米国株式市場でダウ平均は過去最高値更新、金利も回復傾向に
4日の米国株式市場では代表的な株価指数のひとつ、ダウ工業株30種平均が続伸となり、2019年7月15日以来、約3か月半ぶりに史上最高値を更新した。ナスダック総合指数とS&P500種株価指数も連日での最高値更新となった。
1日に発表された10月の米雇用統計では非農業雇用者数が12.8万人増と予想を上回り、8月分と9月分もそれぞれ上方修正された。平均時給も順調な伸びとなっていた。これが好感されて、1日の米国株式市場は上昇した。
日本が休日となっていた4日には、米当局者が中国との第1段階の通商合意に月内に署名する可能性があるとの見方を示し、ロス米商務長官が米国企業に中国通信機器大手ファーウェイへの部品販売を認めるライセンスをまもなく付与するとの見通しを示したことから、米中の貿易協議の進展への期待が強まった。これを受けて米株は続伸となり、ダウ平均も最高値を更新した。
ただし、1日に発表された10月のISM製造業景況感指数は48.3と景気拡大・縮小の節目となる50を3か月連続で下回っていた。10月1日に発表された9月のISM製造業景況感指数が10年3か月ぶりの低水準となったことで、この日のダウ平均は343ドル安となっていた。しかし、今回のISM製造業景況感指数も50割れとなっていたにもかかわらず、ほとんど無視されたというか、雇用統計の良い数字に反応した格好となった。それだけ地合が良いということでもあろうか。
米中の通商交渉についても、さらに悪化するという事態にいったんブレーキが掛かり、多少なりとも改善する方向に向いてきたことが好感されているだけである。ISM製造業景況感指数をみてもわかるが、これで景況感が改善されているわけでもない。
ただし、米長期金利の動向をみても低下基調から上昇に転じようとしているようにもみえることから、市場関係者はそれほど景気に対して悲観的な見方をしているわけでもなさそうである。
FRBも予防的な利下げはひとまず停止してくるものとみられ、それを意識した米長期金利の動きともみえなくもない。しかし、米国に限らずドイツや日本の長期金利も同様の動きとなっており、世界的に金利が少し回復してくるような兆しもみえている。
米中の貿易摩擦などによる世界的な景気の減速懸念は燻る。しかし、この米国の株価や世界的な長期金利の動きを見る限り、あまり悲観的な見方をしていても方向を見誤る可能性があるのかもしれない。これはある意味、日銀にとっては良い状況のように思われる。