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【目黒区】来場者2万人を突破、「和のあかり×百段階段2024 ~妖美なおとぎばなし~」を見逃すな

Chikuwa地域ニュースサイト号外NETライター(東京都目黒区)

日本美のミュージアムホテル「ホテル雅叙園東京」は、JR目黒駅から行人坂を下り徒歩約4分のところにあります。

旧・目黒雅叙園時代から受け継いだ歴史ある美術品や建造物が残されており、中でも東京都指定有形文化財「百段階段」は、現存する唯一の木造建築物。
普段は非公開ですが、企画展の時だけ、中に入ることができます。

東京都指定有形文化財「百段階段」
東京都指定有形文化財「百段階段」

この文化財「百段階段」でこの夏話題の企画展「和のあかり×百段階段2024~妖美なおとぎばなし~」が絶賛開催中です。

2024年は「おとぎばなし」をテーマに豪華絢爛、妖しくも美しい世界観に没入できる仕掛けが満載

「雅楼」をイメージしたエントランスの展示
「雅楼」をイメージしたエントランスの展示

「和のあかり×百段階段2024~妖美なおとぎばなし~」の企画展、エントランスからすでに物語は始まっています。

1935年(昭和10年)開業の旅亭「雅楼(みやびろう)」が老朽化により修繕を行った際、江戸時代後期に起きた不思議な話が綴られている巻物を発見。

巻物が見つかった螺鈿細工の文箱は「安宅漆工店」のコレクション
巻物が見つかった螺鈿細工の文箱は「安宅漆工店」のコレクション

「雅楼」の前身は江戸末期に創業した旅籠で、関東大震災で焼失。その後12年の時を経て再建されたのが「雅楼」という設定です。

飾られている螺鈿細工の文箱は、「ホテル雅叙園東京」の所有する工芸品、文化財「百段階段」の修復にも関わっておられる「安宅漆工店」の塗師・安宅信太郎さんのコレクション。

造形作家・人形師であるよねやまりゅうさんの作品「猫魔」
造形作家・人形師であるよねやまりゅうさんの作品「猫魔」

狛犬のごとく睨みを聞かせているのは造形作家・人形師であるよねやまりゅうさんの作品「猫魔」。

日本で唯一の藍染め技術「籠染め」で浴衣生地を生産してきた中野形染工場と、使われなくなった籠染の型を灯籠としてハナブサデザインが蘇らせた、一点物の灯りも幻想的な雰囲気を醸し出しています。

中野形染工場×ハナブサデザイン「籠染灯籠」
中野形染工場×ハナブサデザイン「籠染灯籠」

かつては浴衣生地を彩って来た伝統的な和柄。エレベーターを降りた瞬間から物語世界へと、妖しく美しく誘っていました。

愛らしい猫たちが異世界へと引き込んでいく「雅楼」の玄関

造形作家・小澤康磨さんの作品「猫」たちがあちこちに
造形作家・小澤康磨さんの作品「猫」たちがあちこちに

暖簾をくぐり「雅楼」の玄関へ。

柏木美術鋳物研究所の「小田原風鈴」
柏木美術鋳物研究所の「小田原風鈴」

涼やかな小田原風鈴(柏木美術鋳物研究所)の音色に包まれ、ホッと一息・・・と思ったのもつかの間、部屋のあちこちからもの言いたげな猫たちの視線を感じます。

今回の猫ちゃんたちは、造形作家・小澤康磨さんが企画展のために作った新作ばかり。玄関のいたるところに潜んでいますので、お見逃しなく!

哀しくも美しい「竹取物語」の世界へと誘う「十畝(じっぽ)の間」

文化財「百段階段」の最初のお部屋「十畝(じっぽ)の間」
文化財「百段階段」の最初のお部屋「十畝(じっぽ)の間」

「竹取物語」は平安時代前期に書かれたといわれている作品で、「かぐや姫」のお話として有名です。

竹を取り生活していた「竹取の翁」がある日、光り輝く不思議な竹を発見。その竹を切ってみると、小さくて愛らしい女の子がいた、というところから物語が始まります。

竹で創る光のアート「駄bamboo」の作品
竹で創る光のアート「駄bamboo」の作品

「十畝の間」では、月の都からお迎えがきて、天の羽衣を着せられ、かぐや姫が天へ帰っていくというシーンを思わせる展示となっており、手がけたのは「駄bamboo」平木嗣人(ひらきつぐと)さんの作品。

宮崎県にあった放置竹林を整備した際に出る竹を活用して竹灯籠を制作しています。「透かし削り」の中に更に「透かし彫り」を施したりと、絶妙な光り加減と異なる光の色彩を魅せてくれる平木さんの作品。

