生成AI活用による2022年からの新たな必修科目『探究学習』への学習効果は?岩井進悟(21)氏に聞く
KNNポール神田です。
ついに、『野球コーチに生成AI』が登場する時代になったという。
『野球のコーチは生成AIアプリ 好きな時間に好きな場所で指導受ける』 の記事に非常に興味を惹かれ、開発者の岩井進悟さんに取材を申し込んだ。
■2022年『探究学習(総合的な探究の時間)』が必修科目に
https://www.nits.go.jp/materials/youryou/files/064_001.pdf
文部科学省は2022年4月から『探究学習』という新たな科目を必修とし、高校3年間週1〜2回の科目として採用された。高校全体で最大210時間 3−6単位と大きく占めるようになる。自分自身が主体的に探究する時間というものであり、自ら問いを立てて、それに対して答えていく学習。課題の設定・調査・まとめを繰り返して主体的・対話的に学び、自分なりの答えを出すのが『探究学習』の目標でもある。
これはまさに『AI』時代にフィットした学び方だろう。2022年からの高校時代に単に調べるだけでなく、主体的に『探究』するという訓練を積んで大学生となり、2022年に高校1年生だった人は、2029年(5年後)には社会に大量に登場してくるのだ。
■答えのない時代の答えを、自ら見いだす『探究学習型』社会貢献事業を目指すマイパレ岩井進悟氏
岩井進悟(21)氏は慶應義塾大学SFCの現在3年で現在休学中。
『生成AI』を活用し、2022年にから高校生の必修となった『探究学習』という科目をテーマに『一般社団法人マイパレ』で開発をおこなっている。
https://mypalette.co.jp/
『探究学習』というと答えのない現代社会において、自分で考えて、解決策を考えるという学習科目だ。
岩井氏は、『例えば、コーヒーがあれば、コーヒー豆がどこから来たのか?そしてその原料の国での状況は?フェアトレードの取引などへと、自分で探究しながら、新たな課題や問題を発見し、深堀りしていける学習だ』と応える。『当然、検索結果だけでなく、仮説を立て推論するなど、考え方の方向性を決定するプロセスに生成AIなどは重要な位置づけだ』という。
最初から答えがあるのではなく、自ら考え、探究し、そして自らが納得いく解を探し当てるという学習だからこそ、『推論:インファレンス(データを分類して結果を「推測」すること)』する生成AIとも相性が良い科目でもある。しかし、まだ当該科目で『生成AI』が活躍している話はあまり耳にしない。
『AIによる探究学習であれば、それらが学校の時間的制約や地理的制約、そして経済的制約にとらわれる事なく、誰もがいつでも、「探究学習」を深堀りすることができないか?と考えたのが「生成AI」の活用だった』と岩井氏は起業のきっかけを語る。
15種類のChatBotをAPIで作りだし、アプリケーションで56のステップを作り、進捗状況を把握するという仕組みを作った。
土浦二高野球部の相良真博監督(39)のトークをヒアリングしながら、先生の質問の特徴や回答のロジックを生成AIに指示出しをし、生成AIが先生のロジックにしたがって、球児たちの自らのスポーツ課題に対しての『探究学習』を推進していくというチャットボットを作った。
プロセスとして重要視したのは、『質問力』。土浦二高の球児自身の悩みについて質問の粒度を変えることによって、内包する自らの答えに結果としてたどりつくのである。重要なのは、『AIが教える』のではなく、『自ら、気づかせ、学ぶこと』だという。
スマートフォンで1日の練習の振り返りと『AI監督との疑似対峙』によって、球児は、相良真博監督の個別指導を受けているような気になるのだ。そして、提出するリポートも球児側に編集権限があり、プライバシーに留意しながら、編集後のチャットデータを監督にリポートできるようになっている。監督も、リポートを読むことによって、各球児の問いと解決策のプロセスを知ることができるという仕組みだ。
『直接、監督ではなく、「AI監督」という質問者に対して、本音で答えながら、「探究学習」を実践しながら、質問から、自らの課題に対しての「最適解」を見出す「ルーティーン技術」を手にすることができているのではないか』と岩井氏。
岩井氏は、同時に、小論文のオンライン塾の『ロジックリンク』というネット塾も手掛けている。『探究学習AI』の精度を上げるためにも、実証実験に参加いただける高校も今後募集していきたいとも語る。