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3年で中卒者は5割強、高卒者は4割近くが離職の現実…学歴別・就職後の離職状況(2024年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
せっかく就職できてもほどなく離職してしまう人も少なくない(写真:イメージマート)

「定年まで一つの会社に継続勤務」「年功序列制」が日本の雇用体系の常でなくなってから久しいが、現時点でも「正社員」ならばその多くは通用しうる。だが一方で無事に就職を果たせても、短期間で離職してしまう人も少なからずいる。

↑ 卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない若年就業者割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)(厚生労働省・平成30年若年者雇用実態調査結果の概況から筆者作成)
↑ 卒業後に初めて就職した会社に現在は勤務していない若年就業者割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)(厚生労働省・平成30年若年者雇用実態調査結果の概況から筆者作成)

そこで厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」を基に、各年3月時点における離職率に関して最新値を反映させた上で、中学校卒・高等学校卒・大学卒における「3年以内の離職率動向」を示したのが次のグラフ。縦軸(離職率)はあえて全学歴で縦軸の区切りを揃え、学歴による差異をつかみやすくしている。

↑ 在職期間別離職率(中学校卒業者)
↑ 在職期間別離職率(中学校卒業者)

↑ 在職期間別離職率(高等学校卒業者)
↑ 在職期間別離職率(高等学校卒業者)

↑ 在職期間別離職率(大学卒業者)
↑ 在職期間別離職率(大学卒業者)

現時点では2023年分は1年目、2022年分は1・2年分までしかデータが無い。そのため右端部分がやや変則的な形となっている。大まかな全容としては

・離職率は 中学校卒>高等学校卒>大学卒 で、中学校卒の離職率が一番高い。

・大学卒は1年目、2年目、3年目における離職率にさほど差異は無いものの、中学校卒や高等学校卒は1年目における離職率が高い。

・中学校卒は1年目で4割台が辞めてしまう傾向。ここ数年は3割台に減少している。

・今世紀に入ってからの離職率は漸減傾向にあったが、2010年以降は高等学校卒で増加が確認できた。ただし2013年でピークとなり、それ以降はおおよそ漸減に転じている。大学卒も同様の動きを見せたが、2011年で早くも天井感。それ以降はほぼ横ばい。

・2011年は中学校卒で有意に上昇している。震災起因の離職が主に中学校卒業者で生じた可能性の示唆。ただし中学校卒業者は対象数が少ない(4けた台。他の学歴は6けた台)ことから、統計上のぶれの可能性がある。

などとまとめられる。おおよそ学歴が低いほど失業率は高く、そして就職できても正社員としての雇用率は低い傾向にある(厚生労働省・国民生活基礎調査の概況にて確認。グラフ化は略)。さらに離職率も高い今調査の結果を見る限り、学歴による就職回りのハードルの差異は非常に大きなものと考えてよい。

↑ 若年就業者における就業形態別割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)(厚生労働省・平成30年若年者雇用実態調査結果の概況から筆者作成)
↑ 若年就業者における就業形態別割合(調査時点で在学していない人限定、属性別)(2018年)(厚生労働省・平成30年若年者雇用実態調査結果の概況から筆者作成)

中学校卒、そして高等学校卒における1年目の離職率が高いのも、雇用する会社側から見て解雇しやすい非正規社員だからと考えれば、道理が通る。「労働流動性の高さを反映したもの」と表現すれば聞こえはよいが、(無論自主的離職も少なくないものの)解雇される立場からすれば気分のよいものではない。

企業そのものの存続が前提になるが、中学校卒の3年定着率が5割近く、高等学校卒でも6割強、大学卒ですら7割足らずとの実態は、覚えておく価値のある値ではある。ただしこれは単純な離職率からの逆算であり、会社側からの解雇だけでなく、就業者側の事情(心身の不具合や家庭の事情、よりよい就業先への転職など)による離職も含まれていることに注意が必要。例えば「中学校卒は入社してから3年間で約5割が会社によって解雇させられる」を意味しない。

参考として3年目までの離職者を総計した値に限り、すべての学校種類をまとめたグラフを作成しておく。

↑ 在職期間別離職率(中学校・高等学校・大学の卒業者、3年目までの総計、2022年は1年目と2年目、2023年は1年目のみ)
↑ 在職期間別離職率(中学校・高等学校・大学の卒業者、3年目までの総計、2022年は1年目と2年目、2023年は1年目のみ)

離職率は景気と反比例する傾向を見せている。特に直近の金融危機ぼっ発以降の動きが顕著である。これは「不景気≒再就職困難≒離職を断念する(離職検討理由を我慢する)」との流れによるもの。見方を変えれば「好景気≒再就職容易≒離職決意のハードルが下がる」と考えることができる。

ただし労働市場面での景気の悪化度合いが一定程度を超えると、本人は望んでいなくとも(実質的)会社都合による解雇・離職の事例が増えるため、離職率は上昇してしまう。2010年から2011年にかけて値が有意に上昇しているが、これはリーマンショック、過度の円高、そして震災と、畳み掛けるような企業経営に対するマイナス要因が生じた結果の動きと見られよう。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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