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都心のオフィス賃料相場、この半年で最も下落したエリアは?

増澤陸チーフ図解オフィサー
都心オフィス坪単価賃料マップ 2020年7月と2021年1月の比較

2回めの緊急事態宣言が発出されて以降、首都圏では再びリモートワークが推奨されるようになりました。昨年1月からの新型コロナウイルス感染症の拡大以降、リモートワークが普及してくる中で、オフィス賃料はどうなっているのでしょうか?

都内でオフィス賃貸の仲介をされている株式会社ヒトカラメディアの木幡さんが、エリアごとのオフィス賃料相場をマッピングした坪単価マップを作成されました。それによると、都内のオフィスについて、坪単価が下がる傾向にあるといいます。

半年前【2020年7月】

(C)木幡大地 (C)Google
(C)木幡大地 (C)Google

現在 【2021年1月】

(C)木幡大地 (C)Google
(C)木幡大地 (C)Google

この地図は、同社で仲介取り扱いが可能な物件のうち、新築やS級ビル(築5年以内の高層ビル)を除いた100坪程度のオフィスビルについて賃料相場を坪単価で表しています。マップでは、1万円~(青)から3万円~(赤)まで5千円刻みに5段階で色分けされています。※このマップに表示されたエリアごとの坪単価データは、表形式にして記事下に掲載しました。

2つを見比べると、賃料の高い「赤」のエリアの数が減っているのがわかります。

大手町エリアは半年前に坪単価4万〜5万円であったところから、現在は坪単価4万円前後に。六本木エリアも半年前の坪単価3万円前後から現在は2.5万〜3.0万円と、全体的に大幅に下がるか、弱含みな状態になっています。

この半年で最も大きく下がっているのは、渋谷・恵比寿エリアです。もともとこのエリアは人気が高く、コロナ発生までは長く賃料の上昇が続き、坪単価が高くなっていたのですが、コロナ以降、その賃料の高さを嫌気して、このエリアから離れていく企業が続出し、空室率が上がった結果、賃料を下げているとのことでした。

周辺部へはまだ影響が及んでいない

一方で、大久保や、大塚、浅草、天王洲アイルといった周辺部はまだ下がっていません。これについて、木幡さんは「以前に比べて、エリアにこだわるより、賃料が安いエリアや居抜き物件を優先するようになってきた。お客様の検討エリアが広がっている」といいます。

下落が顕著になったのは昨年9月〜10月ごろから

オフィス賃貸市場において、昨年4月〜5月は解約ラッシュでした。オフィスは普通6ヶ月前通知なので、10月〜11月が退去のラッシュです。賃料が下がったのはその前の9月〜10月頃でした。

「オーナーさんも家賃は最後の砦。賃料を下げずに、まずはフリーレントや移転支援金を払うなどの好条件をエサに募集をする。それでも入らない場合、賃料を下げざるを得ないが、なるべく下げたくないので、最後は『誰が最初に下げるか』という探り合いになる。そして、実際に賃料に影響が出始めたのが昨年9月から10月頃でした」(木幡さん)

オフィス仲介についてお話をお伺いした木幡大地さん(写真:本人提供)
オフィス仲介についてお話をお伺いした木幡大地さん(写真:本人提供)

縮小移転か?拡張移転か?

物理的にオフィスが使えないことの弊害もたくさん出てきているとも。事業への影響は小さくとも、カルチャーや新人教育といった面でオフィスが必要と思われており、結果として、オフィス移転の相談の内容で面積縮小はほとんどなく、拡張移転の話ばかりという状態のようです。拡張はしつつ、コストを上げたくないので、坪単価の安いエリアに移転するという動きもあるようです。

居抜き物件の増加

さらに、最近見られる傾向として居抜き物件が増加しているということがあげられます。

これまで、ビルオーナーの多くは、原状回復の責任の明確化という観点から居抜きによるテナントの交代には否定的でした。しかし、空室率が上がるにつれて、「早く次を決めたい」という思いから、居抜きでの入居を認めることが増えてきているといいます。

借りる側からも、居抜き物件への問い合わせがかつて無いほど増えているといいます。先行き不透明ななか、なるべくキャッシュを残したいと思っていることがその背景にあるようです。

居抜き物件へのニーズはこれまでもありましたが、コロナ後、供給も増えてきたことで、市場が活性化してきているようです。

今後の見通し

木幡さんによれば、賃料の下落傾向はまだしばらく続くだろうとのこと。

まず、リモートワークが定着してきたことで、シェアオフィスやWeWorkのような存在も増えてきていること、各種調査でも空室率が上がっていることなどがその理由です。

そして、先行き不透明な中、オフィスへのを控えたいという経営者のニーズは根強いこと。また、先行きが不透明なのはビルのオーナーにとっても同じです。以前であれば数ヶ月空室でも高い家賃で入ってくれる人を待つ余裕があったオーナーでも、いまは下げてでもすぐに入ってもらいたいという心境になるのでは、ということでした。

一方で、ここ数年オフィスビルの相場は右肩上がりに上昇して来たので、数年前の水準に戻ってきた、とも言えるそうです。

賃料が下がる状況は、新しいビジネスを始める人にとってはより少ない投資でスタートできるチャンスとも言えます。古い会社が出ていき、その設備を居抜きで使う新しい会社が伸びる。コロナとともに、社会に新陳代謝が起こっているさまを、私達は目撃しているのかもしれません。

各エリアの坪単価一覧

木幡氏データより筆者作成 単位は万円。青は下がったエリア・赤は大幅に下がったエリア。
木幡氏データより筆者作成 単位は万円。青は下がったエリア・赤は大幅に下がったエリア。

木幡氏データより筆者作成 単位は万円。青は下がったエリア・赤は大幅に下がったエリア。
木幡氏データより筆者作成 単位は万円。青は下がったエリア・赤は大幅に下がったエリア。

木幡氏データより筆者作成 単位は万円。青は下がったエリア・赤は大幅に下がったエリア。
木幡氏データより筆者作成 単位は万円。青は下がったエリア・赤は大幅に下がったエリア。

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筆者作成
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チーフ図解オフィサー

東京都在住のブロガー・ITコンサル。経済・経営の話題を中心に図解でわかりやすく解説することに定評がある。ブログ『それ、僕が図解します。』は、個人運営ながら、時には月間訪問者数20万人を超える人気ブログとなっている。世の中の分かりにくいことや納得の行かないことを少しでも減らすことを目標としている。図解を始めたのは約20年前から。仕事に必要な画面遷移図を描き続けているうちに、何でも図で説明できるようになった。得意としているのは、経済・経営、不動産、税金、終活・相続など。著書:『デジタルコンテンツ白書』編集委員(2007−2014)等 京都大学農学部卒。宅地建物取引士。相続診断士。

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