多数の国では若年層の方が「多くの人が自身の生活水準を向上させる機会を持つ」と考えている
民主主義国家では経済上の自由や機会において、ある程度の平等が認められており、スタートの時点では不利なポジションにあっても、本人の選択や能力、努力により、相応の生活水準を得ることができるようになっている。その実情を、それぞれの国の国民はどれほどまでに実感しているのか。アメリカ合衆国の民間調査会社Pew Research Centerが2019年4月に発表した、民主主義諸国における民主主義の浸透度合い、国民の認識に関する調査結果「Many Across the Globe Are Dissatisfied With How Democracy Is Working」(※)から確認する。
自国における実情として、多くの人が自身の生活水準を向上させる機会を持つと考えている人は、調査対象国全体の中央値としては57%に留まっている。あくまでも回答者自身の認識だが、国ごとの実情、特に経済の安定度と比べ見ると、納得がいく回答値を示している。
生活水準に関しては年齢階層別の格差がよく取り沙汰される。高齢化に伴い社会の仕組みが人口構成比率上の観点で高齢者に寄り添うようになり、経年による蓄財の効果も大きくなることから、若年層がこれまで以上に割りを食う形になっているのでは、というものだ。次に示すのは「多くの人が自身の生活水準を向上させる機会を持つ」の設問について、年齢階層別に回答値を区分した際に、有意な差異が出た国を抽出したもの。例えば日本の姿が確認できないのは、年齢階層別で有意な差が生じていないことを意味する。
多くの国では若年層(18~29歳)ほど高い値を示している。つまり若年層ほど「頑張れば今の生活水準を向上させることができる可能性が高い」と考えている。蓄財の機会もまだ少ない若年層でも、今後に向けてよりよい生活を営めるかもしれないとの希望を多くの人が抱いているのは、経済の躍進や国の活力の観点では欠かせない考えに違いない。
他方、アメリカ合衆国と韓国、チュニジアの3か国では逆に、おおよそ年が上になるに連れて回答率が上がっている。つまり若年層では自国では努力や選択による生活向上を期待することは難しい、機会平等は無いと考えている人が多いことになる。それでもまだアメリカ合衆国は若年層でも69%が回答しているが、韓国では33%に留まっている(中年層(30~49歳)でも32%)。同国の経済の実情だけでなく、将来に向けた考え方の実情が透けて見えてくるような結果ではある。
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※Many Across the Globe Are Dissatisfied With How Democracy Is Working
おおよその国では2018年3月から5月にかけてRDD方式で選出された18歳以上の1000人前後の人に対し、電話経由によるインタビュー形式で行われたもので、それぞれの国の国勢調査の結果に基づき男女別、年齢、教育、地域などの属性によるウェイトバックが実施されている。一部の国では対面方式による調査方法が用いられている。
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