江口ともみ、夫と語る…はぐれた“子ども”と夫婦の絆
2月3日に新幹線の車内ではぐれてしまった、ぬいぐるみのもぐたろうくんを捜索中の江口ともみさん。ブログに「子どもを探しています」と投稿したことが、ニュースにもなりました。“父さん”“母さん”と呼び合う、夫・つまみ枝豆さんと、家族として日々を過ごしてきたもぐたろうくんをはじめとするフモフモさんとの出合いから、師匠のビートたけしさんも気を遣うほど(?)の仲良しすぎる結婚生活を、2人の口から語ってもらいました。
――もぐたろうくんについて教えてもらえますか?
江口:ぬいぐるみメーカー「シナダ」さんが作っている、フモフモさんシリーズです。もぐらの“もぐぐ”というキャラクターで、うちにも、もぐぐだけで数人いるんですが、そのうちの1人がもぐたろう。“ぬい撮り”と言って、ぬいぐるみを主体にした撮影をして、ブログやインスタグラムなどのSNSに写真・動画をアップしていたんです。もぐたろうがいなくなった2月3日も、仕事先の仙台にもぐたろうを含め、3人のフモフモさんたちを連れて行きました。節分だったので、朝からもぐたろうに鬼のお面をつけて、ヒョウ柄の服を着させて、動画を撮っていたんです。帰りの新幹線でもぐたろうの写真を撮ったのですが、結果、それが最後の写真になってしまいました…。本当に私のうっかりミスなんですが、東京駅に着く前に本とかメガネをバッグに入れて立ち上がったところ、もぐたろうとはぐれてしまって。しかも新幹線はその後、東京駅から上野駅に行き、上野駅で清掃だったんです。急いで上野駅に探しに行こうと思ったのですが、東京駅の事務室の方から「清掃が終わっていないし、連絡をくれるようにしたから待っていてください」と言われて。この時には、絶対に見つかると思っていたんですが…。私があきらめのつかない様子でいると、事務室の方も気にかけてくださって。上野駅に行った車両は、清掃後に東京駅に戻り、今度は盛岡に行くということで、東京駅に戻った時点で自分で確認していいと言ってくださったんです。私とマネジャーで車内を這いつくばって探しました。発車するまでの15分くらい、自分の座席周辺をさんざん見たんですが、いませんでした。
――有力な情報提供はありましたか?
江口:ないですね。警視庁遺失物センターとJR東日本さんへの電話の問い合わせは毎日しているんですけど。ひと目で“もぐら”と分からないかもしれないので、“もぐらのぬいぐるみ”だけじゃなく、“茶色いぬいぐるみ”のカテゴリーで調べていただいているんですが、なかなか…。警視庁遺失物センターは東京近郊での落し物が対象なので、全国の警察署に届いている落し物のサイトでも調べています。“玩具”とか“茶色”とか、キーワードで検索して、片っ端から各地のセンターに電話しています。
――そもそも、もぐたろうくんと暮らすようになったきっかけは?
江口:私、2007年に番組のロケでバギーを運転中に事故に遭いました。右腎損傷で腎臓を1つ摘出する手術を受けたのですが、入院中にマネジャーからお見舞いでもらったのが、フモフモさんシリーズの1人でした。私が子どもの頃からぬいぐるみが好きだったことを、マネジャーも知っていたんですね。もらったのは、もぐたろうではなく別の子でしたが、触り心地がよくて気持ちがいいな~と思っていました。退院して元気になった1年後くらいにフモフモさんシリーズを検索したところ、たくさんの種類があることを知って。最初に小さめの子を買ったんですが、父さんを驚かせたくてサイズ違いの子を買ったり、父さんも同じように私を楽しませたくて、こっそり別の子を買ったり。
枝豆:その辺からだんだん増えだしたよね。「このかわいさをみんなに分かってほしい」ということで、プレゼントしようと思って買うんですけど、かわいくなっちゃって、結局、「うちの子にしようか」って(笑)
江口:今ではウチに36人います。そんな感じで増やしていった中の1人が、もぐたろうなんです。うちは子どもがいないので、彼らが夫婦間のコミュニケーションの1つになっているとは思います。
枝豆:だからといって、2人での会話がないワケではないですよ(笑)
枝豆さんは当初、フモフモさんたちとの生活に戸惑いはありませんでしたか?
