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コロナに感染するのとワクチンを打つのとでは、どちらがより強い免疫が得られるのか?

忽那賢志感染症専門医
英国免疫学会、UK-CIC資料より(引用元は記事末尾に記載)

日本国内で新型コロナウイルス感染症に感染した人は100万人を超えました。

過去に新型コロナに感染した人はワクチン接種を受けるべきなのでしょうか?

一般的に、ワクチン接種によって得られる免疫は、自然に感染することで得られる免疫よりも弱いと言われていますが、新型コロナではどうなのでしょうか?

一般的にワクチン接種よりも感染症に罹る方が免疫ができる

写真:アフロ

感染症に感染すると免疫ができます。

例えば、麻しん(はしか)や風しん、水痘(水ぼうそう)などに感染すると、多くの人では生涯これらの感染症に罹らなくなります。

これは、感染によって作られた免疫が長期間持続するためです。

一方、ワクチン接種によって得られる免疫は、自然感染と比べると弱く、感染を防ぐためには2回もしくはそれ以上の回数のワクチン接種が必要となります。

だからと言って、麻しんや水痘に敢えて感染して免疫をつけることは推奨されません。なぜなら、麻しんや水痘の免疫はワクチンによって安全に得ることができる一方で、感染した場合は重症化することがあり安全とは言えないからです。

新型コロナに感染したことがあっても再感染することがある

第5波以降、著名人の方の再感染事例が報道されています。

新型コロナに一度感染したことがある人も、再び感染することがあります。

もちろん感染したことによって免疫ができますので、すぐに再感染することはありませんが、回復してから時間が経てば経つほど再感染のリスクは高くなります。

これまでの再感染の報告からは、最初の感染から少なくとも90日くらいは再感染が起こりにくいことが分かっています。

また、一度新型コロナに感染した人は免疫ができるため2回目の感染では1回目の感染よりも軽症になると考えられています。

しかし、少なくとも免疫が弱っている人では2回目の方が重症化することがあるようです。

では、1回目の感染によってどれくらいの期間、免疫が保護的に働くのでしょうか?

デンマークから、第1波(2020年6月以前)でPCR検査をして陽性だった人、陰性だった人を追跡調査し、第2波(2020年9月から12月)のPCR検査で陽性だった人、陰性だった人を解析することで初回の感染が再感染を防ぐ効果を検証した研究が報告されています。

この研究では、過去の感染による保護効果は80.5%であり、感染したことがない人よりも感染するリスクが5分の1になる程度とのことです。

また65歳以上の高齢者では、この保護効果が47.1%にまで落ちるとのことです。

また、デルタ株などの変異ウイルスでは、過去に新型コロナに感染した人の免疫からも逃れて感染することが知られています。

自然感染とワクチン接種、得られる免疫はどちらが強い?

自然感染とワクチン接種による免疫の違い(英国免疫学会、UK-CIC資料より 引用元URLは記事末尾に記載)
自然感染とワクチン接種による免疫の違い(英国免疫学会、UK-CIC資料より 引用元URLは記事末尾に記載)

対象の集団、評価している期間、評価方法が異なるため単純な比較はできませんが、新型コロナワクチンの一つであるファイザー社のmRNAワクチンの発症予防効果は90%以上とされており、特に高齢者においてはワクチンの方がより強く免疫を賦活できると考えられています。

感染したことがない人とある人のmRNAワクチン1回接種後の抗体価の推移(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)
感染したことがない人とある人のmRNAワクチン1回接種後の抗体価の推移(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)

フランスで行われた、過去に新型コロナの既往のある人とない人それぞれに、mRNAワクチンを接種し、抗体価の推移をみた研究が報告されています。

過去に新型コロナの既往がある人は、初回の接種前から抗体価が高いのですが、初回の接種によってさらに抗体価が上昇し、過去に感染したことがない人よりも10〜45倍の抗体価を示しています(ピンクで囲った部分)。

しかし、過去に感染したことがない人も2回接種を完了した後には、「感染したことがあり、ワクチン接種をしていない人」よりも高い抗体価が得られています(青で囲った部分)。

新型コロナの免疫は抗体価だけでは評価できませんが、少なくとも中和抗体価とブレイクスルー感染のリスクは相関すると考えられているため、指標の一つであることは間違いないでしょう。

これらのことから、現在得られている知見からは、

感染で得られる免疫 < ワクチン接種で得られる免疫

とされ、これまでに新型コロナに感染したことがある人もワクチン接種が推奨され、接種によってより強い免疫が得られると考えられています。

「免疫をつけるためにわざと新型コロナに感染する」目的で開催されるコロナパーティーというものがあるそうですが、新型コロナに感染することで、

・若くて基礎疾患のない人でも重症化することがある

・回復後も後遺症に悩まされることがある

・再感染することがある

などの懸念があるため全く推奨されず、感染するよりもワクチン接種の方が安全に免疫をつけることができます。

ただし、新型コロナワクチンで得られる免疫の持続性については、自然感染よりは長いと考えられているものの、追加接種の必要性については現在も検討が行われているところです。

感染したことのない人とある人との副反応の頻度の違い(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)
感染したことのない人とある人との副反応の頻度の違い(DOI: 10.1056/NEJMc2101667)

一方で、副反応については、過去に感染したことがない人よりも局所の疼痛や倦怠感、発熱などの頻度が高かったようです。

新型コロナワクチンでは、1回目よりも2回目の接種の方が副反応が多いことが知られていますが、過去に感染したことがある人では、感染が初回接種と同じような免疫賦与の機会となり1回目の接種が非感染者にとっての2回目の反応と同様のことが起こるのだと考えると理解しやすいでしょう。

しかし、だからといって現時点では「過去に感染した人は1回の接種で十分である」というコンセンサスはなく、過去の既往に関係なく2回の接種が推奨されています。

新型コロナに感染した人は、いつワクチンを接種すべきか?

新型コロナワクチンは、2回目の接種をして14日間が経過すると十分な効果が得られます。

1回しか接種していない時点で感染してしまった人も、回復後に2回目の接種が推奨されます。

接種すべき時期については、定まった見解はありません。

前述の通り、感染してから数カ月間は再感染するリスクは低いため、体調が整うまで待つことも選択肢ですが、退院した後や自宅療養が終わった後にはいつでも接種が可能です。

新型コロナの後遺症に悩まれている方も、ワクチン接種によって後遺症の症状が増悪することはなく、むしろ改善することが示唆されています。

過去に新型コロナに感染した方もワクチン接種をご検討ください

以上のことから、過去に新型コロナに感染したことがある方も再感染のリスクがあり、ワクチン接種によってより強固な免疫を得ることができます。

ぜひ積極的にワクチン接種をご検討ください。

参考:COVID-19 immunity: Natural infection compared to vaccination

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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