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FRB議長はテーパリングは示唆せず

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 FRBは27、28日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の据え置きと債券購入プログラムの月額購入額の維持を全員一致で決定した。これは予想通り。問題はテーパリングの示唆があるかどうかであった。

 これについてパウエル議長は、物価目標であるPCEデフレーターの上昇率は短期的に前年比で2%を超える見通しを示したが、これは一時的であり、利上げの基準には満たないとした。そして、緩和の段階的縮小の議論開始は時期尚早とコメントした。つまりテーパリングの議論開始はまだ考えていないと指摘していた。

 また議長は、市場の一部は「ややフロシー(泡立っている状態)だ。そして、それは事実だとも語った。つまりバブルに近い状況となっていることを認めた格好に。

 資産価格について、米金融当局が金融の安定性を評価するのに当たって1つの要素だとしつつも、唯一のものではないと指摘。「それが金融政策に関係ないとは言わないが、ワクチン接種や経済活動の再開とも大いに関連している。相場をこの数か月動かしてきたのはそうしたものだ」と説明した(29日付ブルームバーグ)。

 金融政策と財政政策がおおいに関係していることは確かだと思うが、ワクチン接種や経済活動の再開を強調し、これはつまり金融政策の変更そのものが早急に必要ではないと示唆したような格好となった。

 表面上はこのように政策変更については示唆は与えなかったが、当然ながらテーパリングの時期を模索していることは確かであろう。しかし、それを示唆したことで株式市場などが過剰反応するのも避けたいところなのかもしれない。

 2013年5月に当時のバーナンキFRB議長が、国債など資産買い入れを縮小すること(テーパリング)について初めて言及し、これを受けて起きた市場の混乱をバーナンキ・ショックとも呼ばれた。この再現は避けたいとの意向なのかもしれない。

 混乱をさせずにテーパリングは可能なのか。バーナンキ・ショックはテーパリングの時期を先送りさせた格好とはなったが、これによって市場はテーパリングの備えができた格好ともなり、2014年の1月にテーパリングを開始し、同年10月に終了させたが、これによって市場に動揺を与えるようなことはなく、その後の利上げもスムーズに実行していた。

 いずれFRBはテーパリングは行うであろうことも確かであり、その議論をスタートさせることを示唆するのはそれほど先ではないと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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