竹の伐採から漆塗りなどの加工まで1年半~2年の歳月をかけて制作し、すべて手仕上げによる唯一無二の作品を生み出しています。

「月」は高山しげこさんの照明
「月」は高山しげこさんの照明

平木の竹灯籠の中にぽっかりと浮かぶ、高山しげこさんの照明。本物の月のように冷たく研ぎ澄まされた光をたたえています。

竹取物語の最後に、天人から天の羽衣を着せられ、人間界での記憶をすべてなくして月へと帰る、というシーンを覚えていますでしょうか。

老夫婦のかぐや姫への思慕と、残された人々の哀しみを思い起こさせるような、温かみがありつつも冷たく寂しい灯りのように感じました。

歌舞伎の演目「葛の葉子別れ」モチーフに安倍晴明誕生を描く「漁樵の間」

陰陽師として知られる安倍晴明は、白狐の化身である「葛の葉」の子どもという伝説があります。

「漁樵の間」では松竹衣裳株式会社歌舞伎座舞台株式会社により、「信太妻(しのだづま)」とも呼ばれる歌舞伎の演目「葛の葉子別れ」のシーンを再現しています。

歌舞伎の演目「葛の葉子別れ」のシーンを再現
歌舞伎の演目「葛の葉子別れ」のシーンを再現

子ども(安倍晴明)を置いて去らねばならなくなった葛の葉の切ない心情が伝わってくる展示。

成長して陰陽師として活躍する安倍晴明の向いにいるガマガエル、舞台では実際に人が入り演じているそうです。また、左手にある牛車も実際に使われているもの。

まるで舞台のワンシーンのような臨場感あふれる展示となっていました。

鯉の滝登り「登竜門」を表現した「草丘の間」

続いて鯉の滝登り「登竜門」を表現した「草丘の間」へ。「登竜門」とは川の上流にある竜門を昇った魚だけが龍になれるという伝説のことです。

さまざまな魚がその荒行に挑みますが、唯一昇り切ったのが鯉だけだったという物語。

紙で作られた錦鯉のアートクラフトや小林東雲さんの描いた龍の水墨画と、一葉式いけ花 家元の粕谷尚弘さんのコラボレーションで圧倒的な世界観を描いています。

紙1枚で作られた「にしきごい」
紙1枚で作られた「にしきごい」

「草丘の間」の天井を泳ぐ紙の「にしきごい」は、新潟県にある会社・DI Palette(ディーアイパレット、株式会社第一印刷所から社名を変更)の作品。大きなサイズの鯉は、今回の展示会に合わせてオリジナルで作ったものだそうです。

「いろした工房」のガラスランプ
「いろした工房」のガラスランプ

ガラスにサンドブラストで彫刻を施し、光が通ると独自の美しさが生まれる「いろした工房」のランプ。和紙や伝統的なデザインも組み入れた他にはない美しさで鯉の滝登りを妖しく、美しく彩っていました。

「静水の間」は多彩なアーティスたちが手がける「いきもの」たちの物語

ガラス作家・下田顕生さんの作品
ガラス作家・下田顕生さんの作品

「静水の間」では、おとぎばなしによく登場するいきものたちをテーマにした展示。多彩なアーティストたちの手がけた「いきもの」たちに出会えます。

樹脂画造形作家・水咲智明葵(みずさきちあき)さんの作品「惻隠(そくいん)の羽から華胥夜話(かしょやわ)」
樹脂画造形作家・水咲智明葵(みずさきちあき)さんの作品「惻隠(そくいん)の羽から華胥夜話(かしょやわ)」

時に人を惑わし、時に姿を変えて人を助けることもある「いきものたち」。この他にも早川鉄平さんの動物や自然をモチーフとした切り絵アート、ひょうたんアート「bunbun工房」、陶芸家・猿田壮也(さるたそうや)さんのランプなど、見ごたえたっぷり。

