ぎである。とはいえ、日銀の利上げと国債買入減額計画発表後に長期金利が低下したことで、過度な長期金利の上昇への懸念も後退したかのような動きともなった。

 これはあくまで一時的なポジション調整に巻き込まれたためではあろうが、一度低下してしまうと元に戻るにも時間が掛かることもたしかである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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