【京都市西京区】モミジ回廊続く幽玄の世界の中から浮かび上がる仏像 洛西の隠れ寺が初の夜間ライトアップ
閑静な住宅街の中にひっそりと佇む古刹の山門をひとたび入ると、本堂へと続くいくつもの階段を覆う約150メートルにわたるモミジの回廊が幽玄の光に包まれ、正面奥から釈迦牟尼仏座像の姿がぼっと浮かび上がります。あまりの尊さに立ち止まり思わず手を合わせて祈りをささげていました。
京都市と丹波地方を結ぶ主要幹線道路の国道9号線から嵯峨嵐山へ向かう途中にある山田口の交差点を西に入ると山田岐れを経て、本能寺の変の際に明智光秀軍が行軍したとされる唐櫃越(からとごえ)へと続きます。唐櫃越の入口の手前の交差点を下がったところにある「葉室山 浄住寺」で2023年11月18日(土)から12月3日(日)まで、秋の特別拝観が始まります。
11月17日に関係者と町内会向けの内覧会が行われました。同寺の藤岡芝山住職によると「通常の秋の特別拝観に加えて夜間のライトアップは今年が初めて」なのだそうです。2023年は、JR東海の「そうだ京都、行こう。」の秋の特別拝観8箇寺の一つとして多くの人出が予想されます。
浄住寺は、西暦810年に嵯峨天皇の勅願寺として第3世天台座主・慈覚大師円仁によって開創されました。1261年に律宗寺院として中興された後、南北朝時代からの度重なる兵火により荒廃しましたが、元禄2年 (1689) に黄檗宗の僧である鉄牛禅師を中興開山として再興され、現在は、黄檗宗(禅宗)として活動をされています。
今回の特別公開では、重要文化財級の史料である豊臣秀吉の安堵状(あんどじょう)や通常非公開の本堂や方丈、狩野永岳筆の衝立「雲龍図」などの寺宝が拝観できます。史上初公開となります。
藤岡住職は、「今年は色づきが遅れていますが、11月下旬頃から見事な朱色の回廊が見られます。しかし、有形文化財でもある堂宇他は老朽化もすすみ、毎年、部分修復を余儀なくされています。今後、この文化的価値をたくさんの方に知っていただき、保護、修復の機運を高め、継承していくことが私の役目」と話します。
これまで隠れ寺として最後の穴場とも言える同寺ですが脚光をあびることになりそうです。まだ青々としたモミジだったこの日でさえ、圧巻のこの情景が朱に色づいた時どんなことになるのかと筆者も必ずもう1度訪れたいと思います。周辺は住宅街ですので、静かに参拝をお願いしますね!
また、浄住寺では、特別公開の期間中、呈茶を通じた文化財保護・修繕活動を、創業1803年の京菓子「鶴屋吉信」が支援するということで、禅宗文化をテーマとしたティーペアリング茶房が今秋限定オープンしています。
「葉室山 浄住寺」(外部リンク)京都市西京区山田開キ町9 075-381-6029 阪急上桂駅から西へまっすぐ徒歩10分