日本画家・田島周吾さんは彫刻家である小黒アリサ さん、竹工芸家・四代田辺竹雲斎とのコラボ作品を展示し、独自の世界観を表現しています。

金属造形作家・征矢剛(そやたけし)さんの作品
金属造形作家・征矢剛(そやたけし)さんの作品

また、昆虫をモチーフに金属で作られたアート作品を手がける征矢剛さんの作品は、スピーカーにもなっていて、アートから音楽を鳴らすこともできるようになっていました。

物語に込められた想いが立ち上るような作品ばかり。ぜひじっくりと見て欲しい展示となっていました。

善いもの、悪いものは表裏一体。善悪の物語を紡ぎだす「星光の間」

陶芸家・髙橋協子さんの「作品」
陶芸家・髙橋協子さんの「作品」

鬼や河童、天狗、物の怪など、ある時は悪者として描かれる異形のものたち。しかし、時には助けてくれることもあります。

鬼師・永濱貴之さんの「鬼瓦」と篠原風鈴本舗の「江戸風鈴」
鬼師・永濱貴之さんの「鬼瓦」と篠原風鈴本舗の「江戸風鈴」

私たち人間も悪いことをしながらも、善いこともする。「善」と「悪」は表裏一体。本当に怖いものは何かを問いかけてくるのがこちらの展示です。

陶人形作家・桒原淑男(くわばらとしお)さんの作品
陶人形作家・桒原淑男(くわばらとしお)さんの作品

「星光の間」では、エレベーターホールに飾られていた「猫魔」の作者、よねやまりゅうさんの作品もたっぷりと展示されていますのでお見逃しなく。

見てはいけないといわれると、どうしても見たくなる。「見るなの花屋敷~鶯長者~」の世界を描く「清方の間」

つまみ細工「和のこと遊び」の作品
つまみ細工「和のこと遊び」の作品

「鶯長者」のおとぎばなしの世界をテーマにした「清方の間」。薬売りの男がある日行ったことのない山道に迷い込み、4人の美しい娘と母親が暮らす長者屋敷へと招かれます。

長女の婿となった男はある日、1人で留守番をすることに。母親から「退屈したら3つの座敷を見てもよいですが、4つ目の座敷だけは見てはいけません」といわれた男。

しかし、見てはいけないといわれるとどうしても見たくなり・・・。襖を開けた途端、鶯の鳴き声とともに長者屋敷は跡形もなく消え去ってしまいました。

倉敷光作所「希莉光あかり」
倉敷光作所「希莉光あかり」

「清方の間」では「鶯長者」の物語世界をイメージさせる、作家たちの作品がずらり。

立体切り絵作家・濱直史さんの作品
立体切り絵作家・濱直史さんの作品

展示されている作家さんの作品は一部、ミュージアムショップでも購入できますので、ぜひチェックして帰るのを忘れずに。

「頂上の間」の展示、「天女の羽衣~終末の章~」で見るのものは?

照明作家・弦間康仁さん(Feel Lab)の作品
照明作家・弦間康仁さん(Feel Lab)の作品

文化財「百段階段」の一番上に位置する「頂上の間」。ここでは、羽衣を隠され、天へと帰れなくなった天女の伝説が描かれています。

羽衣を隠した男と地上界で暮らす天女ですが、ある日、羽衣の在処を発見して天へと帰ってしまいます。植物を育て、なんとか天に上り、天女に会おうとするのですが失敗に終わるというシーンを描いています。

こちらのお部屋の演出は、照明作家・弦間康仁さん(Feel Lab)が手がけたもので、普段は木や植物で小さな灯りを創作していらっしゃるとのこと。

今回は画用紙を使った照明作りにチャレンジ。試行錯誤しながら天へと昇るための植物を作り続ける・・・という場面を演出しました。

どのお部屋でもたくさんのアート作品が用意され、豪華絢爛な百段階段のしつらえとのコラボレーションも見どころの一つ。できれば時間をかけて、ゆっくりと鑑賞していかれることをおススメします。

企画展に合わせて作られたヨダタケシさんのサウンドトラック
企画展に合わせて作られたヨダタケシさんのサウンドトラック

「和のあかり×百段階段2024~妖美なおとぎばなし~」の企画展に合わせて作られた、ヨダタケシさんのサウンドトラック「羽衣」。お部屋ごとのテーマに合わせ、作品により深みと重層感を与えていました。

夏らしい香りの演出も楽しめる今回の企画展。毎日暑い日が続きますが、ぜひご家族やご友人と誘い合って訪れてみては?

「和のあかり×百段階段2024~妖美なおとぎばなし~」開催概要
【開催期間】7月5日(金)~9月23日(月・祝)、11時~18時(最終入館17時30分)
※8月17日(土)は17時まで(最終入館16時30分)
※会期中無休
【開催会場】ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
詳しくはこちら≫

■取材協力

ホテル雅叙園東京

地域ニュースサイト号外NETライター(東京都目黒区)

コピーライターからWebライターへ転身。アロマセラピスト・整体師としても時々活動しています。趣味はカンフー(八卦掌・長拳)と古代史(関裕二先生のファン)。目黒区の魅力やおもしろいところを発信していきます。取り上げて欲しい目黒の穴場や情報もぜひお寄せください!

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