日銀は3月の決定会合でマイナス金利解除を決定か、8日の日銀の内田副総裁による講演にも要注目
31日に公表された1月22日、23日に開催された日銀の金融政策決定会合における主な意見では、マイナス金利政策の解除を含めた正常化に向けての積極的な発言が目立った。正常化に向けて慎重な意見もあったが少数派であり、反対する意見はなかった。
昨年12月18、19日に開催された日銀の金融政策決定会合の議事要旨でも下記のような意見が出ていた。
「このうちの一人の委員は、物価安定の目標の持続的・安定的な実現の確度は更に高まってきており、金融正常化のタイミングは近づいていると指摘したうえで、慎重に確認を重ねた結果、物価高が消費の基調を壊し、目標の実現を損なうリスクを避けるためにも、タイミングを逃さず政策の修正を図るべきであると述べた。」
もしかすると12月の決定会合で政策修正を示唆しようとした可能性もあったのではなかろうか。しかし、そこに何らかのブレーキが掛かったこともありうる。
12月6日の氷見野副総裁の講演でも、出口を意識した発言となっていた。この出口とは金融政策の正常化を意味する。さらに翌7日に植田総裁は参院財政金融委員会で、年末から来年にかけて「一段とチャレンジングになる」と述べていた。この発言のあと、植田総裁は岸田首相と官邸で会談していた。実はこの会談もひとつのキーとなっていた可能性がある。
1月の金融政策決定会合の内容からも、日銀はマイナス金利政策の解除に前向きとなっていたことが窺える。これについて官邸からはブレーキを掛けるようなことはなかったとみられる。これは円安の進行などもあって、むしろ正常化を促す立場となっていたのではなかろうか。しかし、いわゆるアベノミクスの推進派は、政策修正など許さじとの意見を持つ人も多かったとみられる。そこからのプレッシャーがあった可能性がある。
1月の決定会合の主な意見に次のようなものがあった。
「海外の金融政策転換で政策の自由度が低下することもあり得る。現在は千載一遇の状況にあり、現行の政策を継続した場合、海外を中心とする次の回復局面まで副作用が継続する点も考慮に入れた政策判断が必要である。」
これは欧米の中央銀行が利下げに転じてからでは、むしろ日銀は正常化に動きづらくなる懸念を示したものであろう。しかし、現在は千載一遇のチャンスというのは、政局も意識したものとの見方もできなくはない。
いずれにしても、日銀は3月18日、19日に開催される決定会合で、マイナス金利政策の解除を決定する可能性が強まってきた。ただし、その実施時期は4月からとするなどタイムラグを置くことも予想される。
同時にフォワードガイダンスの修正を行うことが予想される。しかし、イールドカーブコントロールについては、形式的に残す懸念はある。できれば完全撤廃とし、長期金利は市場で決定されるという本来のスタンスに戻ってほしいところではある。
ちなみに毎年2月上旬に日銀の副総裁による「金融経済懇談会」での講演が実施されている。昨年は2月2日に若田部副総裁が静岡県での金融経済懇談会で講演を行い、一昨年も2月2日にやはり若田部副総裁が和歌山県での金融経済懇談会で講演を行っていた。
今年も副総裁が同様の講演を行うことが予想されるが、いまのところ日銀のサイトにある「公表予定」にはその記載がない。これまでも「公表予定」で記載が無かった講演で何かしらの示唆があったことがあり、気になるところ。どうやら8日にキーマンともいえる内田副総裁の講演が予定されているようだ。