Yahoo!ニュース

あの珍事件から丸3年…韓国の“ナッツ姫”は今どこで何をしているのか

慎武宏ライター/スポーツソウル日本版編集長
“ナッツ姫”こと大韓航空の元副社長・趙顕娥(チョ・ヒョナ)(写真:Lee Jae-Won/アフロ)

ちょうど今から3年前、2014年12月5日に起きた「大韓空港ナッツリターン事件」を覚えているだろうか。

“ナッツ姫”こと大韓航空の元副社長・趙顕娥(チョ・ヒョナ)がニューヨーク発・仁川行きの大韓航空機のファーストクラスに搭乗した際、皿に盛られて出されるはずのナッツを袋のまま提供されたとして激怒。動き始めていた同航空機をリターンさせて責任者を降ろし、仁川への到着を11分遅らせたという前代未聞の事件だ。

事件をきっかけに“財閥の横暴”が明らかに

財閥一族の傲慢さを象徴するその事件は、韓国社会で最も大きなイシューとなり、ナッツ姫には非難の声が集中した。

それ以降、韓国では何かと財閥一族は目の敵にされており、事あるごとに非難対象に。そして財閥2、3世の横柄な行動が次々と明らかになっていった。

(参考記事:鉄パイプで暴行!? 会長の三男が逮捕された韓国財閥“ハンファ”、実はかなりのお騒がせファミリーだった

社会的なイシューになったのは、韓国における財閥グループの存在感が大きいからだろう。韓国銀行の「企業経営分析」によると、韓国財閥企業の利益額は、韓国の全企業の利益額の79%を占めているという。

”財閥叩き”の流れは、当時から今現在も続いているといえる。

ナッツ姫の顔が別人のように!?

ナッツリターン事件後、大韓航空副社長の座から転げ落ちた“ナッツ姫”は、今何をしているのだろうか。

韓国メディア『NEWSINSIDE』によると、彼女は今年の4月から社会奉仕活動を行っていたという。週に1度、ソウル市内の保育園を訪れ、子供たちの“遊びの先生”を務めていたそうだ。

ただ、現在はまったく外出することもなく、自宅で自粛中だという。保育園での奉仕活動も中断していると韓国メディアは伝えている。

ネット上には彼女と見られる人物の写真も上がっているが、どこか疲れ切った表情をしており、事件当時とは別人のような印象すらある。

(参考記事:【画像あり】「地味すぎて別人みたい」ナッツ姫の近況に韓国ネット民が驚愕!!

それも仕方がないかもしれない。というのも、ナッツリターン事件はまだ終わっていないからだ。

飛行機から下ろされた責任者が訴訟

事件当時、激怒したナッツ姫が飛行機から降ろしたパク・チャンジン元事務長が訴訟を起こしたのだ。

11月20日の記者会見でパク元事務長は、事件後休職して昨年5月に復職したが、英語能力を理由に一般乗務員に降格されたと主張。

「21年間乗務員として活動し、10年以上も管理者として働いてきた。機内で数多くのトラブルがあったが、英語ができずに解決できなかったことはない。公正な評価か問いたい」と話した。

要するに、“報復人事”ということだろう。

パク元事務長は慰謝料を要求しており、チョ・ヒョナに2億ウォン(約2000万円)、大韓航空に1億ウォン(約1000万円)の損害賠償訴訟も提起したと韓国メディアは伝えている。

好感度の高い財閥3世もいるが…

この訴訟によって、再び事件にスポットライトが当たり、財閥2、3世への風当たりもさらに強くなるとの見方も出てきている。

今現在、韓国の財閥2、3世で支持されている人物は、チェ・ミンジョンくらいかもしれない。

(参考記事:ナッツ姫とは大違い!! 韓国人から応援される唯一の財閥3世、チェ・ミンジョンとは

ナッツリターン事件はもちろん、以降明らかになっていった財閥2、3世の横暴はたしかに許せるものではないが、それにしても叩かれぶりはすさまじい。

その背景には、韓国社会は生まれによって人生が決まってしまう傾向が強いからだろう。日本と韓国では大富豪の成り立ちも異なるのだ。

いずれにせよ、3年が経った現在も、韓国社会に影響を残しているナッツリターン事件。真の解決には、まだまだ時間がかかりそうだ。

ライター/スポーツソウル日本版編集長

1971年4月16日東京都生まれの在日コリアン3世。早稲田大学・大学院スポーツ科学科修了。著書『ヒディンク・コリアの真実』で02年度ミズノ・スポーツライター賞最優秀賞受賞。著書・訳書に『祖国と母国とフットボール』『パク・チソン自伝』『韓流スターたちの真実』など多数。KFA(韓国サッカー協会)、KLPGA(韓国女子プロゴルフ協会)、Kリーグなどの登録メディア。韓国のスポーツ新聞『スポーツソウル』日本版編集長も務めている。

慎武宏の最近の記事