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見通しの良い交差点で何故!? 危険な「コリジョンコース現象」とは…

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真はイメージです。(ペイレスイメージズ/アフロ)

春の交通安全運動期間中ですが、全国で交通事故が多発しているようです。そんな中、バイク関連で気になる事故がありました。

現場は見通しの良い交差点

警察によると10日午後4時すぎ、鹿児島県出水市の市道の交差点で、原付きバイクが左から走ってきた中型トラックと出合い頭に衝突し、原付きバイクに乗っていた地元の女子高校生(17)が全身を強く打ち死亡するという痛ましい事故が発生しています。

現場は信号や一時停止などの標識がない見通しの良い交差点で、トラックを運転していた男性会社員(34)も接近してくる「原付きバイクには気づいていた」と話していて、警察は自動車運転死傷行為処罰法違反(過失致死)容疑で事情を聞いているそうです。

コリジョンコース現象の可能性も

ニュースの映像を見る限り、周囲は畑になっていて視界を遮るものもなく、とても衝突事故など起きそうにない気がします。詳しい原因などは分かりませんが、気になったのは「見通しが良い」のに「出会い頭」に衝突した点です。

以前もコラムで書かせていただいたことがありましたが、ひとつ考えられることとして「コリジョンコース現象」という事故パターンがあります。

コリジョンコースとは「衝突進路」の意味で、互いにそのまま進めば衝突することが予測できたにも関わらず、互いに避けることなく衝突してしまう事故パターンのことです。元々は航空機事故の研究から知られるようになった現象で、「田園型事故」や「十勝型事故」とも呼ばれています。その名称からも分かるとおり、日本では北海道などで多い事故パターンだとか。

動かないものは認識しづらい

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これは人間の視覚特性が影響していると言われます。人間の目は動いているものにはよく反応しますが、止まっているものは気づきにくいという特性があります。特に周辺視という視覚の中でもぼんやり見える部分では、動かないものは認識しづらいのだとか。

つまり、交差する道路を自分と同じ速度で進入してくるクルマがいたとしても、自分から見える角度は視野の中では一定なので、あたかも止まっているように見えてしまうのです。お互いがこうした状態に陥っていた場合に事故が起きやすくなります。

通い慣れた道ほど油断しやすい

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もちろん、近づいてくる車両に気づきながらも自分が優先道路なので相手が止まると思っていたとか、普段なら交差するクルマもほとんどいない通い慣れた道や交差点ということで油断していたのかもしれません。

トラックから見れば、原付は速度も遅く小さい乗り物なので目測を誤った可能性もあります。特に信号や一時停止の標識がない道路ではつい気が緩みがちになるものです。そして、交通事故の多くはいつもの通い慣れた道路で発生しています。

春の陽気の中、週末は遠出する人も多いと思いますが、どうかお気をつけて日々の運転を楽しんでください。春の全国交通安全運動は15日までです。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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