女性単身世帯の分譲マンション率から見る、一人暮らしの女性の決心
単身世帯では住宅は自分の城のようなプライベート空間で、とても大切な場所。総務省統計局の住宅に関わる定点調査「住宅・土地統計調査」(※)の公開値を元に、その実情を単身世帯における住宅スタイルの実情(持家か借家か、一戸建てか共同住宅かの違い)から見極める。さらに分譲マンションの居住比率に男女間で大きな差異がある事実を確認し、その理由を考えてみる。
「住宅・土地統計調査」の公開値を元に再計算を行い、単身世帯における居住スタイルに関して、年齢階層別に共同住宅か一戸建てかの細分化をした結果が次のグラフ。持家は一戸建てが、借家は共同住宅がメインであることが分かる。前者は個別の建売一戸建て住宅、後者はマンションやアパートをイメージすれば容易に理解できよう。
「持家・共同住宅(分譲マンションなど)」「借家一戸建て」も単身世帯の居住スタイルとしている人の存在は確認はできるが、あくまでも少数派。また、「持家・共同住宅(分譲マンションなど)」が40歳代でややふくらんでいるのも見て取れる。
そこでこの40歳代のふくらみの部分について、性別に精査をしたのが次のグラフ。まずは男女別に仕切り分けした上でグラフを再構築する。
グラフの大まかな形状は男女であまり違いは無いが、あきらかに「持家・共同住宅」の値が女性では中堅年齢層で大きく伸びているのが分かる。そこで「持家・共同住宅」の値のみを抽出して男女の違いが分かりやすいように生成したのが次のグラフ。
男女で明らかな差異が確認できる。30歳後半から男女で差が大きくなり、40歳代ではほぼ倍もの違いを示す。60歳代以降では男女の差は縮まっていくが、女性の方が比率が高いことに違いはない。
単身世帯の女性が居住スタイルとして「持家・共同住宅」が多い理由はいくつか考えられる。男性よりも女性の方が一般的には長生きするため、夫と死別し、一人妻が自宅に残されるケース。女性の働き盛りの独身率が上昇しており、これに伴い「自分の城」として分譲マンションを買う事例が増えている結果。これを「おひとりさま」と称することもあるそうだが、新築・中古を問わず30~40歳代で半ば結婚をあきらめ、生涯の根城として家・マンションを買う事例が増えているとの話もある。さらに防犯上の都合から、女性が一人で住む場所として一戸建ては不安が大きく、消去法として共同住宅を選択せざるを得ないとの理由もある。
実際、収入は男性の方が多いものの、貯蓄は40代以外は女性の方が大きい場合が多々見られる。
一人暮らしで生涯の根城を手に入れる想いは男女とも変わらないはずであるが、女性の方がその傾向が強いのは、お金を貯めることに長けているのも一因としてあるのだろう。
今後はこの「分譲マンションに根城を構えた、おひとりさまな女性」に向けた、あるいはそれに憧れる女性へのビジネス的アプローチも本格的なものとなるかもしれない。
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※住宅・土地統計調査
今調査は5年毎に行われているもので、直近発表分は2013年10月1日時点のデータを計測したもの。約21万単位区・計約350万住宅・世帯を対象に、対象世帯に調査員が調査票を配布・後日回収する方式で行われている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。