枝豆:僕が一番最初に彼女にプレゼントしたのが、クマのでっかいぬいぐるみだったんです。ぬいぐるみが好きだってのは知っていたので。そのクマもそうですが、だんだん増えてくるけど捨てられないのがぬいぐるみじゃないですか。いや~これは人に見られたら恥ずかしいなぁと。僕が知っているお客さんが家に来る時には、慌てて片づけて。「なんだここ?」と思われるのもイヤだから。だけど、母さんはどこに行っても平気でぬいぐるみを出すし、「ウチの子だからいいのよ!」って言うもんだから、逆に相手も納得してくれるんですよ。そういうのを見ていたら、拒絶反応もなくなりましたね。決して嫌いなわけじゃないんですよ、かわいいいことは分かってるし。でも、いい年こいたオヤジがぬいぐるみに「かわいい~!」とか言ってるのも、気持ちが悪いじゃないですか。イメージもあるし(笑)
――今では枝豆さんがフモフモさんたちの小道具を作っているらしいですね。
枝豆:「作って」って言うんですよ。こいつ、ずるいんですよ!
江口:あの子たちが言うんです。「カバン作って」って(笑)
枝豆:聞かないふりをしてるんですけど、「作らないよ」って言いながら、こいつがいない間に作ったら驚くだろうなと思って。僕、ミシンが得意なので。
江口:ある日、普通に「ミシン買ってきた」って…(笑)
枝豆:もともと物を作るのは好きなんです。昔、軍団のライブでコントをやった時の小道具とかは僕が作っていました。パネルとかね。ミシンは、ラジオの中継先のスーパーみたいな所で実演販売をやってて、すげえと思って買ってきたのがきっかけです。簡単な服とかポーチ、リュックサックは作りますよ。あと、もぐたろうが着けていた鬼のお面も、五月の節句の鯉のぼりや兜(かぶと)、車、海外旅行に連れて行く際のパスポートも(笑)、僕が作ってます。
――フモフモさんたちは子どものような存在ですね。
江口:子どもですね。だから、一番怖いのが、火事。連れて歩くのは数人なので、ほとんどを家に置いていくじゃないですか。なので、火事だけは絶対に起こしてはいけないと。2人で長期で出かける時には、1人ずつの頭をなでてから行きます。そのへんは、私よりも父さんの方がまめ。だからこそ、もぐたろうとはぐれてしまったのは、父さんにもすごく申し訳なくて。はぐれた当日、家に帰ったのが夜の11時くらいだったんですが、「次の日ラジオもあるんだから少しでも寝ろ」って言われて、2~3時間寝たんですけど…起きたら、父さんがリビングでお酒を飲みながら、真っ赤な目をして起きていたんです。
枝豆:もぐたろうがいなくなった時の泣き方が、はんぱじゃないんですもん。もう、どうしようかなって。きっと自分自身を一番責めているので、「大丈夫、大丈夫。帰ってくるから」って言うのが精いっぱい。
江口:さっき話した事故が、結婚して10年目くらいで。事故の前に、やっぱり子どもがいた方がいいかなというような話は、ちょこっとしてたんです。生活的にも結婚当初よりは安定してきたし、そろそろ子どもでも…なんて考えた矢先に私が事故を起こしてしまって、腎臓を1つ失って。
枝豆:事故の後、現場マネジャーから事務所に連絡がいって、そこから僕に連絡が来るので、又聞きみたいな感じで全然情報が来なくてもどかしかった。お医者さんと話したら、「腎臓が破裂していて、手術をしなきゃいけない。輸血に承認がいる」「破裂した部分がどうなっているかは、血だらけでレントゲンじゃ見えないから、開けてみないと分からない。ただ、輸血が間に合わなくて失血死という場合もある」と…。そのうえ、「(手術の成功率は)半々ぐらいだと思ってもらった方が」とまで言われて。とにかくパニックだったんです。結果、「母さん、やっぱり手術しよう」と声をかけたら、本人も「うん、してほしい」と。ただ、そこで“半々”だってことは、母さんには言えないですよね。
江口:私は病院に運ばれた時点では意識ははっきりしていて。「筋膜の中で腎臓が2つに割れています。でも、腎臓は2つあります。1つが80%の動きをします。だからすぐに摘出しましょう。大丈夫です」ってお医者さんが説明してくれたので、助かるという確信があった。いざ、手術室に入る時には、父さんが手を握って「待ってるからな」って言ってくれて。
枝豆:二度と味わいたくない時間でしたね。本当にイヤでした。母さんは死ぬとかなんとか思ってないだろうけど、僕は先生から「半々」と言われているわけで…。ドラマのワンシーンのように手術室の中に入っていく様子を見て、今までこんなに目の裏がアツくなることがあるかなっていうくらい。涙がぶわーっと出て、動けなくて。実はこの時、僕はお義母さんから「だからあなたと結婚させたくなかった。結婚しなければ、こんなケガもしなかった」と言われて。お義母さんからすれば、そうですよね。でも、この事故で夫婦の結束は固くなったかもしれないですね。
江口:私もあとでこの話を聞いて、これ以上、この人にこんな悲しい思いをさせちゃいけないなと思いました。事故前には子どものことも話していましたが、父さんは「母さんに元気でいてもらわないと。母さんに生きててもわらないと」って。
枝豆:2人で幸せでいようと。もちろん、子どもがいれば、その幸せもあるでしょうが。でも事故があり、先生から「半々」と言われた中で助かったからこそ、母さんには、好きなことをやらせてあげよう、好きなことをしようって。好きなことをやって、最終的に自分たちのお墓に線香をあげてくれる人がいないかもしれないけど、どっちが先に死ぬかも分からないけど、納得して生きようと。そしたら、僕より必ず長生きするからって約束してくれたので、それを鵜呑みにしています(笑)
――ケンカをすることはないんですか?
