4マス全体への業種別広告費の10年間の変化をさぐる(2021年公開版)
電通は2021年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2020年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に広告を出稿した業種の4マス(4大従来型メディア。テレビメディア、ラジオ、新聞、雑誌)全体における広告費の10年間での変化を確認する。
直近となる2020年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取り扱う4媒体ではすべてマイナス。
今報告書にはテレビメディア・雑誌・新聞・ラジオに対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2020年と2010年における対象メディアすべての値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。ただしテレビメディアでは衛星メディア関連は除かれている。
グラフでは除いているが、単純な総額(4マス限定)では2010年が2兆7749億円、2020年が2兆1363億円と2割強の減少。業種別で増加したのはエネルギー・素材・機械、情報・通信、官公庁・団体の計3業種で、あとはすべて減少。東日本大震災、相次ぐ政変、高齢化の進行(特に団塊世代の高齢化突入)に伴う社会構造の変化、インターネットやスマートフォンの普及によるメディアシフトの流れ、そして新型コロナウイルス流行など、劇的な動きが生じたとはいえ、金額面における変容ぶりが改めて認識できる結果ではある。またこの時代の流れでどこまで(4マスへの)広告投資のウェイトが変わったのか、業種別の動向を推し量れる値となっている。
割合でもっとも増加した情報・通信(プラス14.2%)は2209.1億円から2523.4億円へと314.3億円の増加。具体的には「コンピュータ・関連品、コンピュータソフト、携帯電話機、携帯情報端末、電話サービス、通信サービス・インターネット、 ウェブコンテンツ、モバイルコンテンツ、放送など」が該当し、インターネット、スマートフォンの浸透普及においてもっとも恩恵を受けそうな、そして競争が激しい業種である。それゆえに市場規模の大きさに加え、成長性も高いことから、4マスにおいてもその恩恵を受けた形となった。
10年間で半分以上に額を減らしているのは精密機器・事務用品、趣味・スポーツ用品、案内・その他の3業種。精密機器・事務用品は具体的には「時計、カメラ・デジタルカメラなど光学機器、事務用品、文房具など」を指す。勢いのある業種とは言い難いが、ここまで減少するのは不思議な感もある。この業種の広告費そのものが減ったのではなく、インターネット通販への誘導で直接購入に結び付きやすいインターネット広告にシフトする形で4マスへの出稿が減ったと考えれば道理は通る。
案内・その他は「案内広告(新聞、雑誌)、臨時もの、連合広告、企業グループなど」が該当する。単純にメディア力、公知力の(相対的)減退を受け、リソース配分の変化が生じたものと考えれば納得はできる次第ではある。
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