米長期金利はピークアウトしたのか
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米10年債利回り(米長期金利)の日足チャートなどをみると、いわゆるダブルトップを形成した格好となり、いったんピークアウト感が出てきた可能性がある。
10月13日に発表された9月の米消費者物価指数、コア指数が前年同月比6.6%上昇と40年ぶりの高さとなった。19日に発表された英国の9月の消費者物価指数は前年同月比10.1%増と40年ぶりの高水準となり、ユーロ圏の9月の消費者物価指数改定値は前年比9.9%上昇と高水準を維持した。
世界的な物価上昇が意識され、FRBの積極的な利上げが続くとの見方から14日の米10年債利回りは4.13%に上昇し、米長期金利が2008年7月以来の高水準を付けた。
21日の米国市場で米10債利回りが一時は4.33%とほぼ15年ぶり高水準をつけ、ドル円は一時151円94銭と1990年7月以来32年ぶりの円安水準をつけた。24日には政府・日銀による覆面介入も実施されたとみられる。24日に英国でスナク元財務相が次期首相に就任する見通しとなり、英国の財政運営が安定するとの見方も強まった。
このあたりで米10年債利回りはいったんピークアウトした。その後、米10年債利回りは4%を一時割り込んだ。しかし、そこから再び上昇してきた。
10月31日に発表されたユーロ圏の10月の消費者物価指数速報値は前年比上昇率が10.7%と過去最高となった。
11月2日のFOMCでは0.75%の利上げを決めた。0.75%の利上げは4会合連続となる。パウエル議長は会見で次回以降の会合で減速について議論することを認めつつ、利上げ停止の検討はかなり時期尚早とも述べ、FRB議長の会見を受け金融引き締めが長期化するとの見方が強まり、昨日の米債は売られ、米10年債利回りは4.10%に上昇した。
8日の米国の中間選挙では、世論調査などで共和党が勢いを増しており、上下院で多数党が異なる、ねじれ議会になる可能性が出てきた。ねじれ議会は債務上限の引き上げを巡る膠着状態につながり、米国のデフォルト懸念を再燃させる可能性も意識されてか、米債は売られ、米10年債利回りは4.22%に上昇した。
しかし、9日の米国債券市場ではねじれ議会となれば、財政支出が抑えられるとみた債券買いが優勢になった。米10年債利回りは4.12%に低下した。
10日に発表された10月の消費者物価指数は前年同月比7.7%上昇となり、伸びは6月の9.1%をピークに4か月連続で鈍化し、市場予想も下回った。エネルギー・食品を除くコア指数も前年同月比6.3%上昇と伸びが減速。インフレのピークアウトが意識され、利上げペースが鈍化するとの期待が強まり、米10年債利回りは3.81%に急低下した。
15日発表の10月の米卸売物価指数は前年同月比8%の上昇となり、伸びは前月の8.4%から鈍化し米10年債利回りは3.77%に低下した。
こうして目先の米長期金利はダブルトップを形成した格好となった。これによって米長期金利がピークアウトしたと断定はできないが、その可能性も否定はできない。
ただし、FRBによる利上げペースが減速したとしても、利上げが継続する可能性はある。米長期金利は当面は高止まりが続くとみておいた方が良いと思われる。