誘惑だらけ!日本滞在→京都の味を探して辿り着いた終着点
オランダ在住のひかさん夫妻。久しぶりの日本一時帰国で京都観光。普段、オランダ生活において「日本食」に飢えている二人は、京都らしい「和食」を求めていました。
旅の醍醐味といえば、観光地を巡りながらその土地ならではの食文化を楽しむこと。二人が京都旅行で最も楽しみにしていた場所の一つが、稲荷大社でした。朱色の鳥居が連なる幻想的な風景を歩きながら、神秘的な雰囲気を味わうのはもちろん、ランチには京都らしい「お豆腐料理」を楽しむと心に決めていました。
出発前、読者の皆さんから「ここは絶対おすすめ!」と教えていただいた豆腐料理店の情報をチェックし、期待感を膨らませていました。お豆腐を使った湯葉や田楽、白和えなど、想像するだけで心が躍ります。普段の食卓ではなかなか味わえない日本の伝統的な一皿を、京都という特別な場所で堪能する。そんな計画を胸に、稲荷大社の参道を歩き始めました。
ところが、ここで予想外の誘惑が待ち受けていたのです。
参道に並ぶ屋台から漂ってくる香り。焦がしたソースの香ばしい匂い、甘辛いたれが炭火で焼ける音、ジュージューと油が弾ける音…。普段オランダで日本食に飢えている私たちには、その香りが一層魅惑的に感じられました。そう、ここに来るまで日本の「屋台飯」がこんなに恋しいものだとは気づいていなかったのです。
誘惑を断ち切ろうと、お豆腐料理への想いを何度も胸に言い聞かせ、屋台の間を抜けていきます。けれども、ついに耐えきれず…気づけば手には焼きそばとたこ焼きが。
「ちょっとだけ…」と言い訳しながら食べた焼きそばは、これまでのどんなパスタや炒め物にも勝るおいしさ。たこ焼きは、中のとろとろ具合が絶妙で、あまりのおいしさに思わず涙が出そうになりました。「日本に来た!」と心から実感した瞬間でした。
けれど、食後の満足感と共にじわじわと広がる後悔。「せっかく京都に来たのに、楽しみにしていたお豆腐料理が食べられなかった…!」と悔やみながら稲荷大社を後にしました。帰国後、日本の豆腐料理への想いはさらに募り、今でもあの時の選択を振り返るたびに複雑な気持ちになるのです。
それでもひとつ、忘れられない救いがあります。稲荷大社の近くで購入した稲荷寿司です。たまたま目にした小さなお店の前には行列ができており、「これは美味しいに違いない!」と直感で購入しました。一口食べた瞬間、その予感は見事に的中。お揚げの甘辛い味付けがご飯に絶妙に染み込み、一度口に入れると手が止まりませんでした。豆腐料理が食べられなかった悔しさも忘れさせてくれる、素晴らしい出会いでした。
京都らしい豆腐料理を楽しむという目標は果たせなかったけれど、焼きそばとたこ焼きの香り、そして忘れられない稲荷寿司の味が、私たちの旅に特別な思い出を加えてくれました。次回こそは、豆腐料理を心ゆくまで堪能したい。そう心に誓いつつも、また屋台の誘惑に負けてしまう気がしてなりません。