今やスマホが大多数…通勤の友の実情をさぐる
通勤の友はスマートフォン
自宅と職場との行き来を通勤と呼ぶが、その移動手段としてはバスや鉄道のような公共交通機関によるところが多い。それらを利用する場合、移動中の時間を用いて新聞を読んだりスマートフォンを使うなど、ある程度自由な行動の中で時間を過ごすことができる。この通勤における同時行動の実態について、総務省統計局の「令和3年社会生活基本調査」(※)の結果を用いて確認する。
最初に示すのは通勤時に同時行動(いわゆる「ながら行動」)として何をしているかについて、代表的な行動内容をいくつか挙げ、その行動者率を確認したもの。雇用されて通勤をしている人に対する割合となる。またバスや鉄道のような公共交通機関の利用以外に、徒歩や自転車、バイクや自動車などによる通勤のスタイルもあることに留意をしておく必要がある(例えば自動車通勤ならばスマートフォンの操作や新聞・雑誌の閲読は不可能)。なお「コンピューターの使用」とはパソコンだけでなくスマートフォンや従来型携帯電話、タブレット型端末などを用いたインターネットの使用も含まれている。
「コンピューターの使用」がもっとも多く、男性では8.4%、女性は5.7%。似たような行動の「電子メールなどによる交際・付き合い」も合せればそれぞれ8.6%、6.5%となる。「新聞・雑誌」は男性1.4%、女性0.5%。想像以上に少ないかもしれないが、これは前述の通り鉄道やバスに限らず、全通勤者を対象としたものであるのが原因(鉄道やバスの通勤者に限ったデータは無い)。
また男性と比べて女性の値が低めなのは、女性の就業形態としては自宅近所の職場でのパートやアルバイトが多く、公共交通機関を使って通勤する人の割合が低いからだと考えられる。
ともあれ現状では通勤の友的な存在は、新聞や雑誌、書籍よりもコンピューター、多分にスマートフォンであることが改めて確認できる。
これを年齢階層別に見たのが次のグラフ。まずは男性。
男性だが、20代後半は「コンピューターの使用」が22.0%とずば抜けて高い値を示している。雇用されて通勤している20代後半の1/5強は通勤時にスマートフォンなどを使用している計算になる。30代から40代までは1割前後、50代で再び値が増えるのは興味深いところ。「新聞・雑誌」は30代後半と40代後半でやや伸びるが、5%にも届かない。
続いて女性。
男性と比べて値そのものは低いが、男性同様に「コンピューターの使用」が若年層全般と中年層後半において一定の値をしている。20代から30代は雇用されて通勤している人の1割強が、通勤時にスマートフォンなどを使っていることになる。他方、「CD・音声ファイル」も若年層でよく使われており、また、中年層でも一定の値が確認できる。
「新聞・雑誌」は押しなべて低め。「読書」も男性と比べると低い。通勤スタイルそのものの違いが反映されている。
通勤の友の昔と今と
続いて経年変化を確認するが、社会生活基本調査では同時行動の調査は2006年以降のみの実施なことから、2006年以降の動向を確認する。またグラフ中空欄の部分は、その項目の回答者が皆無か、その項目自身が設問として存在しないことを意味する。さらに「CD・音声ファイル」は2006年時点では「CD・カセットテープ」となっており、連続性の上でやや問題があるが、この際妥協する。
男女差が生じるのは昔も今も変わらず。他方、男女ともに2011年以降は「コンピューターの使用」が大きく伸び続けていることが分かる。女性に限れば「電子メールなどによる交際・付き合い」も大きく伸びている。
一方で意外にも、男性では「読書」「新聞・雑誌」、男女ともに「CD・音声ファイル」の行動者率もわずかずつだが増加していたのが確認できる。女性は逆に「読書」で減り、「新聞・雑誌」は誤差範囲内での動きにとどまっていたなど、興味深い動きも見受けられる。そして直近の2021年では男女を問わず「新聞・雑誌」が伸び、「CD・音声ファイル」が減少に転じている。
ともあれ、男女を問わずに通勤の友の主役の座にあるものが、2011年から2021年の間に交代をしたことには違いない。
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※令和3年社会生活基本調査
国勢調査の調査区のうち、総務大臣の指定する約7600調査区に対して行われたもので、指定調査区から選定した約9万1000世帯に居住する10歳以上の世帯員約19万人を対象としている。ただし外国の外交団やその家族、外国の軍人やその関係者、自衛隊の営舎内や艦船内の居住者、刑務所などに収容されている人、社会福祉施設や病院、療養所に入所・入院している人は対象外。2021年10月20日現在の実情について回答してもらっているが、生活時間については2021年10月16日から10月24日までの9日間のうち、調査区ごとに指定した連続する2日間についての調査となる。調査方法は調査員による調査世帯への調査票配布と、調査員への提出あるいはインターネットでの回答による回収方式。
調査は5年おきに実施されており、過去の調査もほぼ同様の様式で行われている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。