Yahoo!ニュース

4マスそれぞれの業種別広告費前年比から広告主の姿勢をさぐる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ ラジオの広告費は前年比でプラス。どの業種の広告費が増えたのか。(写真:アフロ)

・2017年の新聞や雑誌への広告費は前年比でほぼすべての業種が減少している。

・ラジオは情報・通信が4割近い増加、その他も多数の業種が大きく増加している。

・テレビは案内・その他が15.3%の増加、不動産・住宅設備が14.8%の増加。官公庁・団体は26.1%の減少。

電通は2018年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2017年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に4大従来型メディア(テレビ、雑誌、新聞、ラジオ。4マス)へ広告を出稿した業種別企業の広告費の前年比を確認する。各業種がそれぞれの媒体に与えている・認識している影響力、ウェイトの変化などが把握できよう。

直近となる2017年における媒体別広告費前年比は次の通り。インターネット広告が堅調、4大従来型メディアはラジオがプラス、紙媒体とテレビメディアは不調、プロモーションメディア広告は大よそ軟調との結果が出ている。

↑ 2017年媒体別広告費前年比
↑ 2017年媒体別広告費前年比

今調査報告書では広告出稿企業(クライアント)を21業種に区分し、4大従来型メディア(「テレビメディア」においては衛星メディア関連は除く)それぞれに対する出稿広告費、各メディアが受領している出稿額全体に対する構成比、そして前年比の一覧が掲載されている。まずは新聞についてその動きに関するグラフを生成し、状況を確認する。なお次以降4媒体のグラフは、すべて縦軸の仕切りを同じものとし、状況の比較がし易いようにしている。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(2017年、前年比)(新聞)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(2017年、前年比)(新聞)

紙媒体として軟調さが際立つ新聞だが、その内情としてほとんどの業種でマイナスを示しているのが要因。最大のマイナス幅を示したのは「家電・AV機器」で1/4を超えている。他にも「精密機器・事務用品」「自動車・関連品」「金融・保険」「外食・各種サービス」が1割超えの下げ幅。情報の速報性へのウェイトが高い業種が多々見受けられる。「エネルギー・素材・機械」「薬品・嗜好品」「官公庁・各種団体」はプラスだが、その上げ幅は限定的。

続いて雑誌。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(2017年、前年比)(雑誌)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(2017年、前年比)(雑誌)

全体の下げ幅が新聞よりも大きいだけに、項目別でも一層の状況の悪さが印象的。最大の下げ幅こそ「エネルギー・素材・機械」のマイナス17.1%で済んでいるが、多数の業種が1割を超えた下げ幅を計上している。プラスは「官公庁・団体」の1業種だけ。

紙媒体との観点では親和性が高いはずの「出版」(新聞、雑誌、書籍、語学教材、他の刊行物)ですらマイナス9.3%と大きく下げているのは、何とも皮肉な結果ではある。無論一部は同一コンテンツを用いたインターネット媒体上に流れているのだろうが、それでも紙媒体としての雑誌上の広告が減ったことに違いは無い。

次はラジオ。4大従来型メディアの中では2017年において唯一前年比でプラスを計上している。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(2017年、前年比)(ラジオ)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(2017年、前年比)(ラジオ)

中には「ファッション・アクセサリー」のように1/4超えの下げ幅を示している業種もあるが、マイナス幅の業種は限定的。プラスを計上した業種の多さが目立つ。しかも1割超えの上げ幅を示したのは5業種に及ぶ。「情報・通信」の突出した上昇は報告書でも言及されているが、ラジコの利用者増加やスマートスピーカーとの連動性により、業種との連動性の高さに着目されるようになったのが要因と考えられる。

最後はテレビ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(2017年、前年比)(テレビ)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(2017年、前年比)(テレビ)

最大の下げ幅を示したのは「官公庁・団体」のマイナス26.1%。最大の上げ幅は「案内・その他」のプラス15.3%。下げた業種数が多く、上げた業種だけでは全体のけん引を仕切れなかった感がある。

4マスの中では一番広範囲への媒体力・告知効果が高いのがテレビ。各商品・サービスとの相性のよし悪しもあるが、各業種の勢いが多分に表れているのが興味深い。

今回の各グラフとそれぞれの媒体における各種業種への報道姿勢を比較すると、色々と面白い連動性が見えてくる、かもしれない。

■関連記事:

新聞広告とインターネット広告の「金額」推移をグラフ化してみる

10年で伸びたのは2業種のみ…4マスへの業種別広告費の「10年間の」推移

(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事