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ドイツ・フォルクスワーゲン社で自動車より出荷数の多い人気製品「カリーヴルスト」

シュピッツナーゲル典子在独ジャーナリスト
ひと口食べると止まらないドイツの国民食カリーヴルスト

ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)で、車より出荷数の多い自社製品が注目を集めている。それはドイツの国民食とも言われるカリー・ヴルストだ。  

VWロゴ入リの自動車(アウディ,シュコダなど子会社生産車を除く)は、2014年に全世界で612万台を出荷、これに対して、カレーヴルストは630万本だった。

このカリーヴルストは、VW社員食堂でその8割ほどが食されており、残り2割がVW社経営の自動車テーマパーク・アウトシュタットや同社本拠地ヴォルフスブルク周辺のスーパーで販売されている。またVWロゴ入リのケッチャップもあり、こちらは自社オリジナル香料入りを一般企業に外注しているという。

VW 本社料理サービス部門長のマルティン・コルデス氏は、「カレーヴルストは長年試行錯誤して作り上げた製品で食肉製造部門従業員の努力の賜物です」と語る。 

VWの食肉部門はカリーヴルストに用いるソーセージ「ボックヴルスト」を1973年より生産開始。このソーセージは、信頼を置く地元の豚肉のみを使用している。加工過程で用いるスパイスは、人工的な調味料を一切使用せず、すべて無添加の香料を調合した。なかでも、同社のカリーヴルストが誇る点は、脂肪分が市販品の半分以下、20%しか含まれていないことだ。

カレーヴルストは、加熱加工したソーセージ(主にボックヴルスト)をグリルした後、輪切りにしてその上にケチャップとカレー粉をまぶしたドイツ人のソウルフード。フライドポテトやパンとともに食する。ソーセージの原材料は主として豚肉を用いるが、時には牛肉または仔牛肉を使う生産者もある。

カレーヴルストが何時どこで発明されたかについては諸説あるが、1949年、西ベルリンの小さな軽食スタンドでヘルタ・ホォイウェアさん(女性)の考案したカリーヴルストが気軽に食することができると人気を集めた話が有力である。

参考文献・T-Online.de 、Hessische/Niedersaechsische Allgemeine (HNA)、Automotor und Sport.deほか

文頭の画像は筆者撮影。VWカリーヴルストとは関係ありません。

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2009年、カレーヴルスト60周年を記念し、ベルリンにカリーヴルスト博物館が開館された。ベルリン・ミッテのチェックポイントチャーリー近くにあるこの博物館は、カリーヴルストを通してドイツの食文化を知る場所として大変好評だ。

ケチャップをイメージした赤を基調とした博物館内では、インビス(軽食スタンド)経営の体験コーナー、カリーヴルストの食材や香料の紹介、歴史や秘伝のレシピ、ファーストフードと環境対策、映画 やテレビのシーンに登場したカリーヴルストの活躍などを展示、詳しく紹介している。実際に試食できるコーナーも提供するうえ、子供たち は楽しいゲームもありといつも大賑わい。

ドイツ観光局によれば、ベルリン・シェーンハウザー・アレーにあるコノブケのカリーヴルスト屋台では「天国から地獄」まで5レベルにわたる辛さが楽しめるそうだ。

在独ジャーナリスト

ビジネス、社会・医療・教育・書籍業界・文化や旅をテーマに欧州の情報を発信中。TV 番組制作や独市場調査のリサーチ・コーディネート、展覧会や都市計画視察の企画及び通訳を手がける。ドイツ文化事典共著(丸善出版)国際ジャーナリスト連盟会員

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