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ラグビーとはどんな競技か。堀江翔太が国際試合経て語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
写真左から堀江、ディーンズ(筆者撮影)

 ラグビー日本代表として2019年までに3度のワールドカップへ出場した堀江翔太は、自分のしている競技の要点を押さえる。

「チームがうまく回るように自分の仕事を全うしたい。それは、どこのカテゴリーでも一緒だと思います」

 11月4日、埼玉・熊谷ラグビー場。所属する埼玉パナソニックワイルドナイツのゲーム主将として、オーストラリアからスーパーラグビー(国際リーグ)に加わるレッズとの親善試合に先発。スクラム最前列のフッカーとして終盤までプレーした。

 序盤からフィジカリティで圧力を受けて反則を重ね、敵陣ゴール前での相手ボールラインアウトを何度も与えた。ここを起点としたモールからの失点などで、前半は6―45と点差をつけられた。

 後半はエリアゲームの妙と防御でリズムを取り戻し、30―55と追い上げて試合を終えた。

 まず、ロビー・ディーンズ監督が述べる。

「敗戦から学ぶことが多い。レッズの強度が我々を混乱させた。それを落ち着かせるのに時間がかかった。規律の部分でも付け込まれた。それがスコアボードに現れたと感じています」

 国内リーグワン1部のワイルドナイツは、一昨季のトップリーグ最終年度から2季連続日本一の強豪。堅守から少機を手繰り寄せるスタイルを高次で遂行する。

 しかし、海外の猛者を相手としたこの日は若手を多く起用。フッカーの坂手淳史、左プロップの稲垣啓太ら各国の代表活動へ参加する選手を欠き、前年度の主力格は今秋の代表活動に不参加の堀江ら数名に限られた。

 先発のバックス陣ではアウトサイドセンターで早稲田大学卒の長田智希、フルバックで関東学院大学卒の川崎清純と新人が並び、司令塔のスタンドオフにはルーキーイヤーを怪我で棒に振った2年目の山沢京平が入った。

 それぞれ防御をひきつけながらのパスやタックル、スペースで球をもらった際の走り、独自のスペース感覚といった持ち味をにじませたが、それぞれ課題も見出したような。

 例えば川崎は、試合中に犯した反則をイメージしてか、ボールを持ってコンタクトした際の倒れ方、球の置き方を今後の改善点に挙げた。

 ディーンズ監督はこうだ。

「何が大事かと申しますと、若い選手たちが一番、大切な判断の部分を学んだのではと感じています。スキルでの正確性、ひとつのミスが、(試合に)より大きな影響を与える。それを学ぶ機会を与えてくれたのはありがたいと感じています」

 列島きってのインターナショナルプレイヤーは、何を思ったか。

 堀江は26歳だった2012年、ニュージーランドの地域代表選手権へオタゴ代表として参戦。翌年からの2シーズンは、レベルズの一員としてスーパーラグビーを経験している。2016年には日本のサンウルブズの初代キャプテンとなり、この国のスーパーラグビーでの歴史をスタートさせている。

 期待の若手選手の国際経験について、堀江はこう応じた。

——若手にとって、どういうゲームになったと思うか。

「ゲームを作るにあたって、ああいう(苦しい)展開の時にはどうしたらいいか(がわかったのでは)。ギリギリの、公式戦の雰囲気で強い相手とできるのはいい経験。足りなかった部分も、通用した部分もわかると思います。僕自身、海外に行って、スーパーラグビーに行って、サンウルブズで主将をやって経験したことが、活きている。(若手選手も今日の)経験をばねに成長して行ったらなと思います」

——高いレベルの試合でもともと持っている実力を発揮するのは難しいのでしょうか。

「うーん、まぁ、ラグビーって、タッチフット(タックルを伴わないラグビーのボールゲーム)じゃないんでね。タッチフットで動けていても、プラス、フィジカル(ぶつかり合い)がついてくると(圧力がないなかでできるプレーが)できなくなったり、色んな要因のプレッシャーで身体が動かなかったり、頭が働かなかったりする部分も出てくる。社会人2年目の時は、スーパーラグビーのチームとこういう練習試合ができるなんてことはまったくなかったので、それを若いうちから知っていると、いい成長ができるんじゃないかと思います」

——後半、巻き返せた背景は。

「キック、増えたんじゃないですか。その辺は、長田、清純、京平とか、バックスの判断に委ねているので。ハーフタイムで、戦術、変えたかもしれないですね」

 大舞台で実力を発揮する難しさについて、格闘技的要素のある競技の本質に基づいて説明した。

 さらには、よいラグビーにはシステムと個の判断の両輪が不可欠であると改めて強調したような。

 会見ではこうも述べた。

「ま、レッズがやりたいようなラグビーになったと思います。フィジカルで来て、ペナルティを起こして、ゴール前でのモールでトライと…。僕たちもボールを動かすような場面があればトライを獲るチャンスがあったんですけど、フィジカルの部分で…。戦術、戦略でいいものを持っていても、選手ひとりひとりがそれに頼り過ぎた部分があるかなと。個人がもっと能力を上げなければ、僕たちの戦術戦略が活きない。選手が個人に目を向けて、もっと上げるところは上げたいと思っています」

 堀江自身は8対8で組み合うスクラムこそ押されたが、個々でのぶつかり合いでは持ち前の強靭さを示す。

 信頼する佐藤義人氏とのトレーニングの成果か、キックオフ早々に激しいスイープ(相手ジャッカルをはがすプレー)を繰り出した。その後は大男とぶつかり合った際も攻防の境界線へ身体を残した。こちらの「個」は十二分に躍動した。

 自らのプレーについて聞かれれば、つつましく言った。

「できているか、できていないかは他人が決める(評価する)。僕のなかでは一生懸命チームに貢献しようと頑張れたと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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