ドレスデン「フラウエン教会」修復10周年・教会と共に芸術と文化がよみがえったバロックの街
大戦戦災で崩壊したフラウエン教会が世界中の寄付金を基に完全再建され今年10月に10周年を迎える。バロック建築の最高峰といわれるこの教会再建と共に、ドレスデンは「芸術と文化の都」として見事によみがえった。(画像は、特記以外筆者撮影)
ザクセン王朝の都として栄えたエルベ河畔の街ドレスデン
ザクセン州の州都ドレスデンは、15世紀からザクセン王朝の華麗な宮廷文化が繰り広げられ、18世紀には欧州の政治経済そして文化の中心地として栄えた。その名残りから、街にはバロック建築や壮大な建造物が多くある。ドレスデンは、エルベ川を挟んで旧市街、新市街と二分し、別名「エルベのフィレンツェ」と称される古都だ。
ザクセン選帝候フリードリッヒ・アウグスト1世(アウグスト強王)は、芸術作品や建築物のパトロンとしてドレスデンに多くの建築物や芸術コレクションを残した。
エルベ川の南側・旧市街にはフラウエン教会、ドレスデン城(レジデンツ)、ツウィンガー宮殿、センパーオペラなど、多くの歴史ある観光スポットが密集する。
戦災による崩壊から戦争警告、そして和解の象徴となったフラウエン教会
ドレスデンは、第二次大戦爆撃「ドレスデン大空襲」で、街の8割以上が破壊された。そのため現在、観光客が目にする建造物は、すべて戦後再建されたものだ。
1990年に東西ドイツが統一してから、破壊された歴史的建造物の再建が加速した。
なかでもプロスタントの教会建築の最高峰、そしてヨーロッパのバロック様式の傑作といわれるフラウエン教会の再建作業は、世界中の話題となった。1726年~43年に建てられたこの教会は第二次大戦で完全破壊され、見るも無残な姿になっていたからだ。
フラウエン教会の助成協会運営の指揮をとったルードヴィヒ・ギュットラー氏は「ドイツ統一により転機が訪れた。再建するのなら今しかない」と考えたという。
1994年から開始されたフラウエン教会の再建は、瓦礫から取り出した部材を用い、オリジナルに忠実に進められた。そのため、再建作業は、「欧州最大のジグソーパズル」と言われたほど困難を極めた。
この教会の再建作業は、世界60万人以上の寄付を受け2005年10月に完成した。ドレスデン大空襲で焼け落ちてから60年経っていた。そしてフラウエン教会は戦災による崩壊から戦争警告、そして和解の象徴としてドイツの歴史を物語るシンボルとしてよみがえった。
その再建完了から10周年を迎えた今年の10月22日から31日まで、記念コンサートがフラウエン教会で開催される。また記念イベントの他にも秋にかけて定期的にパイプオルガンや聖歌隊のコンサートも開かれる。
ドレスデン3大人気スポットはフラウエン教会・ゼンパー歌劇場・ツヴィンガー宮殿
フラウエン教会に続く、人気スポットはゼンパーオペラとツヴィンガー宮殿だ。
*ゼンパ-オペラ
ドレスデンは、音楽の都として世界的な名声を博してきた。なかでも街のシンボルであるセンパーオペラ(ザクセン州立歌劇場)は、19世紀の劇場建築の最高峰といわれており、間違いなく世界で最も美しいオペラハウスといっていいだろう。
イタリア・ルネサンス様式による建造物のザクセン州立歌劇場は、 建築家の名前からゼンパーオぺラとも呼ばれている。
オペラ鑑賞に行く時間がとれない人には45分に及ぶ場内ガイドがお勧め。(独・英語ガイド付き、ガイドなし共に1人10ユーロから)。ただし7月15日から9月06日までは夏休みのため閉鎖。
*ツヴィンガー宮殿
バ ロック建築の傑作として広く知られているツヴィンガー宮殿は、アウグスト強王の城として18世紀に建てられた。建物自体は第2次大戦で損傷したものを戦後に修復したものだが、装飾の多い迫力なある建築で見ごたえがある。
