バーナンキショックとかテーパータントラムと呼ばれた市場の動揺を振り返る
2013年5月22日にバーナンキFRB議長(当時)は、上下両院合同経済委員会で証言を行い、「経済の勢いを示す徴候がさらに増えなければ緩和ペースを縮小させることはできない」と述べ、時期尚早の金融引き締めは、景気回復をリスクにさらす恐れがあるとの認識を示した。
ところが証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると指摘したのである。この日は4月30日~5月1日に開催されたFOMC議事要旨も発表されたが、このなかで複数の議員が、早ければ6月にも資産購入を減額したいとの意向を示していたことが明らかになった。
このバーナンキ発言等を受けて、22日の米国債券市場で米債は下落し10年債利回りは2.02%と2%台に乗せた。
さらに5月23日の東京市場の動きは記録にも記憶にも残るものであった。債券先物は寄付から前日比1円安と急落した。日経平均先物は震災後の2011年3月15日以来のサーキッド・ブレーカーが発動。この日の日経平均は1143円安となったのである。
そして、第2波は同6月19日に起きた。FRBのバーナンキ議長は6月19日のFOMC後の記者会見において、失業率が低下基調を維持するなどの経済情勢が見通しどおりに改善すれば、今年後半に資産購入プログラム(LSAP)の規模縮小をスタートさせるのが適当と見ていると述べ、一定のペースで規模を縮小し、失業率が7.00%程度に下がっていくことを目安に、来年半ばにかけて緩和策を終了するという意向を示したのである。
これを受けていわゆる緩和マネーの流入が減少するとの懸念が出てきたことから、20日の米国株式市場は206ドル安となり、21日には前日比353ドル安とこの年最大の下げ幅を記録した。ドル円は一時97円台に低下。19日に米10年債利回りは2.3%台に、20日には2.4%台に、21日には2.5%台に上昇した。
この年の8月末にワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムにバーナンキ議長は異例とも言える欠席をした。
それでも、市場では当時のFRBの政策変更決定は、議長会見があるFOMCにおいて行われている事例から9月のFOMCでのテーパリング開始との見方が次第に強まっていった。
しかし、9月17日から18日にかけて開催されたFOMCでは、予想されたテーパリングを見送った。結局、テーパリングの開始を決定したのは9月ではなく12月となった。
2013年の5月と6月のバーナンキショックとかテーパータントラムと呼ばれた市場の動揺を受けて、FRBは市場との対話の難しさを感じ取ったのではなかろうか。今回はこの教訓が果たして生かされるのであろうか。