解説・令和のコメ騒動 #専門家のまとめ
コメの品薄や価格高騰が続いています。一部で新米の販売も始まっていますが、最近は国の備蓄米を放出について議論が起こっています。岸田首相も8月下旬の会合でコメの流通不足の懸念に対処し円滑な流通に取り組むよう農水省に指示を出しました。しかし問題は、今年のようにコメが全国で品薄になった際でも対応できる制度がないことと言えます。その背景にあるコメを巡る課題について紹介します。
ココがポイント
▼備蓄米を放出するとコメ価格が下がる可能性があり、農水省は放出の予定はないとしています。毎年コメの消費量が減少していることも背景の課題としてあります。
▼コメの在庫がある店とない店では、コメの年間契約か都度契約かで異なります。しかし民間在庫自体が減少し始めているためなんらかの措置が必要な状況です。
▼農水省は、円滑な流通の要請を卸売業者に通知しましたが、流通現場では混乱が収まっておらずコメの品薄が続いています。
エキスパートの補足・見解
大きな問題は、コメが品薄となりコメ流通が混乱した際の政策がないことだ。その背景にはコメ流通を市場任せにしてきたため、需要量が増えると供給量がすぐに不足するという構造的な問題もある。
いまだ国内の約4割の水田が転作されている中で起こっている令和のコメ騒動。食料安全保障が政策として機能していないのは明らかだ。今年の新米の買取価格はすでに全国で数割程度上昇しているため、コメ価格が高止まりするという指摘もある。
一方で農家は、近年のコメ価格の低迷やコスト上昇の中で苦しんできた。必要なのは、コメ農家の所得安定化とコメの円滑な流通確保への対策と言えるだろう。