「火星12」「火星13」「北極星3」の発射はいつ?そして「核実験」は?
金正恩委員長が14日の戦略軍司令部視察以来8日ぶりに現れたと思ったら、視察場所はまたもやミサイル関連であった。
金委員長が訪れたのは国防科学院材料研究所で、ここは大陸間弾道ミサイル(ICBM)用の素材を研究、開発するところである。
視察を写真入りで伝えた労働新聞によると、金委員長が関係者から説明を受けていた部屋の壁には「水中戦略弾道弾 北極星3」と書かれた説明板が飾られていた。またその反対側には「火星13」の説明板もあった。
北朝鮮初の潜水艦弾道ミサイル「北極星1」(飛距離約1000km)は昨年8月に成功している。今年2月には地上型に改良された地対地「火星2」(約2000km)が発射され、これまた成功している。「北極星3」が「水中戦略弾道弾」と説明されていたことから地上型ではなく、潜水艦型ミサイルであることが明白となった。
「北極星3」の説明ボードに垂直発射管の中にある「北極星3型」ミサイルの図面と一部字が見えにくいが、「模擬試験後」と書かれた弾頭と推定される物体が写っていた。この弾頭物体らしきものは昨年3月に北朝鮮が「弾頭の大気圏再突入環境模擬試験に成功した」と主張し、公開した弾頭と形態が似ていた。
「北極星3」については偵察衛星によって日本海に面した新浦沖で1~2か月前からコールドローンチによる射出試験など発射に備えた動きが探知されている。今回、北朝鮮が公開したことから近く「北極星3」を使って大気圏再突入の実験を行う可能性が高い。
一方、「火星13」は2012年4月の金日成主席生誕100周年軍事パレードで初めて登場したICBM級の「KN-08」とみられる。2年前の労働党創建70周年の軍事パレードではその改良型「KNー14」がお披露目されていた。
「火星13」の説明図には「3段階エンジン」「2段階エンジン」「1段階エンジン」との説明があった。また、推進体が3段に分離される図が描かれていた。これにより「火星13」が3段式ミサイルであることが明らかとなった。
北朝鮮は、液体燃料を用いる「火星」系列と固体燃料を使う「北極星」系列の2種類の弾道ミサイルを開発している。固形燃料は短距離用で、中距離及び長距離用ミサイルには液体燃料が使われていた。
北朝鮮は液体燃料から固形燃料にシフトしていっているが、国防科学院材料研究所が固形エンジンの素材を開発していることを考えると、「火星13」は「北極星」と同じく固形燃料を使用する可能性が強まった。
北朝鮮が今年立て続けに発射したICBM「火星12」と「火星14」はいずれも液体燃料が使用されている。固形燃料を使用し、移動式発射台から発射されるとその分、発射の兆候を探知するのが遅れ、迎撃が難しくなる。
北朝鮮が米韓合同軍事演習の最中に未発射のミサイルを公開したことで合同軍事演習を進める米韓側を牽制するのが狙いとの見方も出ているが、それよりも、核もミサイル開発も完成するまでは断念しないとの意思表示とみたほうが良さそうだ。
金委員長は7月4日の米国の独立記念日に「火星14」を発射したことについて「我々の警告を無視し、我々の意志を試そうとする米国に見せつける時が来た」とその発射理由を説明していた。また、その際「独立記念日に発射されてトランプは不快だろう。さらに彼を退屈させないため大小の贈り物(ミサイル)を届けろ」とまで言い切っていた。
また、7月28日に再度「火星14」を発射した際には「米国に厳重警告するため発射した。この程度やれば、(トランプも)我々に手出しできないということを理解するだろう」と語っていた。
そして、今月14日、視察した戦略軍司令部でグアムに向けた「火星12」4連発について「惨めで辛い時間を味わっている愚かなアメリカの動向をもう少し見守る」と、やるもやらないのも米国次第と牽制したが、米国は金委員長の脅しに屈することなく、21日から予定とおり米韓合同軍事演習を強行した。
北朝鮮のメディアは「我々の再三にわたる警告を無視した。朝鮮半島情勢は予測のつかない危機に陥った」(21日付の朝鮮中央通信)「米国が政治、経済、軍事のあらゆる面で全面的な挑発をやってきた以上、断固とした報復で対応するのが我が軍隊と人民の意志と決心である」(21日付労働新聞)と米国を非難していた。
金委員長は「米国の無謀が一線を越え、計画した射撃が断行されれば、最も痛快な歴史的瞬間となる」と発言していたが、北朝鮮にとってのレッドラインが仮に米韓合同軍事演習の強行ならば、グアムに向けた「火星12」の発射は現実味を帯びるだろう。
北朝鮮は「火星12」のほか「北極星3」、「火星13」そして6度目の核実験と4枚の対抗カードを手にしているが、明日25日は「先軍の日」、来月9月9日は「建国記念日」、10月10日は「労働党創建日」などが控えている。どのタイミングでボタンを押すのだろうか?