国連UNRWAへの資金援助停止でガザでの飢饉は「不可避」と国連食料への権利特別報告者が警鐘
国連の調査では2月までにガザでの人道支援の状況が改善しないと人口の9割が深刻な飢餓に陥るとされる。
国連食料への権利特別報告者のマイケル・ファクリ(オレゴン大学教授)は、「イスラエルがガザでジェノサイド(大量虐殺)を犯していると国際司法裁判所(ICJ)が結論づけた翌日、一部の国家は、少数の職員が行ったとされる行為を理由に、国連パレスチナ難民救済事業機関(以下、UNRWA)への資金拠出を停止することを決定した。これは、220万人のガザの人びとを苦しめることになる。飢饉は差し迫っていたが今や避けられない状況にある」と警鐘を鳴らしている。
英・ガーディアン紙(※)によると、メディアで大きな話題となっている国連のUNRWAのハマスへの協力という疑惑はイスラエル側からの告発によるものということだ。同紙によるとイスラエルはUNRWA職員に対する疑惑の詳細を公にはしていないということで、また今回の告発は『アクシオス』のウェブサイトによれば、イスラエル国防軍(IDF)と内部保安機関シン・ベトから提供されたものだという。その情報は、「UNRWA職員が積極的に参加し、UNRWAの車両や施設を使用していた」と報じているが、留意すべきは侵略する側の主張と情報だということだ。それなのに日本のメディアでは、情報を鵜呑みにし日本政府が資金停止することを肯定するのみならず、SNSを中心に国連をバッシングする意見すら出ている。私はこの記事を読んだ後に日本の反応を見て暗澹たる気持ちになった。同様の事態が他国や日本にも波及する未来が訪れるかもしれないと感じたからだ。
ガーディアン紙によると、国連総長はドナーに対し、UNRWAへの資金拠出撤回を再考するよう要請しているというが、そもそもガザ地域のUNRWA職員によると、ガザの職員リストは国連のブラックリストと照合され、イスラエルと共有されており、イスラエル当局がこれまで大きな異議を唱えたことはないという。
同紙によるとガザの人口の約半数は、戦争前からすでにUNRWAの援助に大きく依存しており、一部の地域では、ハマスによって十分に運営されていない国家サービスに取って代わるほど、必要不可欠な援助を提供しているとされる。実際、UNRWAは、学校教育、医療、地元のパン屋に小麦粉を提供し、パレスチナ人がきれいな水を得られるように海水淡水化プラントを運営している。 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、援助物資の配給の中心的な役割を担っており閉鎖されれば状況がさらに悪化するとされる。
○国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、難民を直接救済する目的で1949年に国連総会で設立され、活動は1950年5月に始まった。パレスチナ難民問題の合意による解決が未だに見られないことから、その活動期限は定期的に更新されている。UNRWAは、中東に住む500万人を超える登録パレスチナ難民に必要不可欠のサービスを提供している。その中には、ヨルダン、レバノン、シリアの58の難民キャンプやガザ地区と東エルサレムを含む西岸に住むおよそ150万人以上の難民も含まれる。また、UNRWAのサービスには教育、保健、救済や社会福祉、キャンプのインフラ整備と改善、小規模金融、武力紛争時も含め、緊急援助などが含まれる。UNRWAは、2000年以来、進行中の危機がガザや西岸に住むもっとも脆弱な難民に与える影響を軽減するために、緊急人道援助を行っている。また、2006年以来レバノンで紛争の影響を受けた難民の緊急のニーズにも対応している。シリア情勢については、シリア国内の難民やレバノンやヨルダンに避難した難民に緊急援助や正規のサービスを提供している。
(※)”Famine in Gaza is being made ‘inevitable’, says UN rapporteur”Bethan McKernan in Jerusalem, and Ruth Michaelson
Sun 28 Jan 2024 16.59 GMT