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あなたの「気持ち年齢」は何歳? 実際の年齢と「気持ち年齢」のギャップを読み解いてみる

斉藤徹超高齢未来観測所
あなたの「気持ち年齢」は何歳ですか?(写真:アフロ)

前回は、「自分は何歳まで生きたいか」という「希望寿命」をテーマとして取り上げましたが、今回「実年齢(暦年齢)」より、若く、もしくは、年をとっていると感じる「気持ち年齢(主観年齢)」をテーマに考えてみたいと思います。

一般的に、人は自分のアイデンティティ(自己同一性)を形成するための手がかりとして「年齢」という判断基準を用いることがあります。

「(年齢よりも)若く見えますね」は、一般的に褒め言葉として受け取られますが、これは「年齢よりも若い」ということを一種の価値として認めているわけです。逆に、「年甲斐もなく」「年寄りのくせに」という言葉は、年齢を一種の行動規範の基準として捉え、そこから逸脱する行為を非難しているわけです。

一般に、「年齢よりも若くありたい」と考える人は多いと思いますが、そのために、一般的な自分と同年齢、もしくは年上世代の行動規範よりも、若いと感じさせるさまざまな努力(場合によっては無理?)を重ねるわけです。

では、実際に「実年齢(暦年齢)」と「気持ち年齢(主観年齢)」は、どの程度離れているのでしょうか。20歳から84歳の男女1,121人にお伺いしてみました。その結果を図示したものが図表1の散布図になります。

図表1「実年齢」と「気持ち年齢」散布図

筆者作成
筆者作成

横軸が「実年齢」を、縦軸が「気持ち年齢」を示しています。赤の実線が「実年齢」と「気持ち年齢」が一致する線を示しています。「気持ち年齢」の多くは、「実年齢」よりも低く回答されていることがおわかりになると思います。

なかには、60歳や70歳でも10代・20代と回答される方もおり、これは「いつまでも青春」と考える気持ちの表出なのでしょう。「気持ち年齢」の幅の広さが伺える結果となりました。

一方、割合は少ないものの、「実年齢」よりも、「気持ち年齢」を高く答えている人がいるのもわかります。40代や50代で80歳と答える方もおられ、なにかしらの悩みを感じていらっしゃるのではないかとも懸念してしまいます。

図表中の緑点線は、回答の近似曲線(線形)を示しており、「実年齢」が高くなるほど、「気持ち年齢」の幅が広がっていくこともわかると思います。概ね、「実年齢」の7掛け程度を「気持ち年齢」と答えていることがわかります。

さて、この赤の実線と緑の点線の左側を辿っていくと、次第にその差が縮まっているのがわかるでしょう。

実は、若い頃(10代から20代前半)は、「気持ち年齢」は「実年齢」よりも高くなる傾向が過去の調査からも明らかになっています。子どもは、「実年齢」よりも自分は大人だと感じているのですが、20代前半でその関係は逆転し、次第に自分は「実年齢」よりも若いと考える「自己若年視」への転換が図られます。

ティーンエイジの頃、年上の女性に憧れを感じた少年もいたのではないかと思いますが、それもこうした意識の現れとも言えるでしょう。

今回の調査では、全体の83%が「実年齢」より「気持ち年齢」を低く答え、14%が、「実年齢」より「気持ち年齢」を高いと答えました。(実年齢=気持ち年齢との回答は3%)今回は、調査対象が20歳以上でしたから、「気持ち年齢」を高く答えたのは若い年齢層だけでなく、中高年層でもそう答えられた方が少なからずいらっしゃったということです。

では、どうしてこのように、「実年齢」と「気持ち年齢」に差が生じるのでしょうか。

過去の先行研究(※)では、「実年齢」より「気持ち年齢」を低く答える要因として、「教育年数」「健康度」「自尊感情」「タイプA(達成欲求や攻撃性が強いタイプの人)」「女性性」に有意な関連があるとの指摘はあります。しかし、これについては、はっきりとした結論は出ていないようです。また、「実年齢」より「気持ち年齢」を高く答える要因として、「健康度の低下」や「配偶者の死別」を指摘する意見もあります。しかし、これもはっきりとした調査結果は出ていません。今後、より踏み込んだ研究が求められるところです。

(※)発達心理学研究,第8巻,第2号,88-97「年齢アイデンティティのコホート差、性差、およびその規定要因:生涯発達の視点から」(1997) 佐藤眞一、下仲順子、中里克治、河合千恵子

超高齢未来観測所

超高齢社会と未来研究をテーマに執筆、講演、リサーチなどの活動を行なう。元電通シニアプロジェクト代表、電通未来予測支援ラボファウンダー。国際長寿センター客員研究員、早稲田Life Redesign College(LRC)講師、宣伝会議講師。社会福祉士。著書に『超高齢社会の「困った」を減らす課題解決ビジネスの作り方』(翔泳社)『ショッピングモールの社会史』(彩流社)『超高齢社会マーケティング』(ダイヤモンド社)『団塊マーケティング』(電通)など多数。

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