枝豆:しないですね。僕が酒を飲んで「うっせー!」とか言っても全然相手にされません。
江口:結婚当初に、「ケンカはやめましょう。したとしても翌日まで引きずるのはダメ。引きずったら罰金1万円ね」みたいな軽い決め事はしました。
枝豆:我慢することはないですね。不思議だけど。
江口:なんかもう血がつながってきたような気がしてきちゃって。夫婦ではあるんですけど…。
江口&枝豆:(2人同時に)兄弟のような。
江口:こういうことがすごく多いんですよ。同じ歌を同時に歌い出すとか、同じようなことをしゃべり出すとか。
枝豆:常に一緒にはいますね。一緒にいて苦じゃないんですよ。1人でいるより、一緒にいたほうが楽なんです。
江口:映画、ゴルフ、陶芸、ジム…私が学生時代の女友達と会う時も付いてきますね。
枝豆:だからたけしさんが、「枝豆のところは仲良しだからあんまり誘っちゃいけねえだろ」って(笑)
――もぐたろうくん探しには、多くの人が協力してくれているみたいですね。
枝豆:みんなが心配してくれてビックリしました。いろんな方から声をかけてもらって。思った以上に関心を持ってくれて。
江口:ぬいぐるみを子どものようにかわいがっている方、共感してくださっている方が多くて、本当に驚いています。新幹線が東京駅着だったことで、SNSなどで今回の件を知った皆さんがそれぞれ、接続の可能性がありそうな沿線の落し物を調べてくれたんです。JRとかに電話をかけてくださったり、自分の住んでいる都道府県の警察で調べてくださったり。「バスの運転手さんが友達なので、念のために落し物がないか聞きました」と言ってくれる方もいました。あと、地元の掲示板やオークションサイトも調べてくれたり。それに、外国の方にも目につくようにと英語で拡散してくださって。そこから私も中国語への翻訳をお願いして、より多くの方にもぐたろうの捜索情報が伝わるようにしてもらいました。
枝豆:ありがたいですよね。
江口:「ぬいぐるみじゃないんです。家族だから」って助けてくださる方がたくさんいてくれて。なにより、多くの励ましの言葉をいただいて、それに返事をしているだけで、私もすごく気持ちが落ち着くんです。前向きなことを皆さんが言ってくださるので、「絶対に見つかる!」っていう気持ちに持っていける。自分のミスだし、ある程度は覚悟しなければいけないことは分かっていつつも、皆さんに勇気をいただいています。本当にありがたい。もぐたろうが見つかったら、皆さんにお礼行脚に行かなきゃいけないなと思っています。
【インタビュー後記】
2016年から約1年間、ご夫婦と番組で共演させていただいたのだが、共演前の印象は“ちょいワルオヤジな枝豆さん”と“クールビューティーな江口さん”。共演後は、“実は優しくダンディーな枝豆さん”と“オチャメさ満載の江口さん”となり、さらに今回のインタビューで、“裁縫上手な枝豆さん”と“フモフモ愛あふれる江口さん”が加わり、私の中では、ある種のキャラ崩壊が起こった。
ただ、お二人を見ていて常に思えるのが「結婚もいいものかも」というコト。もう少し早く出会えていれば、私の人生も“おひとりさま”じゃなかったかも(笑)
■江口ともみ
1968年2月4日生まれ、東京都出身。オフィス北野所属。東洋英和女学院短期大学卒業後に芸能界入り。96年に番組共演を機に交際を始めたつまみ枝豆と結婚する。現在は、朝日放送「キャスト」やニッポン放送「三宅裕司 サンデーヒットパラダイス」などにレギュラー出演中。
■つまみ枝豆
1958年6月1日生まれ、静岡県出身。オフィス北野所属。たけし軍団の一員として活動するほか、俳優としてもドラマや映画、舞台で幅広く活躍。