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Facebookのブロードバンド試験衛星、9月打ち上げへ

秋山文野サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)
VEGAロケットから複数の衛星を軌道投入する。Credit: AVIO

米Facebookが子会社を通じて準備中の低軌道ブロードバンド試験衛星が、2019年9月に打ち上げられる。仏ロケット運用企業アリアンスペースが中型ロケットVEGA(ヴェガ)に41機の人工衛星を搭載し打ち上げる内の1機となる。

3月に打ち上げられたVEGAロケット14回目のミッション。Credit: Arianespace
3月に打ち上げられたVEGAロケット14回目のミッション。Credit: Arianespace

2018年5月、アメリカ電気電子工学会の会誌オンライン版「IEEEスペクトラム」は、米カリフォルニア州の企業PointViewTech(ポイントビューテック)がFacebook子会社であり、小型衛星Athena(アテナ)による衛星通信の試験を行う計画だと報じた。FCC(米連邦通信委員会)に提出された申請書によれば、SSL(スペースシステムズロラール)が製造する衛星は150キログラム以下で、高度500~550キロメートルに投入される。

ライドシェア型の打ち上げによる複数の衛星の搭載パターン。Credit: ESA - D. Ducros
ライドシェア型の打ち上げによる複数の衛星の搭載パターン。Credit: ESA - D. Ducros

その後、Facebookはポイントビューテックが子会社であることを認めたと米Wiredが報じた。FCC申請書には「衛星通信は世界で接続手段がない、または不十分な地域にブロードバンドサービスを届ける有効な手段である」としている。今年から打ち上げが始まったOneWeb通信網、スペースXのスターリンク衛星網、Amazonが計画中のプロジェクト・カイパーと同様に世界規模の低軌道(NGSO)衛星通信網を構築する試験的なプロジェクトと考えられる。

アテナ衛星の特徴は、「E帯(Eバンド)」と呼ばれるミリ波の周波数帯を使用することにある。大気を通過中に雨などによる減衰が激しく、衛星通信ではほとんど使われていない周波数帯だ。とはいえ、十分な出力や受信感度があれば技術的には通信が可能ともいわれ、実現すれば高速通信に利用できるだけでなく、米欧での許認可も得やすいという。

アテナ衛星の通信実験は、ロサンゼルス市郊外のノースリッジとウィルソン山に設置された固定の地球局と、移動地球局の3か所で実施される。これまでにない高周波数帯だけに速度や通信品質などの成果が期待される。

アテナ衛星を搭載するヴェガロケットは、「SSMS(小型宇宙機ミッションサービス)」と呼ばれるロケットに複数の衛星を搭載し、軌道に投入する“ライドシェア”型の打ち上げミッションを欧州で初めて実施する。AIS(船舶自動識別装置)の衛星基地局を展開するSpireやカナダのexactEarthなどの衛星も搭載される予定だ。打ち上げは9月2日とみられており、欧州宇宙機関が運用する仏領ギアナのギアナ宇宙センターから実施される。

サイエンスライター/翻訳者(宇宙開発)

1990年代からパソコン雑誌の編集・ライターを経てサイエンスライターへ。ロケット/人工衛星プロジェクトから宇宙探査、宇宙政策、宇宙ビジネス、NewSpace事情、宇宙開発史まで。著書に電子書籍『「はやぶさ」7年60億kmのミッション完全解説』、訳書に『ロケットガールの誕生 コンピューターになった女性たち』ほか。2023年4月より文部科学省 宇宙開発利用部会臨時委員。

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