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生成AI活用による2022年からの新たな必修科目『探求学習』への学習効果は?岩井進悟(21)氏に聞く

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:一般社団法人マイパレ 岩井進悟氏

KNNポール神田です。

ついに、『野球コーチに生成AI』が登場する時代になったという。

□茨城県立土浦二高の野球部は、生成AIを用いたスマホアプリを練習に導入している。質問すると、選手一人ひとりの課題に合わせた練習法を教えてくれる。
□メッセージは練習を終えた午後8時半ごろに届く。投球、守備、打撃…選手が自分が抱える課題を打ち込むと、チャットボットが解決策を提示してくれる。
□発案したのは、相良真博監督(39)。 慶応義塾大生の岩井進悟さん(21)との出会いで道が開けた。
□岩井さんは仲間と一般社団法人「マイパレ」を立ち上げ、高校生の『探究学習』を手伝うアプリの開発・普及に取り組む。自身も巣鴨高校で球児だった岩井さんが「選手の練習環境向上につながれば」と協力を快諾。4月から実証実験でアプリを採り入れた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ad222a7e252b4f881b9fea0d8a9ebcab0475e1dc

『野球のコーチは生成AIアプリ 好きな時間に好きな場所で指導受ける』 の記事に非常に興味を惹かれ、開発者の岩井進悟さんに取材を申し込んだ。

■2022年『探求学習(総合的な探究の時間)』が必修科目に

出典:独立行政法人 教職員支援機構
出典:独立行政法人 教職員支援機構

https://www.nits.go.jp/materials/youryou/files/064_001.pdf


文部科学省は2022年4月から『探求学習』という新たな科目を必修とし、高校3年間週1〜2回の科目として採用された。高校全体で 最大210時間 3−6単位と大きく占めるようになる。自分自身が主体的に探求する時間というものであり、自ら問いを立てて、それに対して答えていく学習課題の設定・調査・まとめを繰り返して主体的・対話的に学び、自分なりの答えを出すのが『探究学習』の目標でもある。

出典:文部科学省
出典:文部科学省


これはまさに『AI』時代にフィットした学び方だろう。2022年からの高校時代に単に調べるだけでなく、主体的に『探求』するという訓練を積んだ大学生となり、2029年(5年後)には社会に大量に登場してくるのだ。

■答えのない時代の答えを、自ら見いだす『探求学習型』社会貢献事業を目指すマイパレ岩井進悟 氏

出典:一般社団法人 マイパレ 岩井進悟(21)氏
出典:一般社団法人 マイパレ 岩井進悟(21)氏


岩井新悟(21)さんは慶應義塾大学SFCの現在3年で現在休学中。
『生成AI』を活用し、2022年にから高校生の必修となった『探求学習』という科目をテーマに『一般社団法人マイパレ』で開発をおこなっている。

探求学習』というと答えのない現代社会において、自分で考えて、解決策を考えるという学習科目だ。

岩井新悟さんは、『例えば、コーヒーがあれば、コーヒー豆がどこから来たのか?そしてその原料の国での状況は?フェアトレードの取引などへと、自分で探求しながら、新たな課題や問題を発見し、深堀りしていける学習だ』と応える。『当然、検索結果だけでなく、仮説を立て推論するなど、考え方の方向性を決定するプロセスに生成AIなどは重要な位置づけだ』という。

最初から答えがあるのではなく、自ら考え、探求し、そして自らが納得いく解を探し当てるという学習だからこそ、『推論:インファレンス(データを分類して結果を「推測」すること)』する生成AIとも相性が良い科目でもある。しかし、まだ当該科目で『生成AI』が活躍している話はあまり耳にしない

AIによる探求学習であれば、それらが学校の時間的制約や地理的制約、そして経済的制約にとらわれる事なく、誰もがいつでも、「探究学習」を深堀りすることができないか?と考えたのが「生成AI」の活用だった』と岩井氏は起業のきっかけを語る。

出典:一般社団法人マイパレ
出典:一般社団法人マイパレ

15種類のChatBotをAPIで作りだし、アプリケーションで56のステップを作り、進捗状況を把握するという仕組みを作った。

土浦二高野球部の相良真博監督(39)のトークをヒアリングしながら、先生の質問の特徴や回答のロジックを生成AIに指示出しをし、生成AIが先生のロジックにしたがって、球児たちの自らのスポーツ課題に対しての『探求学習』を推進していくというチャットボットを作った

出典:一般社団法人 マイパレ
出典:一般社団法人 マイパレ

プロセスとして重要視したのは、『質問力』。土浦二高の球児自身の悩みについて質問の粒度を変えることによって、内包する自らの答えに結果としてたどりつくのである。重要なのは、『AIが教える』のではなく、『自ら、気づかせ、学ぶこと』だという。

スマートフォンで1日の練習の振り返りと『AI監督との疑似対峙』によって、球児は、相良真博監督の個別指導を受けているような気になるのだ。そして、提出するリポートも球児側に編集権限があり、プライバシーに留意しながら、編集後のチャットデータを監督にリポートできるようになっている。監督も、リポートを読むことによって、各球児の問いと解決策のプロセスを知ることができるという仕組みだ。

『直接、監督ではなく、「AI監督」という質問者に対して、本音で答えながら、「探求学習」を実践しながら、質問から、自らの課題に対しての「最適解」を見出す「ルーティーン技術」を手にすることができているのではないか』と岩井進悟氏。

岩井進悟氏は、同時に、小論文のオンライン塾の『ロジックリンク』というネット塾も手掛けている。『探求学習AI』の精度を上げるためにも、実証実験に参加いただける高校も今後募集していきたいとも語る。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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