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個人は買ってはいけない「仕組み債」

久保田博幸金融アナリスト
(提供:アフロ)

 「仕組み債」と呼ばれる複雑な金融商品の販売を巡り、日本証券業協会が新たな自主ルールを設ける。一見、利回りが高くても市場の急変で資産が大きく目減りするリスクがあり、損失を被った個人から苦情が続出している。今後の販売には投資経験や保有資産全体の余裕度合いなど条件を満たすよう求める(14日付日本経済新聞)。

 何を今更感はあるものの、日本証券業協会が新たな自主ルールを設けるそうであるが、この際に、個人への仕組み債の販売は中止すべきではないかと思う。

 仕組み債にはプロでもわかりづらい仕組みが内包されている。いわゆるデリバティブと呼ばれる商品を組み込んでいる。それによってハイリスク・ハイリターン(?)となることで、国債や預貯金を上回る利子相当分が生まれる。

 ただし相場が急変し、たとえば株価指数などが一定水準を超えると元本そのものが大きく削減されるなどする。これはまさに仕組み次第なので、どの仕組み債が、何がどう動いたらどうなってしまうのかは個々違う。

 そもそも自ら投資を行って、投資のリスクを身をもって感じている人が仕組み債を購入するとは思えない。高い利回りに誘われて、良くわからずに資金を投じる個人が圧倒的に多いのではなかろうか。

 さらに個人向けの仕組み債のコスト、つまりこれは仕組み債を組成したり、販売したりする金融機関の手数料相当分となるが、これも極めて高いとされている。高利回りのようにみえて、販売手数料分のコストまで考慮すると投資対象としてはハイリスク・ローリターンとなっているものも多いはずである。

 ここで注意すべきは現在、欧米の金利が上昇しており、外貨預金などの利回りも日本の金利に比べて極めて高くなっている。仕組み債とは違う点にも注意が必要となる。為替リスク等も絡むことで、コストも含めてのリスクとの兼ね合いとなるし、カントリーリスクなども考慮する必要がある。

 いずれにしても国内が異次元緩和による低金利だからといって、安易に高利回りのものに手を出すべきではない。内包するリスクなどの兼ね合いで投資すべきで、そのリスクが理解できないのであれば、それに資金を投じるべきではない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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