現在は、アルテマイスター絵画館や陶磁器コ レクションなど、世界に名だたる5つの美術館博物館があり、どの館にも世界屈指のコレクションが収集されている。中庭で定期的に行われる夏のオープンエアコンサートも好評だ。
ドレスデン観光局お勧めのハイライト
*君主の行列
空襲でほとんどが破壊されたドレスデンで奇跡的に残ったのがアウグスト通り沿いにあるおよそ100メートルに及ぶ「君主の行列」という壁画だ。この壁画は1907年に制作された。
マイセン陶器のタイルおよそ2万4千枚を用い、アウグスト強王を含む35人の君主と59人の学者、文化人、職人たちが見事に表現されている。
*ブリュールのテラス
“ヨーロッパのバルコニー” とも呼ばれるブリュールのテラスは、旧市街側のエルベ川に沿った美しいバロック風の遊歩道。ここからエルベ川や対岸の新市街展望は素晴らしいとしか言いようがない。周囲には芸術アカデミーやアルベルティヌム 、ノイエ・マイスター絵画館や彫刻展示室が入っている市内主要文化施設 などの見事な建物がある。
*ギネスブック公認・プフンド兄弟モルケライ 世界一美しい乳製品ショップ
新市街の観光ハイライトは、ギネスブック公認「世界一美しい乳製品ショップ」だ。このお店プフンズ・モルケライは、農場から運んできたミルクを売り、その後は、チーズやヨーグルトなど乳製品も販売するようになった。1880年創業から今年で135周年を迎えるこの老舗に足を踏み入れると、まるで博物館のような雰囲気に圧倒される。
店内の特長は、ドレスデンのアーティストがデザインした、独陶磁器メーカーのヴィレロイ&ボッホ社のタイルで店内が内装されていること。ドイツ生まれのヴィレロイヴィレロイ&ボッホ社は、マイセン、ロイヤルコペンハーゲンと共に世界三大陶磁器メーカーのひとつといわれる。
とにかくインテリアが見事で、その美しさに見とれていると時間がすぎるのを忘れてしまう。スイーツや石鹸、エコバックなどがお土産に好評。店内ではミルクやドレスデン名物チーズケーキ「アイアーシエッケ」も試してみたい。
(店内は、特別許可を得て撮影)
番外・クラシック音楽だけじゃない!世界第二のジャズフェスティバルも開催
ドレスデンはクラシック音楽というイメージがあるかもしれないが、様々な分野の音楽イベントを存分に楽しめる音楽の街としても知られる。
これからドレスデンを訪問するなら、アメリカのニューオリンズにも負けないじゃズフェスティバルを是非体感したい。(開催9月から11月)
東西統一後、伝統に支えられて成長したマイセン陶磁器
ドレスデンからエルベ川の下流30キロ、ドレスデン駅からおよそ40分ほどでかってザクセンの首都だったマイセンの街に到着する。ここに300年以上の歴史を誇るマイセン陶磁器の本社がある。
マイセン社は、前出アウグスト強王の命により、ドレスデンで発明され製造され、統一前から旧東ドイツに外貨をもたらす企業だった。ドレスデンでヨーロッパ陶磁器が生まれてから、宮廷や市民社会のコーヒー文化をもたらした。ちなみに、マイセン社は旧東ドイツ時代に国際貿易を行うことを許された数少ない企業の一つだった。
同社併設のミュージアムでは、一万色にも上る色彩絵の具を用い、東洋や欧州スタイルを結集した独自のスタイルで作り上げたマイセン陶磁器を盛りだくさん展示。工房では、マイセン製品の製作過程を心ゆくまで満喫したい。
世界で三つあるアウトレットのひとつが本社に常設されている。ここでは、マイセン製品が最大5割引で入手可能。
また2015年5月には中国上海にマイセン磁器旗艦店がオープンし、話題となった。
統一後、ドイツの食事や食卓文化が変わり、時代の流れに沿うため、マイセンは食器類だけでなく、ファッションやジュエリー、インテリア装飾品も販売するようになり、成長を遂げている。
今年の秋、シルバーウィークや休日を利用して、ドレスデンで芸術と文化を体験するのはいかがだろうか。
取材協力・ドイツ観光局