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【6人死亡の奈良バイク事故】若者に見られる「リスクテイキング行動」とは

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
画像出典:Webikeニュース

先月末に起きた奈良のバイク事故。ご存じの方も多いと思うが、同時に6名が若い命を落とし2名が怪我を負うという悲惨極まりない大事故になってしまった。

中には中学生の女子も含まれていたという。何も希望がなく辛さしかない。自分としても触れたくない話題だが、少しでも前に進むために取り上げたいと思う。

報道が伝える事故の概要としては以下のとおり。

バイク3台に8名乗車

8月31日午前2時20分頃、奈良市八条5の国道24号の高架橋で、バイク1台と原付2台が転倒しているのを、トラックで通りかかった男性が見つけ通報。3台に分乗していたとみられる男女計8人が付近に倒れており、同市内の17~18歳の男性4人と、身元不明の男女2人の計6人が死亡。他に17歳と14歳の2人も重軽傷を負った。

その後の調べで、死亡した6人のうち4人が男子高校生だったと判明。6人の死因は胸や頭を強く打つなどしたことによる失血死や肺挫傷など。

捜査関係者によると、ミニバイク2台の後を1000ccの大型バイクが走行していたらしく、大型バイクの免許は8人全員が持っていなかった。

県警は道路交通法違反(無免許運転)と自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いで捜査しているという。

相当な速度で3人乗り、しかもノーヘル

国道24号は日中には混雑する幹線道路で事故現場はJR奈良駅近くの高架橋上。片側2車線の見通しのよい直線道路で、事故は上り坂が終わり、下り坂にさしかかる部分で起きたとみられている。

事故現場の周囲にはバイクの破片に加え、サンダルやイヤホンなどが広範囲にわたって散乱し、車体が真っ二つにちぎれた大型バイクや原型をとどめないほどに壊れたスクーターなどの状況からも、相当な速度が出ていたと推測される。また、現場にはヘルメットが2個しか残されておらず、数人は着用していなかった可能性が高い。

深夜にバイクに3人乗りして暴走。しかもノーヘルで無免許に信号無視。ネット上の書き込みにも「自業自得」や「死んで当然」のような痛烈な批判も多い。

事故の日に一体何があったのか……。原因などの詳細は未発表のままだが、そこを推論しても意味はないだろう。無謀な行いの果てに、彼らは帰らぬ人となってしまったのだ。

普段は高校や中学に通う若者たちで家族や友人もいたはずだ。夏休みの終わりに起きた取り返しのつかない悲劇。その代償はあまりに大きい。

若者は自ら危険を好む傾向がある

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かつてカリスマ的な人気を誇ったシンガーソングライターの尾崎豊が「盗んだバイクで走り出す 行先も解らぬまま暗い夜の帳の中へ……」と歌ったように、若者は無軌道なものとして描かれることが多い。たしかに思春期の若者は精神的にも不安定で、情動的な行動に走ることが多い。

放送大学の教材にもなっている「交通心理学」(蓮花一己/向井希宏 著)の中で、蓮花先生は若者の運転行動について以下の特徴を記している。

初心運転者は運転が未熟で危険に対応できないだけでなく、自ら「リスクテイキング行動」を行うことで危険を招き寄せてしまうという。

リスクテイキングとは自ら好んで危険なことを行うことで、特に若者はその傾向が強いとされる。運転の「未熟」さの中には、知識や技能だけではなく、衝動や感情のコントロールがうまくできないという意味も含まれているのだ。

また、若者の特性として、リスクテイキング傾向の他にも「高すぎる自己評価」や「危険を低く見積もる」傾向があるという。

つまり、危険への判断が甘く、自分を過信するということだ。

再発防止のために何をすべきか

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夜中にバイクで走り出すということは、少なくともバイクを好きだったのでは。報道によれば8人中4名は原付免許を持っていたようだ。それを欲求不満のはけ口として暴走した末の最期であるとすれば、あまりに悲しいことだ。

自分は心理学の専門家ではないが、思春期の子供の心について周囲の大人たちももっと関心を持ち、理解することが求められているのではないか。バイクは危ないからと抑圧するのも、逆に無関心になってもいけないと思う。

ネット上には「バイクは社会悪、世の中になくても困らないもの」等の過激な書き込みも見受けられ、大多数の善良なライダーの心も傷付けられる。このような事故がまた起これば、2輪の規制緩和など論外という風潮にもなりかねない。

死人に鞭打つようなことはしてほしくないし、ましてや亡くなったのは未だ14歳から18歳の子供たちだ。自業自得と吐き捨てるのは簡単だ。でもそれでは何も残らない。

バイクで若者が暴走して事故死というパターンは何十年も昔から繰り返されているし、それをどうしたら防げるかはとても難しい問題と思う。

再発防止に向けて何ができるのか、我々ライダーとしても考えていく必要があるだろう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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